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医療安全は『個人の頑張り』ではなく『仕組みの改善』で守る

看護師国家試験 第109回 午後 第74問 / 看護の統合と実践 / 看護におけるマネジメント

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第74問

与薬の事故防止に取り組んでいる病院の医療安全管理者が行う対策で適切なのはどれか。

  1. 1.与薬の業務プロセスを見直す。
  2. 2.医師に口頭での与薬指示を依頼する。
  3. 3.病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。
  4. 4.インシデントを起こした職員の研修会を企画する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は医療安全管理の基本思想を問う問題じゃ。与薬事故を防ぐために医療安全管理者が何をすべきかを考えるぞ。

アユム アユム

まず医療安全管理者って、具体的に何をする人なんですか?

博士 博士

医療法施行規則で300床以上の病院では専任配置が義務付けられておる職種じゃ。院内の事故予防・事故対応・職員教育・マニュアル整備などを統括する、いわば医療安全の司令塔じゃな。

アユム アユム

医療安全の基本的な考え方って、『人は誰でも間違える』から出発するって聞いたことがあります。

博士 博士

その通り!『To err is human』はアメリカ医学研究所の有名な報告書のタイトルで、現代医療安全の出発点じゃ。個人の注意不足を責めるのではなく、間違えてもそれが事故に至らない仕組みを作ることが肝要じゃ。

アユム アユム

『スイスチーズモデル』というのも聞きました。

博士 博士

それじゃ。複数の防御層(指示、ダブルチェック、バーコード認証、患者確認など)を重ねて、それぞれに穴(エラー)があっても全部が重ならなければ事故は起こらない、という多層防御の考え方じゃ。

アユム アユム

そう考えると、選択肢1の『業務プロセスを見直す』が医療安全管理の本質ですね。

博士 博士

正解じゃ。事故事例を分析して、どのプロセスに穴があるかを特定し、仕組みそのものを改良するのが管理者の役割じゃ。

アユム アユム

口頭指示をお願いするのは明らかにダメですよね。

博士 博士

そう、口頭指示は聞き間違い・聞き漏れのリスクが高い。原則は文書指示、やむを得ない場合はリードバック(復唱)と24時間以内の文書化がルールじゃ。

アユム アユム

病棟ごとにマニュアルを作るのも違うんですね。

博士 博士

病棟ごとに違うと人事異動で混乱するし、標準化の観点から望ましくない。院内統一マニュアルが原則じゃ。

アユム アユム

インシデントを起こした職員だけを集めて研修するのは…

博士 博士

これは最もやってはいけないことじゃ。『個人を責める文化(blame culture)』になると、報告が隠蔽されて組織全体の学びが止まる。『no blame culture(非懲罰的文化)』でオープンに共有し、全員で学ぶのが正解じゃ。

アユム アユム

与薬時の確認事項で『5R』ってのがありますよね。

博士 博士

正しい患者、正しい薬剤、正しい用量、正しい経路、正しい時間、の5つじゃ。最近は正しい目的と正しい記録を加えて6Rや7Rと言うこともある。

アユム アユム

医療安全は個人プレーじゃなく、組織プレーなんですね。看護師として、この視点を持つことの重要性がよくわかりました。

POINT

与薬事故防止の対策として医療安全管理者が行うべき行動を問う本問は、『個人の注意喚起ではなくシステムの改善で事故を防ぐ』という医療安全の基本思想を理解しているかを問う問題です。事故の根本原因の多くは個人ではなくプロセス(業務手順)に潜んでおり、プロセス分析と改善こそが管理者の本来の役割です。口頭指示依頼はリスク増、病棟ごとのマニュアル作成は標準化に逆行、当事者限定研修はblame cultureを助長し組織学習を阻害します。スイスチーズモデル、5R、no blame culture、インシデントレポートシステムといった医療安全の基本概念は、すべての看護師が日常業務で意識すべきものです。医療の質と安全は組織全体の文化とシステムで守るという理解が、看護実践における重要な基盤となります。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:与薬の事故防止に取り組んでいる病院の医療安全管理者が行う対策で適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。医療安全管理の基本的枠組みは『人は誰でも間違える(To err is human)』という前提に立ち、個人の注意喚起ではなくシステム(業務プロセス)の改善で事故を防ぐというシステム論的アプローチです。与薬事故の多くは、指示受け、薬剤準備、ダブルチェック、患者確認、投与、記録などの一連のプロセスのどこかに潜むエラー誘発要因に起因します。医療安全管理者は事故事例を分析し、プロセスそのものを見直すことで再発防止と未然防止を図るのが本来の役割です。

選択肢考察

  1. 1.  与薬の業務プロセスを見直す。

    医療安全管理の本質である『システム改善』アプローチ。プロセスの弱点を特定し、バーコード認証、ダブルチェックポイント、規格統一などの仕組みで人的エラーを吸収する設計へ改良する。

  2. × 2.  医師に口頭での与薬指示を依頼する。

    口頭指示は聞き間違い・伝達漏れが起きやすく、事故のリスク因子そのもの。原則は文書(電子カルテ)指示で、やむを得ない口頭指示時はリードバック(復唱確認)と事後の文書化を徹底する。

  3. × 3.  病棟ごとに与薬マニュアルを作成する。

    病棟ごとにマニュアルが異なると人事異動時の混乱や抜け漏れが生じ、かえってリスクが増える。医療安全管理者は院内統一のマニュアルを策定し、部署横断で標準化を図る役割を担う。

  4. × 4.  インシデントを起こした職員の研修会を企画する。

    個人を責める文化(blame culture)では隠蔽が進み、学びが組織に広がらない。インシデントは全職員で共有し分析・学習する『no blame culture』が安全管理の基本で、当事者限定の研修は逆効果。

医療安全管理の重要概念として『スイスチーズモデル』がある。複数の防御層(指示、ダブルチェック、患者確認、バーコード認証など)にそれぞれ穴(エラー)があっても、全ての穴が重ならなければ事故は防げる、という多層防御の考え方。5R(Right patient, Right drug, Right dose, Right route, Right time)、さらに6R・7R(Right purpose, Right recordを追加)は与薬時確認の基本。インシデントレポートシステムは非懲罰的に報告を集め、組織学習に活用することが肝要。医療安全管理者は医療機関の要として、医療法施行規則により300床以上の病院では専任配置が義務付けられている。

医療安全管理者の役割は『個人の注意』ではなく『システム改善』という医療安全の基本思想を問う問題。プロセス改善・標準化・組織学習が柱。