夜間の不穏 まず何をすべきか
看護師国家試験 第107回 午後 第114問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 72歳、男性 )。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅱ-10。右片麻痺および失語がみられる。 Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 入院3日の20時、Aさんは覚醒し、点滴を触ったり、経鼻胃管を抜こうとしたりしており、落ち着かない様子である。 担当看護師が最初に行う対応で適切なのはどれか。
- 1.身体拘束を行う。
- 2.早めに消灯をする。
- 3.バイタルサインを測定する。
- 4.向精神薬の使用を検討する。
対話形式の解説
博士
入院3日目の20時、Aさんが点滴や胃管を触って落ち着かん様子じゃな。
アユム
脳梗塞後で高齢、夜間、環境変化…せん妄の典型的な背景が揃っています。
博士
そこで看護師が『最初に』行う対応を選ぶ問題じゃ。何を選ぶ?
アユム
バイタルサイン測定だと思います。
博士
理由を言ってみよ。
アユム
せん妄は発熱や低酸素、脱水、疼痛など身体要因で起こりやすいからです。まずバイタルで全身を評価すべきです。
博士
そのとおりじゃ。身体拘束を最初に選ぶのはどうじゃ?
アユム
拘束は切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たしたときの最終手段なので、いきなりは不適切です。
博士
うむ、しかも拘束はかえって興奮を強めてしまうからな。
アユム
早めの消灯は?
博士
急な環境変化は見当識をさらに乱す。夜間も適度な照度を保つのが基本じゃ。
アユム
向精神薬はどうでしょう。
博士
医師の指示で使うもので、しかも原因が身体要因なら薬より原因除去が先じゃ。意識評価も難しくなるしな。
アユム
なるほど、まず観察とアセスメント、次に環境調整、最後に薬物という順番ですね。
博士
そのとおり。CAM-ICUやDSTといったスクリーニングツールも覚えておくと役立つぞ。
アユム
家族の面会や見慣れた物を置くのもせん妄予防に有効と聞きます。
博士
ようできた。不穏を見たら『身体に原因あり』と疑う癖をつけよ。
POINT
本問は高齢脳梗塞患者の夜間不穏に対する初期対応を問うています。せん妄は身体的誘因により生じることが多く、まずバイタルサイン測定で全身状態を評価することが最初の看護手順です。身体拘束や向精神薬は原因評価後の最終手段、早めの消灯は環境変化を助長するため不適切です。非薬物的介入を優先し、必要時のみ医師と連携して薬物を検討する流れを押さえましょう。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん( 72歳、男性 )。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅱ-10。右片麻痺および失語がみられる。 Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 入院3日の20時、Aさんは覚醒し、点滴を触ったり、経鼻胃管を抜こうとしたりしており、落ち着かない様子である。 担当看護師が最初に行う対応で適切なのはどれか。
解説:正解は3です。夜間に覚醒し落ち着かずルート類を触る行動は、せん妄の可能性を強く示唆します。せん妄は発熱・低酸素・電解質異常・疼痛・脱水など身体要因で誘発されることが多いため、まず実施すべきは全身状態の評価です。バイタルサイン測定で原因となる身体的変化を把握することが、その後の対応(環境調整・医師への報告・薬剤使用)の前提となります。
選択肢考察
-
× 1. 身体拘束を行う。
身体拘束は『切迫性・非代替性・一時性』の3要件を満たす場合の最終手段です。原因評価を行わず最初に拘束するのは不適切で、かえって興奮やせん妄を悪化させます。
-
× 2. 早めに消灯をする。
急な環境変化は見当識をさらに乱します。夜間は適度な照度を保ち、昼夜リズムを保持することがせん妄対策の基本です。
-
○ 3. バイタルサインを測定する。
不穏の背景には発熱・低酸素・循環不全など身体要因が潜んでいる可能性があります。まずバイタルサインで全身状態を確認し、原因を探ることが最初の対応です。
-
× 4. 向精神薬の使用を検討する。
向精神薬は医師の判断で使用するもので、かつ原因が身体的要因であれば薬剤投与ではなく原因除去が優先されます。意識レベル評価も困難になるため安易に使うべきではありません。
高齢者の急性期入院ではせん妄発症率が高く、特に脳血管障害・感染・疼痛・環境変化が重なると発症しやすくなります。対応の原則は『まず身体要因の除去』『環境調整(見当識補助・家族面会・昼夜リズム維持)』『必要時のみ薬物療法』の順です。CAM-ICUやDST等のスクリーニングツールを活用しながら、非薬物的介入を優先します。
不穏行動を見たら、まず『身体に原因がないか』を確認することが看護師の第一手順です。拘束や薬剤は最後の選択肢として検討します。
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