災害時トリアージの本質 なぜ『黒』は後回しになるのか
看護師国家試験 第106回 午後 第61問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護
国試問題にチャレンジ
災害医療におけるトリアージについて正しいのはどれか。
- 1.傷病者を病名によって分類する。
- 2.危険区域と安全区域を分けることである。
- 3.医療資源の効率的な配分のために行われる。
- 4.救命が困難な患者に対する治療を優先する。
対話形式の解説
博士
今回は災害医療の花形、トリアージについて学ぶぞ。国試で何度も問われる重要テーマじゃ。
サクラ
トリアージって、重症の人から順番に治療することですよね?
博士
半分正解で半分不正解じゃ。正確には『限られた医療資源を効率的に配分するため、傷病者を緊急度・重症度で分類し、治療と搬送の優先順位を決めること』じゃ。
サクラ
ふむふむ。でも重症の人を優先するのは一緒じゃないんですか?
博士
普段の救急では最重症優先じゃが、災害時は違うぞ。たとえば心肺停止に近い人を1人救うのに30分かけていたら、その間に手当てすれば助かった10人が死んでしまうかもしれん。
サクラ
あっ…つまり『助かる可能性が高い人から優先』なんですね。冷たく感じるけど、トータルで救える命を増やすための判断なんだ。
博士
その通り。これを『最大多数の最大救命』という原則で呼ぶのじゃ。色分けのタッグも覚えておるか?
サクラ
赤・黄・緑・黒でしたよね。赤が最優先…。
博士
うむ。赤がカテゴリーⅠの最優先治療群、黄がⅡの待機的治療群、緑がⅢの軽処置群、そして黒が0の救命困難群または死亡群じゃ。搬送順は赤→黄→緑→黒となる。
サクラ
黒が最後なのが切ないですね…。でも理屈はわかります。ところで、病名で分類するわけじゃないんですよね?
博士
鋭いのう。現場では診断より生理学的指標で判断する。START法では歩行→呼吸→循環(CRTや橈骨動脈)→意識の順で1人30秒ほどで仕分けるぞ。
サクラ
30秒!?そんなに短時間で判断するんですか。
博士
じゃからこそ訓練が必要なのじゃ。そして大事なのは、トリアージ担当者は治療に加わらないこと。治療に手を出すと全体が止まってしまうからのう。
サクラ
なるほど。あと、状態は刻々と変わるから再評価も大事ですよね?
博士
その通り、reトリアージと呼ぶ。黄だった人が急変して赤になることもあるからのう。
サクラ
選択肢2の『危険区域と安全区域を分ける』はゾーニングのことですか?
博士
その通り。CBRNE災害などではホット・ウォーム・コールドの3ゾーンに分けるが、それはトリアージとは別概念じゃ。
POINT
トリアージは、災害や大規模事故で医療資源が不足する状況下において、傷病者を緊急度・重症度に応じて分類し、限られた資源を最大多数の救命に振り向けるための優先順位付けです。赤・黄・緑・黒の4区分で表され、搬送は赤→黄→緑→黒の順で行われます。病名の診断やゾーニング(危険区域区分)とは目的が異なり、あくまで『資源の効率的配分』が本質です。START法やPAT法などの手順を理解し、繰り返し再評価すること、担当者は治療に専念しないことが臨床のポイントです。災害看護の基盤となる概念として、看護師国家試験でも頻出であり、平時の救急対応との違いを整理して押さえておきましょう。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:災害医療におけるトリアージについて正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。トリアージとは、災害や大規模事故など多数の傷病者が同時に発生し、医療資源(人員・医薬品・搬送手段・治療スペース)が需要に対して著しく不足する状況で、傷病者を緊急度・重症度に基づいて分類し、治療と搬送の優先順位を決定する行為である。限られた資源を最大多数の救命につなげるという「最大多数の最大救命」の原則に立脚しており、医療資源を効率的に配分することが本来の目的である。日本ではSTART法などの一次トリアージ、PAT法などの二次トリアージが用いられ、赤(Ⅰ:最優先治療群)・黄(Ⅱ:待機的治療群)・緑(Ⅲ:軽処置群)・黒(0:救命困難群/死亡群)のトリアージタッグを原則右手首に装着する。
選択肢考察
-
× 1. 傷病者を病名によって分類する。
トリアージは緊急度・重症度に基づく優先順位付けであり、確定診断(病名)を目的としない。現場では詳細な検査もできず、呼吸・循環・意識といった生理学的所見から短時間で判断する。
-
× 2. 危険区域と安全区域を分けることである。
ゾーニング(ホットゾーン・ウォームゾーン・コールドゾーンの区分け)の説明であり、トリアージとは別の概念。CBRNE災害などでは重要だが、ここで問われているのは傷病者の分類である。
-
○ 3. 医療資源の効率的な配分のために行われる。
正しい。限られた医療資源を救命可能性の高い傷病者に優先的に投入することで、全体として救命人数を最大化するのがトリアージの目的である。
-
× 4. 救命が困難な患者に対する治療を優先する。
救命困難と判断された傷病者(黒タッグ)は、災害時の資源制約下では優先順位が最も低くなる。平時の救急医療とは異なり、「助かる可能性が高い人から助ける」のが災害医療の原則である。
START法(Simple Triage And Rapid Treatment)は、歩行可否→呼吸→循環(橈骨動脈触知またはCRT)→意識の順で、1人30秒程度で判定する一次トリアージ法。トリアージは状況の変化とともに病態も変化するため、繰り返し再評価(reトリアージ)することが重要。担当者はトリアージに専念し、原則として治療には加わらない点も頻出である。
トリアージの「目的」を問う基本問題。『限られた資源を効率的に配分して最大多数を救う』という根本原理を理解しているかが問われている。
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