術後せん妄への初期対応
看護師国家試験 第103回 午後 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(75歳、女性)は、娘と2人で暮らしている。5年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉病(Alzheimer Disease)と診断された。半年前から食欲不振が続き体重減少がみられ受診した。検査の結果、胃癌(gastric cancer)と診断され胃全摘出術が行われた。入院時の改訂版長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉16点、Mini-MentalStateExamination〈MMSE〉18点。 Aさんは、術後1日の深夜に大きな声で娘の名前を呼び「ここはどこ」と叫びながらベッド柵をたたく行動がみられた。 このときに最初に行う対応として適切なのはどれか。
- 1.上肢の抑制を行う。
- 2.睡眠薬を与薬する。
- 3.娘に電話して来院してもらう。
- 4.病院に入院していると説明する。
対話形式の解説
博士
Aさんは75歳でアルツハイマー病があり、胃全摘術後1日目の深夜に「ここはどこ」と叫びベッド柵をたたいたんじゃ。
サクラ
どんな状態だと考えられますか?
博士
これは術後せん妄じゃ。手術侵襲・環境変化・疼痛・薬剤・睡眠障害などが要因で起こる急性の意識障害じゃ。
サクラ
アルツハイマー病とは違うんですね。
博士
せん妄は急性で変動性、注意障害が特徴じゃ。認知症は慢性で持続的じゃから区別する必要があるのう。
サクラ
最初の対応はどれですか?
博士
正解は4の「病院に入院していると説明する」じゃ。穏やかに声をかけて現状を伝える、これがリアリティ・オリエンテーションじゃ。
サクラ
選択肢1の上肢抑制は?
博士
抑制はかえって不安と混乱を悪化させるんじゃ。代替手段を尽くしてもダメな場合の最終手段じゃ。
サクラ
選択肢2の睡眠薬は?
博士
ベンゾジアゼピン系は高齢者でせん妄を悪化させることがあるんじゃ。最初の選択肢ではないのう。
サクラ
選択肢3の家族呼び出しは?
博士
家族の存在は安心要因じゃが、深夜は家族への配慮も必要じゃ。まず看護師の介入が先じゃ。
サクラ
せん妄の予防対策は?
博士
時計やカレンダーで見当識を保つ、十分な疼痛緩和、睡眠リズム確保、不要なカテーテル類の早期抜去、家族の面会、馴染みの物品の活用じゃな。
サクラ
評価ツールもありますね。
博士
DELIRIA-JやCAM-ICUなどがあるぞ。リスクの高い高齢者では早期スクリーニングが重要じゃ。
サクラ
Aさんの場合HDS-R16点、MMSE18点ですよね。
博士
軽度〜中等度認知症で、せん妄の高リスクじゃのう。手術前から予防的アプローチが大切じゃった。
サクラ
非薬物的介入が基本なんですね。
博士
その通り。安心できる声かけと環境調整が第一選択じゃ。
POINT
術後せん妄は手術侵襲・環境変化・薬剤などが要因で生じる急性の意識障害で、高齢者や認知症患者でリスクが高くなります。最初の対応は身体抑制や薬剤投与ではなく、穏やかに声をかけて現状を伝えるリアリティ・オリエンテーションです。見当識への働きかけ、疼痛緩和、睡眠リズム確保など非薬物的介入を優先し、安全と安心を確保しながら見守ることが看護の基本です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(75歳、女性)は、娘と2人で暮らしている。5年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉病(Alzheimer Disease)と診断された。半年前から食欲不振が続き体重減少がみられ受診した。検査の結果、胃癌(gastric cancer)と診断され胃全摘出術が行われた。入院時の改訂版長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉16点、Mini-MentalStateExamination〈MMSE〉18点。 Aさんは、術後1日の深夜に大きな声で娘の名前を呼び「ここはどこ」と叫びながらベッド柵をたたく行動がみられた。 このときに最初に行う対応として適切なのはどれか。
解説:正解は4です。Aさんの症状は術後せん妄と考えられます。術後せん妄は、手術侵襲・環境変化・疼痛・薬剤・睡眠障害などが要因となり、特に高齢者や認知症患者で起こりやすい急性の意識障害です。最初の対応は、患者が安心できるよう穏やかに声をかけ、現在の状況(病院に入院中であること、手術後であること)を分かりやすく伝えて見当識を補強することです。
選択肢考察
-
× 1. 上肢の抑制を行う。
誤りです。身体抑制は不安や混乱をかえって悪化させ、せん妄を遷延させます。代替手段を尽くしたうえでやむを得ない場合のみ慎重に検討する最終手段であり、最初の対応として行うものではありません。
-
× 2. 睡眠薬を与薬する。
誤りです。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は高齢者でせん妄を悪化させることがあります。薬剤による鎮静を最初に行うのではなく、まず非薬物的介入で患者を落ち着かせる必要があります。
-
× 3. 娘に電話して来院してもらう。
誤りです。家族の存在は安心要因となりますが、深夜帯であり家族への配慮も必要です。まず看護師が現状を説明し、それでも落ち着かない場合に検討する方法であり、最初の対応ではありません。
-
○ 4. 病院に入院していると説明する。
正しい対応です。せん妄や混乱状態の患者には、穏やかに声をかけ、現在の状況や時間を伝える「見当識への働きかけ(リアリティ・オリエンテーション)」が基本です。安心感を与え混乱を軽減する第一の介入です。
術後せん妄の予防・対応の基本は、見当識の維持(時計・カレンダー・声かけ)、痛みの十分な緩和、睡眠リズムの確保、不要な点滴・カテーテル類の早期抜去、家族の面会、馴染みの物品の活用です。リスクの高い高齢者ではDELIRIA-J、CAM-ICUなどのスクリーニングツールで早期発見します。
術後せん妄を発症した認知症高齢者への最初の対応として、非薬物的介入の重要性を理解しているかが問われています。
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