災害3週後の高齢者の心のケアを考えよう
看護師国家試験 第105回 午後 第65問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護
国試問題にチャレンジ
山村部で地震による家屋倒壊と死者が出た災害が発生し、3週が経過した。避難所では、自宅の半壊や全壊の被害にあった高齢者を中心に10世帯が過ごしている。 高齢者の心のケアとして最も適切なのはどれか。
- 1.認知行動療法を行う。
- 2.自分が助かったことを喜ぶよう説明する。
- 3.地震発生時の状況について詳しく聞き取る。
- 4.長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
対話形式の解説
博士
今回は状況設定問題じゃ。山村部で地震があって3週間、避難所には自宅が半壊・全壊した高齢者中心の10世帯がいる状況で、心のケアとして適切なのはどれか考えよう
サクラ
3週間というのは、どんな時期にあたるのでしょう
博士
よい視点じゃ。災害後3週は「亜急性期」に当たる。急性期の緊張が緩み、悲しみや怒り、罪責感などの感情が一気に表面化する時期なんじゃ
サクラ
高齢者特有の状況もありますか
博士
山村部の高齢者は長年そこで暮らし、家屋だけでなく地域コミュニティや人間関係も含めた生活基盤すべてを失っている可能性が高い。喪失体験が非常に重いのじゃ
サクラ
そう考えると選択肢4が正解に見えますね
博士
その通りじゃ。喪失体験を語り、感情を分かち合える場の提供は悲嘆作業を促し、孤立感を和らげる。亜急性期の心のケアとして最も適切じゃ
サクラ
選択肢1の認知行動療法はなぜ不適切なのですか
博士
認知行動療法はうつ病やPTSDに対する構造化された精神療法で、専門家が治療目的で行うものじゃ。この段階ではまず傾聴や心理的応急処置(PFA)が優先される
サクラ
選択肢2の「助かったことを喜ぶよう説明する」はどうですか
博士
これは被災者の心を深く傷つける対応じゃ。多くの被災者は「なぜ自分だけ助かったのか」というサバイバーズ・ギルトを抱えている。喜ぶよう強いるのは感情の否定にあたり、回復を妨げる
サクラ
選択肢3の「地震発生時の状況を詳しく聞き取る」はいけないのですか
博士
支援者側から詳しく聞き出すのはいけない。外傷記憶を再活性化させ、フラッシュバックやPTSD症状を悪化させる危険があるからじゃ。本人が自発的に語る場合に傾聴するのが基本じゃ
サクラ
心のケアの原則のようなものはありますか
博士
WHOが推奨する心理的応急処置(PFA)という枠組みがある。「見る・聞く・つなぐ」の3原則で、安全確認、傾聴、必要な資源へのつなぎを行うんじゃ
サクラ
時期ごとに対応は変わりますか
博士
急性期は安全確保とPFA、亜急性期は傾聴と情報提供、慢性期はPTSDやうつの評価と専門的介入が中心となる。今回は亜急性期じゃから傾聴中心じゃ
サクラ
DPATという言葉も聞いたことがあります
博士
DPATは災害派遣精神医療チームで、被災地の精神保健医療支援を担う。看護師もメンバーとして活動する重要な支援資源じゃ
サクラ
高齢者の喪失に寄り添う姿勢が最も大切なのですね
POINT
災害後3週間は亜急性期にあたり、高齢被災者は家屋・地域・人間関係の喪失体験に直面しています。この時期の心のケアは、喪失について語れる場を提供し感情を共有することで悲嘆作業を促すことが最も適切です。認知行動療法など治療的介入や強制的な感情誘導、詳細な被災状況の聞き取りはかえって症状を悪化させる危険があります。PFAの原則に沿った傾聴と受容が基本となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:山村部で地震による家屋倒壊と死者が出た災害が発生し、3週が経過した。避難所では、自宅の半壊や全壊の被害にあった高齢者を中心に10世帯が過ごしている。 高齢者の心のケアとして最も適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。被災から3週が経過したこの時期は、災害後の「亜急性期」に当たり、緊張が緩んで喪失感や悲嘆、罪責感などが表面化しやすい時期です。高齢者は長年暮らした家屋や地域コミュニティ、親しい人々を失い、深い喪失体験を抱えています。この時期の心のケアとして、喪失について語り合える場を提供し、感情を表現し共有することが最も適切とされます。
選択肢考察
-
× 1. 認知行動療法を行う。
認知行動療法はうつ病やPTSDなどに対する構造化された精神療法で、専門家による治療的介入です。亜急性期の一般避難所における初期の心のケアとしては不適切で、この段階ではまず傾聴や心理的応急処置(PFA)が優先されます。
-
× 2. 自分が助かったことを喜ぶよう説明する。
被災者の多くは周囲の死を目の当たりにし、「なぜ自分だけ助かったのか」という生存者罪悪感(サバイバーズ・ギルト)を抱えます。喜ぶよう強いることは感情を否定することになり、心の回復を妨げます。
-
× 3. 地震発生時の状況について詳しく聞き取る。
被災時の詳細な聞き取りは本人が自発的に語るなら傾聴しますが、支援者から詳しく聞き出すと外傷記憶を再活性化させ、フラッシュバックやPTSD症状を悪化させる危険があります。
-
○ 4. 長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
高齢者は家屋・地域・人間関係という長年の生活基盤を失った喪失体験を抱えています。思いを語り分かち合える場の提供は悲嘆作業を促し、孤立感を和らげ、亜急性期の心のケアとして最も適切です。
災害時の心のケアは時期により異なります。急性期(~1週間)は安全確保とPFA(心理的応急処置)、亜急性期(1週間~1か月)は傾聴と情報提供、慢性期(1か月以降)はPTSDやうつの評価と専門的介入が中心となります。DPAT(災害派遣精神医療チーム)も重要な支援資源です。
災害亜急性期における高齢被災者への心のケアの基本姿勢を問う状況設定問題です。
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