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アフリカ帰りの周期熱――旅行者の発熱といえばまず『アレ』を疑え

看護師国家試験 第109回 午後 第77問 / 看護の統合と実践 / 国際化と看護

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第77問

Aさん( 28 歳、男性)。海外出張で訪れたアフリカ地域から帰国後 1 週に 39 ℃の発熱と解熱を繰り返すため外来を受診した。腹部症状は特にない。 予測される感染症はどれか。

  1. 1.マラリア( malaria )
  2. 2.コレラ( cholera )
  3. 3.赤痢 ( amebiasis )
  4. 4.破傷風( tetanus )

対話形式の解説

博士 博士

今回は渡航医学の問題じゃ。28歳男性がアフリカ出張から帰国1週目に、39℃の発熱と解熱を繰り返している。腹部症状はない。何を疑う?

サクラ サクラ

アフリカ、発熱、腹部症状なし…うーん、選択肢にはマラリア、コレラ、赤痢、破傷風。

博士 博士

ポイントを整理しよう。『渡航先=熱帯アフリカ』『潜伏期=1週間』『周期的な高熱』『腹部症状なし』じゃ。

サクラ サクラ

コレラや赤痢は下痢が主症状なので、腹部症状がないと合いませんね。

博士 博士

その通り!どちらも消化器症状中心の感染症じゃ。コレラは米のとぎ汁様の水様便、赤痢は血便と腹痛。Aさんには当てはまらん。

サクラ サクラ

破傷風はどうですか?

博士 博士

破傷風は創傷から破傷風菌が侵入して産生する神経毒による疾患じゃ。症状は開口障害(牙関緊急)、痙笑、後弓反張、全身痙攣。発熱と解熱の周期熱ではない。

サクラ サクラ

じゃあやっぱりマラリアですね。

博士 博士

そう、選択肢1が正解じゃ。マラリアの特徴は『周期熱』で、これはマラリア原虫が赤血球を破壊する周期に一致して高熱が出る現象じゃ。

サクラ サクラ

原虫の種類で周期が違うんですか?

博士 博士

そうじゃ。三日熱マラリア(P. vivax)と卵形マラリア(P. ovale)は48時間周期、四日熱マラリア(P. malariae)は72時間周期じゃ。熱帯熱マラリア(P. falciparum)は周期がはっきりしないことも多いが、最も重症化しやすい。

サクラ サクラ

媒介するのは蚊ですよね。

博士 博士

ハマダラカ(Anopheles属)という特定の蚊じゃ。夕方から夜間に活動する。熱帯アフリカは熱帯熱マラリアの大流行地で、予防には長袖・虫よけ・蚊帳、抗マラリア薬の予防内服が欠かせん。

サクラ サクラ

診断はどうやるんですか?

博士 博士

血液塗抹標本のギムザ染色で原虫を確認するのが標準じゃ。迅速診断キット(RDT)もある。熱帯熱マラリアは多臓器不全や脳症(脳マラリア)で急速に死に至るから、疑ったら即検査・即治療じゃ。

サクラ サクラ

治療薬は?

博士 博士

熱帯熱マラリアにはアルテミシニン併用療法(ACT)が第一選択。重症例では静注のキニンやアルテスネートを使う。三日熱・卵形マラリアは肝臓内休眠型にプリマキンを併用して根治を目指す。

サクラ サクラ

帰国後の発熱では、必ず渡航歴を聞くことが大事なんですね。

博士 博士

その通りじゃ。『渡航歴を聞かないと診断できない感染症』の代表がマラリアじゃ。日本では4類感染症で発生届が必要じゃから、看護師も渡航歴の聴取を習慣づけるとよい。

サクラ サクラ

感染症の診断には、症状だけでなく行動歴(曝露歴)が重要なんですね。

POINT

本問は渡航後発熱患者の鑑別を問う問題です。アフリカ渡航歴+1週間の潜伏期+周期的な高熱+腹部症状なしという臨床像から、マラリアが第一に疑われます。マラリアはハマダラカが媒介するマラリア原虫感染症で、赤血球破壊周期に一致した周期熱が特徴。熱帯熱マラリア(P. falciparum)はアフリカに多く、多臓器不全や脳マラリアで急速に致死的となるため、早期診断と治療が死活的に重要です。コレラ・赤痢は消化器症状中心で腹部症状のないAさんには合わず、破傷風は神経症状主体で臨床像が全く異なります。渡航後発熱診療では必ず渡航歴・曝露歴を聴取することが診断の鍵で、看護師も渡航医学の基本知識を持つことが国際化時代に求められます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:Aさん( 28 歳、男性)。海外出張で訪れたアフリカ地域から帰国後 1 週に 39 ℃の発熱と解熱を繰り返すため外来を受診した。腹部症状は特にない。 予測される感染症はどれか。

解説:正解は 1 です。キーワードは『アフリカ渡航歴』『潜伏期1週間』『39℃の発熱と解熱を繰り返す(周期熱)』『腹部症状なし』。これらの組み合わせから最も疑うべきはマラリアです。マラリアはハマダラカによって媒介されるマラリア原虫(Plasmodium属)感染症で、熱帯アフリカが最大流行地。潜伏期は原虫の種類により1〜4週間ほどで、原虫が赤血球を破壊する周期(約48〜72時間)に一致して高熱と解熱を繰り返す『周期熱』が特徴です。熱帯熱マラリア(P. falciparum)は重症化しやすく、放置すれば多臓器不全・脳症で死に至るため、渡航歴のある発熱患者では必ず鑑別する必要があります。

選択肢考察

  1. 1.  マラリア( malaria )

    アフリカ渡航歴+周期的な高熱はマラリアの典型。特に熱帯熱マラリアは悪性で急速に重症化するため、早期診断(ギムザ染色での原虫確認、迅速診断キット)と治療(アルテミシニン併用療法など)が必須。

  2. × 2.  コレラ( cholera )

    コレラ菌による急性感染症で、潜伏期は数時間〜数日。主症状は大量の米のとぎ汁様水様性下痢と嘔吐による脱水。腹部症状がないAさんには合わない。

  3. × 3.  赤痢 ( amebiasis )

    細菌性赤痢(Shigella)やアメーバ赤痢は血便・下痢・腹痛・発熱が主症状。Aさんは腹部症状がないため除外される。なお表記は『amebiasis』でアメーバ赤痢を指す。

  4. × 4.  破傷風( tetanus )

    破傷風菌(Clostridium tetani)が創傷から侵入し、産生する破傷風毒素により開口障害、痙笑、後弓反張、全身痙攣を起こす。周期的発熱は主症状ではなく、明らかに臨床像が違う。

渡航後発熱の鑑別(tropical fever)では、渡航先・潜伏期・随伴症状から絞り込むことが重要。熱帯熱マラリア(P. falciparum)は最も悪性で、アフリカ旅行者の発熱では第一に除外すべき疾患。ほかに三日熱マラリア(P. vivax、48時間周期)、四日熱マラリア(P. malariae、72時間周期)、卵形マラリア(P. ovale)がある。予防には抗マラリア薬の予防内服(メフロキン、ドキシサイクリン、アトバコン・プログアニル合剤など)と防蚊対策(長袖・虫よけ剤・蚊帳)が基本。帰国後発熱では『最終曝露から1か月以内』を目安にマラリアを疑う。日本では4類感染症として発生届出が必要。

渡航後発熱患者の鑑別問題。アフリカ渡航歴+周期熱+腹部症状なし=マラリアを第一に想起する臨床推論が問われる。