交感神経はカラダの『戦闘モード』スイッチ 瞳と汗から探る自律神経
看護師国家試験 第109回 午前 第81問 / 人体の構造・機能 / 神経系
国試問題にチャレンジ
交感神経の作用はどれか。2 つ選べ。
- 1.散瞳
- 2.精神性発汗
- 3.腸蠕動の促進
- 4.排尿筋の収縮
- 5.グリコーゲン合成の促進
対話形式の解説
博士
今日は自律神経、特に交感神経の作用を整理するぞ。
サクラ
交感神経って『緊張したとき』の神経でしたっけ?
博士
その通り。別名『fight or flight(闘争か逃走か)』と呼ばれ、危険や運動・ストレスに対して身体を臨戦態勢にする神経じゃ。
サクラ
なるほど。この問題では散瞳と精神性発汗が正解ですね。
博士
そうじゃ。瞳孔散大筋はα1受容体を持ち、交感神経で収縮して散瞳する。暗闇でライオンに遭遇したとき、視野を広げて情報を集めたいイメージじゃな。
サクラ
汗はどうして交感神経なんですか?副交感っぽい気もして…。
博士
汗腺はすべて交感神経支配なのが例外的で大事じゃ。手掌や腋窩の精神性発汗は、試験前の手汗を思い出せばイメージしやすいぞ。
サクラ
選択肢3の腸蠕動促進は副交感でしたね。緊張で便秘になるのもそのためですか。
博士
まさにそれ。消化・吸収・排泄のような『休息・栄養』系は副交感神経、つまり迷走神経の担当じゃ。
サクラ
排尿筋の収縮は?
博士
排尿は副交感(骨盤神経)で排尿筋が収縮する。逆に交感神経は排尿筋をβ3で弛緩、内尿道括約筋をα1で収縮させて『ためる』方向に働く。過活動膀胱の治療薬ミラベグロンはこのβ3を刺激する薬じゃな。
サクラ
グリコーゲン合成はなぜ×なんですか?
博士
活動時はエネルギーを『使う』必要があるから、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖を上げる。合成・貯蔵は休息時のインスリン作用下で進むぞ。
サクラ
受容体で覚えると、薬と結びつけやすいですね。
博士
うむ。α1で血管収縮、β1で心拍増加、β2で気管支拡張、β3で膀胱弛緩。喘息発作のβ2吸入、ショック時のノルアドレナリン、過活動膀胱のβ3作動薬と、臨床でも頻出じゃ。
サクラ
自律神経は試験だけでなく現場の薬理にも直結するんですね。
POINT
交感神経は身体が活動・緊張する場面で優位になる自律神経で、散瞳、精神性発汗、心拍数増加、血管収縮、気管支拡張、グリコーゲン分解などを引き起こします。本問で正解の散瞳と精神性発汗は、いずれも『戦闘モード』で身体が視覚情報の獲得や放熱・緊張反応に対応するための生理的変化です。一方、腸蠕動の促進・排尿筋の収縮・グリコーゲン合成は休息時に優位となる副交感神経の作用であり、区別が重要です。受容体レベルで理解すると、気管支拡張薬やショック治療薬、過活動膀胱治療薬など臨床薬理にも直結する基礎知識となります。看護師は患者のバイタルや症状の変化を自律神経バランスの観点から捉える視点を身につけておきたいところです。
解答・解説
正解は 1 ・ 2 です
問題文:交感神経の作用はどれか。2 つ選べ。
解説:正解は 1 と 2 です。交感神経は自律神経のうち身体が活動・緊張・興奮・危機に対応する場面で優位になる神経で、「闘争か逃走か(fight or flight)」の反応を担当する。瞳孔散大筋を収縮させて散瞳を起こし視野を広げ、汗腺(特に手掌・足底・腋窩)を刺激して精神性発汗を誘発する。いずれも身体が緊急事態に備える反応として整合する。
選択肢考察
-
○ 1. 散瞳
交感神経は瞳孔散大筋(放射状筋)をα1受容体を介して収縮させ、瞳孔を開く(散瞳)。暗い環境や緊張場面で多くの光を取り込み、視覚情報を得やすくするための反応。
-
○ 2. 精神性発汗
汗腺はすべて交感神経支配で、温熱性発汗・精神性発汗ともに交感神経の興奮で促進される。精神性発汗は手掌・足底・腋窩に出やすく、神経伝達物質はアセチルコリンだが支配神経は交感神経である点が独特。
-
× 3. 腸蠕動の促進
消化管運動は副交感神経(主に迷走神経)で促進され、交感神経では抑制される。交感神経優位の状況で便秘傾向になるのはこのため。
-
× 4. 排尿筋の収縮
交感神経(下腹神経)は排尿筋(膀胱平滑筋)をβ3受容体で弛緩させ、内尿道括約筋をα1受容体で収縮させて蓄尿を促す。排尿筋収縮は副交感神経(骨盤神経)の作用。
-
× 5. グリコーゲン合成の促進
交感神経優位時はアドレナリン・ノルアドレナリンによりグリコーゲン分解と糖新生が亢進し、血糖を上げる。グリコーゲン合成はインスリン作用下の同化反応で副交感神経優位時に進む。
交感神経と副交感神経の作用は二重支配でほぼ拮抗するが、汗腺と皮膚の立毛筋、大部分の血管は交感神経の単独支配である点は要注意。受容体も重要で、α1(血管収縮・散瞳・内尿道括約筋収縮)、β1(心収縮力・心拍数増加)、β2(気管支拡張・血管拡張)、β3(膀胱弛緩)など部位で異なる。臨床では気管支喘息発作時のβ2刺激薬、ショック時のα刺激薬、過活動膀胱へのβ3刺激薬などが交感神経系薬理の代表例。
自律神経系のうち交感神経が優位になったときに起こる反応を選ぶ問題。全身を「戦闘モード」に切り替えるイメージで整理すると覚えやすい。
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