医療事故3つの法的責任!民事・刑事・行政を徹底整理
看護師国家試験 第106回 午前 第45問 / 健康支援と社会保障制度 / 健康を支える職種に関する法や施策
国試問題にチャレンジ
看護師が医療事故を起こした場合の法的責任について正しいのはどれか。
- 1.罰金以上の刑に処せられた者は行政処分の対象となる。
- 2.事故の程度にかかわらず業務停止の処分を受ける。
- 3.民事責任として業務上過失致死傷罪に問われる。
- 4.刑法に基づき所属施設が使用者責任を問われる。
対話形式の解説
博士
今日は看護師の法的責任じゃ。医療事故を起こすと、責任は大きく3つに分かれるのを知っておるか?
サクラ
えーと、損害賠償と…刑罰と…あと何でしたっけ?
博士
民事責任・刑事責任・行政責任の3つじゃ。それぞれ目的も根拠法も違うから、きっちり区別するのじゃ。
サクラ
お願いします!
博士
まず民事責任。目的は金銭による損害の填補、根拠は民法709条の不法行為責任。患者さんに損害を与えた場合の損害賠償じゃな。
サクラ
お金で償うってことですね。病院も責任を負うんですか?
博士
鋭い!民法715条の使用者責任により、雇用主である病院も連帯して責任を負うことがある。
サクラ
次に刑事責任ですね。
博士
そう。社会的制裁としての刑罰で、個人責任の原則が貫かれる。業務上過失致死傷罪、刑法211条で、5年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金じゃ。
サクラ
刑事責任は施設じゃなくて本人が問われるんですね。
博士
その通り。選択肢4「刑法に基づき所属施設が使用者責任」は誤りじゃ。刑事は個人責任、民事は使用者責任もあり、を混同しないこと。
サクラ
最後が行政責任ですね。
博士
そう。看護師免許に関する処分で、保健師助産師看護師法第14条が根拠じゃ。戒告、3年以内の業務停止、免許取消しの3段階がある。
サクラ
それで選択肢1の「罰金以上の刑に処せられた者は行政処分の対象」が正解なんですね!
博士
その通り。保助看法9条・14条に規定されておる。
サクラ
でも「罰金以上」って、もし無罪になったら行政処分はないんですか?
博士
基本的に刑事処分が確定してから行政処分の検討が行われる。ただし、犯罪以外でも品位を損する行為などは処分対象になり得る。
サクラ
選択肢2の「事故の程度にかかわらず業務停止」はなぜ違うんですか?
博士
行政処分の内容は、事案の重大性、過失の程度、再発防止の観点、社会への影響などを総合的に勘案して個別判断される。一律に業務停止となるわけではないのじゃ。
サクラ
選択肢3「民事責任として業務上過失致死傷罪」はどう違うんですか?
博士
業務上過失致死傷罪は刑事責任、民事は損害賠償。名前を取り違えてはいかん。
サクラ
一つの事故で3つ同時に問われることもあるんですか?
博士
もちろん。患者さんへの賠償(民事)、刑事罰(刑事)、免許処分(行政)が並行して進むこともある。だから医療安全管理は病院全体の重要課題じゃ。
サクラ
インシデントレポートって、責任追及のためですか?
博士
違うぞ。インシデント報告は「責任追及ではなく再発防止」が目的で、非懲罰的文化が前提じゃ。これを誤解すると報告が減って安全は守れん。
サクラ
法と倫理と現場の文化がつながってるんですね。
POINT
看護師が医療事故を起こした場合の法的責任は、民事責任(損害賠償:民法709条)、刑事責任(業務上過失致死傷罪:刑法211条)、行政責任(看護師免許に関する処分:保助看法14条)の3つに分かれます。このうち行政責任は、罰金以上の刑に処せられた場合などに戒告・3年以内の業務停止・免許取消しの処分が課され、事案ごとに内容が個別判断されます。刑事責任は個人責任の原則に貫かれ、民事責任は雇用主病院が使用者責任を負うこともあるという違いを押さえることが重要です。医療安全管理体制としては、責任追及ではなく再発防止を目的とするインシデント報告文化の醸成が欠かせません。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:看護師が医療事故を起こした場合の法的責任について正しいのはどれか。
解説:正解は 1 です。看護師が医療事故を起こした場合に問われる法的責任は、民事責任(損害賠償:民法709条)、刑事責任(業務上過失致死傷罪:刑法211条等)、行政責任(保健師助産師看護師法第14条に基づく看護師免許への処分)の3つに大別される。保助看法9条・14条では、罰金以上の刑に処せられた者、業務に関し犯罪または不正の行為があった者、看護師としての品位を損するような行為のあった者等に対し、厚生労働大臣が戒告、3年以内の業務停止、または免許取消しといった行政処分を行うことができる、と定められている。
選択肢考察
-
○ 1. 罰金以上の刑に処せられた者は行政処分の対象となる。
保健師助産師看護師法第9条・第14条の規定により、罰金以上の刑に処せられた者は戒告、3年以内の業務停止、または免許取消しなどの行政処分の対象となる。
-
× 2. 事故の程度にかかわらず業務停止の処分を受ける。
行政処分の内容は事案の重大性、過失の程度、患者への影響、社会への影響などを総合的に勘案して個別に判断される。「事故の程度にかかわらず」一律に業務停止となるわけではない。
-
× 3. 民事責任として業務上過失致死傷罪に問われる。
業務上過失致死傷罪(刑法211条)は刑事責任であり、民事責任ではない。民事責任は金銭的な損害賠償(民法709条の不法行為責任など)で、刑事責任は国家による刑罰である。
-
× 4. 刑法に基づき所属施設が使用者責任を問われる。
刑事責任は個人責任の原則に基づき、過失を犯した看護師本人が問われる。施設が問われる使用者責任は民法715条に基づく民事上の責任であって、刑法ではない。
3つの責任を整理すると、【民事責任】損害賠償を目的、過失によって患者に損害を与えた場合の金銭填補(民法709条)、使用者責任(民法715条)により雇用主である病院も連帯責任を負うことがある。【刑事責任】社会的制裁としての刑罰、個人責任の原則、業務上過失致死傷罪で5年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金(刑法211条)。【行政責任】専門職の資格に対する処分、保助看法14条に基づき戒告・業務停止・免許取消し。一つの事故でこれら3つが同時並行で問われることもある。医療安全管理上、インシデント報告制度と再発防止策を体制として持つことが重要である。
医療事故における看護師の法的責任(民事・刑事・行政)の違いと、それぞれの根拠法を正しく理解しているかを問う問題。
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