ぐったりした認知症高齢者―情報収集の優先順位を脱水の視点で読む
看護師国家試験 第114回 午後 第100問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(80歳、女性)は、アパートの1階に1人で暮らしている。半年前に軽度のAlzheimer<アルツハイマー>型認知症(Alzheimer disease)と診断され、抗認知症薬の内服治療を開始した。要支援2の認定を受けている。 Aさんが屋内でぐったりしているのを訪問した近所の人が発見し、救急搬送された。来院時のバイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数20/分、脈拍92/分、血圧130/82mmHgで、皮膚に軽度の発汗がみられた。頭痛や吐き気はなかった。看護師がAさんに状況を聞くと、最近は食欲がなく、食べたり飲んだりしていなかったし、昨日は排尿回数も普段より少なかったと話した。 このときに看護師が追加で収集する情報で優先度が高いのはどれか。
- 1.睡眠状況
- 2.口渇の有無
- 3.ADLの状況
- 4.抗認知症薬の内服状況
対話形式の解説
博士
今日は救急搬送された高齢認知症女性の事例じゃ。情報収集の優先度を判断する問題じゃな。
アユム
Aさんは80歳、軽度アルツハイマー型認知症、要支援2、独居。屋内でぐったりしているところを発見されました。
博士
バイタルはどうじゃ?
アユム
体温36.5℃、呼吸数20、脈拍92、血圧130/82、皮膚に軽度発汗、頭痛・吐き気なし。
博士
さらに本人から「最近食欲がない」「飲食をしていない」「昨日は排尿回数が少なかった」という訴えがあるな。これらから何を疑う?
アユム
脱水でしょうか?
博士
その通りじゃ。経口摂取低下+尿量減少+皮膚発汗という組み合わせは典型的な脱水パターンじゃ。
アユム
高齢者は脱水になりやすいんですか?
博士
非常になりやすい。理由は3つある。1つ目は口渇中枢の感受性低下じゃ。喉が渇いているのに気づきにくい。2つ目は腎臓の濃縮力低下で尿による水分喪失が増える。3つ目は体内総水分量が若年者より約10%少ないことじゃ。
アユム
認知症があるとさらに悪化しますか?
博士
ああ、認知症高齢者はさらに脱水リスクが高い。「水分摂取の必要性を認識しにくい」「飲水を忘れる」「トイレが面倒で飲水を控える」など複数の要因が重なる。
アユム
脱水を疑った時、まず何を確認するんですか?
博士
最優先は自覚症状としての「口渇の有無」じゃ。口渇は水分喪失量と相関する早期サインで、補液の要否判断にも直結する。
アユム
他の選択肢を整理してみます。睡眠状況は?
博士
認知症評価では大事じゃが、急性期の生命に関わる脱水評価が先じゃ。
アユム
ADLの状況は?
博士
これも退院後支援を考える上で必須じゃが、急性期の今ではない。脱水を見逃すと脳梗塞や腎前性腎不全につながる。
アユム
抗認知症薬の内服状況は?
博士
重要じゃが、ドネペジルなどの抗認知症薬は脱水の直接原因にはなりにくい。今ぐったりしている原因の評価では優先度が下がる。
アユム
脱水の客観的評価ではどんな所見を見るんですか?
博士
皮膚ツルゴール(つまんだ皮膚の戻り)、口腔粘膜の乾燥、舌の乾燥、腋窩の乾燥、頻脈、起立性低血圧、尿量0.5mL/kg/時未満などじゃ。検査ではBUN/Cr比上昇、血清ナトリウムが指標になる。
アユム
脱水のタイプもいろいろあるんですよね?
博士
あるぞ。等張性、低張性、高張性に分類され、原因や治療も異なる。経口摂取低下による脱水は高張性になりやすく、ナトリウム値が上昇する傾向がある。
アユム
高齢者の1日必要水分量はどれくらいですか?
