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避難所に視覚障害のAさんがやってきた――自立を支える環境づくり

看護師国家試験 第109回 午後 第75問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第75問

Aさん( 55 歳、女性)は、1 人暮らし。Aさんには視覚障害があり、光と輪郭がぼんやりわかる程度である。食事の準備や室内の移動は自立している。震度 6 の地震が発生した。Aさんは、避難所に指定されたバリアフリーの公民館に近所のBさんと避難した。公民館には複数の部屋がある。避難所の開設初日に医療救護班として看護師が派遣された。 避難所生活を開始するAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.BさんをAさんの介助者とする。
  2. 2.Aさんの肩に触れてから声をかける。
  3. 3.Aさんにはトイレに近い部屋を割りあてる。
  4. 4.移動するときはAさんの手を引っ張って誘導する。

対話形式の解説

博士 博士

今日は災害時の要配慮者支援について学ぶぞ。55歳のAさんは視覚障害があって光と輪郭がぼんやりわかる程度じゃが、自宅では食事準備も室内移動も自立しておる。

サクラ サクラ

震度6で避難所に来たんですね。自立されている方でも環境が変わると大変そうです。

博士 博士

そこが重要なポイントじゃ。Aさんは慣れた自宅では自立できておった。でも避難所は初めての場所、しかも薄暗く、大勢の人がいる、物が散乱しているかもしれない――自立度が一気に落ちる環境じゃ。

サクラ サクラ

看護師として何を優先しますか?

博士 博士

まず本人の自立度を尊重することと、環境整備で負担を減らすことの両立じゃ。選択肢3の『トイレに近い部屋を割り当てる』が正解じゃな。

サクラ サクラ

なぜトイレが重要なんですか?

博士 博士

夜間のトイレ移動が最大の転倒リスクポイントじゃ。視覚障害で慣れない環境だと余計に危険。近くなら自分で行けるし、尊厳も保たれる。介助への依存を減らして自立を支える合理的配慮じゃ。

サクラ サクラ

選択肢1のBさんを介助者にするのはなぜダメなんですか?

博士 博士

Bさんも被災者じゃし、普段からAさんの介助をしているわけでもない。勝手に役割を押し付けるのは負担を強いることになるし、Bさんの心身を守る視点からもNG。支援体制は本人と周囲の意向を確認して決めるべきじゃ。

サクラ サクラ

視覚障害者に声をかけるとき、肩に触れてからって教わったような…

博士 博士

逆じゃ!『声をかけてから触れる』が正しい。いきなり触れられると驚いて転倒する恐れがある。名乗ってから用件を伝え、必要なら許可を得て身体接触――この順序が基本じゃ。

サクラ サクラ

手を引っ張って誘導するのも違うんですね。

博士 博士

視覚障害者のガイドヘルプは『介助者の肘の少し上を握ってもらい、介助者が半歩前を歩く』が基本じゃ。手を引っ張ると方向も段差も予測できず恐怖と転倒のもとになる。

サクラ サクラ

段差や曲がり角ではどう伝えるんですか?

博士 博士

『3歩先に段差があります』『ここで左に曲がります』と具体的に言葉で伝える。これを『言語化誘導』という。

サクラ サクラ

情報提供も大切ですよね。避難所だと貼り紙とかが多そうですが。

博士 博士

視覚障害者には音声での情報提供が必要じゃ。放送や声かけで情報を伝える、点字の掲示、拡大文字の併用なども配慮点じゃな。

サクラ サクラ

災害時要配慮者って、視覚障害の方以外にもいますよね。

博士 博士

高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、外国人、慢性疾患の方、医療的ケア児など多様じゃ。それぞれのニーズに応じた合理的配慮と、必要に応じて福祉避難所への二次避難という選択肢もある。看護師は医療救護班として、こうしたアセスメントと支援調整を担うのじゃ。

サクラ サクラ

『自立を奪わない支援』という発想、災害時こそ大切ですね。

POINT

本問は、視覚障害のあるAさんが避難所生活を始める場面で看護師が行うべき配慮を問う問題です。Aさんは自宅ADLが自立しているため、過剰な介助は自立性を損ない、不足した配慮は安全を脅かします。トイレに近い部屋を割り当てることは、夜間移動による転倒リスクを減らし、自力での排泄を継続できる合理的配慮として最適です。近隣のBさんを勝手に介助者にする・肩に触れてから声をかける・手を引いて誘導するといった対応はいずれも不適切で、視覚障害者支援の基本(声かけ先行、肘の少し上を握ってもらうガイドヘルプ法、言語化誘導)から外れます。災害時要配慮者への支援は『本人の自立を尊重し、環境整備で負担を減らす』という原則に立ち、医療救護班の看護師にはその視点とスキルが求められます。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:Aさん( 55 歳、女性)は、1 人暮らし。Aさんには視覚障害があり、光と輪郭がぼんやりわかる程度である。食事の準備や室内の移動は自立している。震度 6 の地震が発生した。Aさんは、避難所に指定されたバリアフリーの公民館に近所のBさんと避難した。公民館には複数の部屋がある。避難所の開設初日に医療救護班として看護師が派遣された。 避難所生活を開始するAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。Aさんは視覚障害があり、光と輪郭がぼんやりわかる程度ですが、自宅では食事準備や室内移動が自立していました。避難所は慣れない環境であり、環境変化による転倒リスクや不安が増大します。避難所生活で特に負担となるのは暗い夜間のトイレへの移動であり、トイレに近い部屋を割り当てることで移動距離・移動回数を減らし、自立した生活動作を継続しやすくなります。環境整備(配慮)こそが災害時要配慮者支援の基本です。

選択肢考察

  1. × 1.  BさんをAさんの介助者とする。

    Bさん自身も被災者であり、普段Aさんの介助をしているわけではない。勝手に介助役を押し付けることはBさんの心身の負担となり、関係性の悪化も招きかねない。支援体制は本人・家族・周囲の意向を尊重して調整する。

  2. × 2.  Aさんの肩に触れてから声をかける。

    視覚障害者への接近は『声をかけてから触れる』が鉄則。突然身体に触れると驚いて転倒・恐怖の原因になる。名乗ってから用件を伝え、必要に応じて許可を得てから身体接触する順序が正しい。

  3. 3.  Aさんにはトイレに近い部屋を割りあてる。

    慣れない環境での移動負担・転倒リスクを減らす合理的配慮。夜間のトイレ移動が自立でできれば尊厳とQOLが保たれ、他者介助への依存も減る。災害時要配慮者への環境整備として適切。

  4. × 4.  移動するときはAさんの手を引っ張って誘導する。

    視覚障害者の誘導は『介助者の肘の少し上を握ってもらい、半歩前を歩く』のが基本(ガイドヘルプ法)。手を引っ張ると方向や段差が予測できず恐怖感と転倒リスクを増やす。

災害時要配慮者(高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、外国人等)への支援は、本人のADLと自立度を尊重した『合理的配慮』が原則。視覚障害者の避難所生活では、トイレ・通路・出入口の位置把握、段差・障害物の除去、音声での情報提供、点字・拡大文字による掲示などが重要。福祉避難所への二次避難という選択肢もある。視覚障害者誘導の基本(声かけ→肘の少し上を握ってもらう→半歩前を歩く→段差や曲がり角で具体的に伝える)は基本技術として押さえる。DMAT、DPAT、日本赤十字社救護班など災害医療チームの役割も合わせて理解しておきたい。

災害時における視覚障害者への配慮を問う問題。本人の自立度を尊重しつつ、環境整備で負担を減らす視点がポイント。