博士
目安は体重×30〜40mLじゃ。50kgなら1,500〜2,000mL。これを食事と飲水で確保する必要がある。
アユム
独居の認知症高齢者の脱水予防には、家族や訪問サービスの関与も大事ですね。
博士
その通りじゃ。要支援2のAさんなら介護予防サービスの活用、見守り、配食サービス、訪問看護の頻度増などで予防体制を強化できる。今回の入院を機にケアプランの見直しが必要じゃろう。
アユム
情報収集は単なる「聞き取り」ではなく、「何を疑い、何を最優先で確認するか」が看護判断の核なんですね。
博士
うむ。アセスメントは仮説検証じゃ。最も生命に直結する仮説(ここでは脱水)から検証するのが鉄則じゃよ。
POINT
高齢認知症患者がぐったりして救急搬送された場面では、経口摂取低下と尿量減少という訴えから脱水が最も疑われ、情報収集の優先度は「生命に直結する所見」から判断します。脱水評価では自覚症状としての口渇の有無を最優先で確認し、客観的には皮膚ツルゴール、口腔粘膜の乾燥、頻脈、起立性低血圧、尿量、BUN/Cr比などで総合判断します。高齢者は口渇中枢の感受性低下・腎濃縮力低下・体内水分量減少により脱水を起こしやすく、認知症があるとさらにリスクが高まるため、独居高齢者ではケアプランによる予防体制の整備が不可欠です。睡眠状況・ADL・服薬状況などの情報も重要ですが、急性期の生命に直結する脱水評価が済んでから収集すべき内容です。看護アセスメントは「仮説検証」であり、最も緊急性の高い仮説から検証する姿勢が、患者の安全を守る判断の核となります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(80歳、女性)は、アパートの1階に1人で暮らしている。半年前に軽度のAlzheimer<アルツハイマー>型認知症(Alzheimer disease)と診断され、抗認知症薬の内服治療を開始した。要支援2の認定を受けている。 Aさんが屋内でぐったりしているのを訪問した近所の人が発見し、救急搬送された。来院時のバイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数20/分、脈拍92/分、血圧130/82mmHgで、皮膚に軽度の発汗がみられた。頭痛や吐き気はなかった。看護師がAさんに状況を聞くと、最近は食欲がなく、食べたり飲んだりしていなかったし、昨日は排尿回数も普段より少なかったと話した。 このときに看護師が追加で収集する情報で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんは「食べたり飲んだりしていない」「排尿回数の減少」を自覚しており、皮膚の発汗もみられることから、水分摂取不足による脱水が強く疑われる状況である。脱水評価では、自覚症状としての口渇、客観所見としての皮膚ツルゴール低下、口腔内乾燥、頻脈、起立性低血圧、尿量低下、血液検査での電解質・BUN/Cr比などを総合的に判断する。緊急度の高い脱水疑い時には、まず「口渇の有無」など脱水の自覚症状を確認することが優先度の高い情報収集となる。
選択肢考察
-
× 1. 睡眠状況
睡眠状況は認知症の進行や生活評価に有用な情報だが、ぐったりして搬送された急性期で脱水が疑われる場面では緊急度が低い。
-
○ 2. 口渇の有無
脱水を疑う場面で最優先される自覚症状の確認。口渇は水分喪失量と相関する早期サインで、補液の要否判断に直結する。
-
× 3. ADLの状況
ADLは退院後の生活支援を考えるうえで重要だが、急性期の生命に直結する脱水評価が済んでから収集すべき情報。
-
× 4. 抗認知症薬の内服状況
服薬状況は重要な情報だが、ドネペジルなど抗認知症薬は脱水の直接原因にはなりにくく、ぐったりした原因を緊急に評価するうえでは優先度が下がる。
高齢者は口渇中枢の感受性低下、腎臓の濃縮力低下、体内総水分量の減少などにより脱水を起こしやすい。認知症高齢者ではさらに「水分摂取の必要性を認識しにくい」「飲水を忘れる」「トイレを面倒に感じて飲水を控える」など脱水リスクが高まる。脱水の客観評価には、皮膚ツルゴール、口腔粘膜の乾燥、舌の乾燥、腋窩の乾燥、頻脈、起立性低血圧、尿量0.5mL/kg/時未満、BUN/Cr比上昇、血清ナトリウムなどを用いる。1日必要水分量の目安は体重×30〜40mL。
脱水が疑われる高齢認知症患者の救急搬送場面で、追加情報収集の優先順位を「緊急度」と「症状との関連性」から判断できるかを問う問題。
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