朝のつわりに悩む妊婦さんへ──食事指導の鉄則
看護師国家試験 第106回 午後 第98問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん(24歳、初産婦、会社員)は、現在、両親と妹の4人で暮らしている。パートナー(24歳、会社員)と結婚する予定である。Aさんは、妊娠8週の妊婦健康診査で「朝起きると気持ちが悪くあまり食べられません。台所から食べ物の匂いがするだけで吐き気がします」と話している。 Aさんへの食事指導で最も適切なのはどれか。
- 1.水分は温かい飲料にする。
- 2.栄養のバランスのよい食物を摂取する。
- 3.1回量を少なくして食べる回数を増やす。
- 4.カロリーの高い食物を積極的に摂取する。
対話形式の解説
博士
今日は24歳、初産婦・妊娠8週のAさん。『朝起きると気持ちが悪く、台所の匂いで吐き気がする』と訴えておる。
アユム
これはつわりですね。
博士
その通り。医学用語では『emesis gravidarum』。妊娠5~6週頃から始まり、多くは16週頃までに自然軽快する。
アユム
なぜつわりが起きるんですか?
博士
正確なメカニズムは不明じゃが、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の急激な上昇、プロゲステロンによる消化管運動低下、精神的要因などが関与すると言われておる。
アユム
選択肢3の『1回量を少なくして食べる回数を増やす』が答えですか?
博士
その通り。空腹時に嘔気が強くなるのが特徴じゃから、胃を空にしない工夫が有効。これを分割食と言う。
アユム
具体的にはどのくらいに分けますか?
博士
1日6~8回程度に分けるとよい。朝起床前にベッドサイドでクラッカーを1枚食べる『ベッドサイド・スナック』も有効じゃ。
アユム
選択肢1の温かい飲み物はなぜダメなんですか?
博士
温度が高いと匂いが立ちやすく嘔気を誘発する。冷たい飲み物やレモン水、炭酸水など、本人が受け入れやすいもので水分を確保する方がよい。
アユム
選択肢2の栄養バランスは?
博士
理想じゃが、つわり期は『食べられるものを食べられるときに』が鉄則。バランスを気にしすぎるとストレスになり逆効果。
アユム
選択肢4のカロリーの高い食物は?
博士
過剰なエネルギーは妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・巨大児のリスクを上げる。妊娠初期のエネルギー付加量は+50kcalで十分じゃ。
アユム
中期・後期はもっと増やすんですよね?
博士
よく覚えておるな。中期は+250kcal、後期は+450kcalが日本人の食事摂取基準じゃ。
アユム
つわりが重くなると入院することもあるんですよね?
博士
うむ。体重5%以上減少、脱水、電解質異常、ケトン尿などを伴う重症つわりを『妊娠悪阻(hyperemesis gravidarum)』と言い、輸液による加療が必要になる。
アユム
重症度の目安ってあるんですか?
博士
PUQEスコアという評価尺度があるな。嘔気・嘔吐・空嘔吐の頻度をスコア化する。
アユム
薬は使えるんですか?
博士
ビタミンB6、メトクロプラミドなどが用いられることがある。制吐薬は医師が催奇形性のリスクを考慮して処方する。
アユム
食事以外の工夫も知りたいです。
博士
匂いの少ない食品を選ぶ、酸味(梅・レモン)を活用する、冷やしたものは匂いが弱く食べやすい、生姜入りお茶が効くこともある。換気や匂いの強い調理を避ける環境調整も大事じゃ。
アユム
Aさんは会社員でしたよね。仕事との両立も大変そうです。
博士
そうじゃな。通勤時間の満員電車、職場の匂い、休憩の取りにくさ等で悪化することも。母性健康管理指導事項連絡カードを活用して職場に配慮を求めることもできる。
アユム
制度も知っておくと実践で役立ちそうですね。
POINT
妊娠初期のつわりへの食事指導の基本は『1回量を少なくして食べる回数を増やす(分割食)』です。空腹時に嘔気が増強する特性を踏まえ、胃を空にしない工夫が最も効果的で、起床前のクラッカー摂取など具体策も含めて指導します。冷たくさっぱりした食物、酸味の活用、匂いの少ない食品など細やかな工夫と、カロリー・バランスを過度に気にしないおおらかな姿勢が鍵。重症時は妊娠悪阻として入院加療となるため、体重・ケトン尿・脱水の評価も忘れず、必要時は母性健康管理指導事項連絡カードなど社会資源も活用して支援します。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん(24歳、初産婦、会社員)は、現在、両親と妹の4人で暮らしている。パートナー(24歳、会社員)と結婚する予定である。Aさんは、妊娠8週の妊婦健康診査で「朝起きると気持ちが悪くあまり食べられません。台所から食べ物の匂いがするだけで吐き気がします」と話している。 Aさんへの食事指導で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。妊娠初期のつわり(emesis gravidarum)は妊娠5~6週頃から出現し、多くは16週までに自然軽快する。空腹時に嘔気が強くなる傾向があるため、1回量を少なくし回数を増やす(分割食)ことが基本指導。朝起床前にビスケットを1枚食べる『ベッドサイド・スナック』も有効。
選択肢考察
-
× 1. 水分は温かい飲料にする。
温かい飲み物は匂いが立ちやすく、嘔気を誘発しやすい。冷たい飲料やレモン水など、本人が受け入れやすい温度・風味を選ぶとよい。
-
× 2. 栄養のバランスのよい食物を摂取する。
理想ではあるが、つわり期は『食べられるものを食べられる時に少しでも』が原則。バランスを強調するとかえってストレスとなる。
-
○ 3. 1回量を少なくして食べる回数を増やす。
空腹時に嘔気が増強しやすいため、分割食が最適。胃内容を空にせず胃液の逆流も防げる。起床前のクラッカー摂取など具体策も指導できる。
-
× 4. カロリーの高い食物を積極的に摂取する。
過剰なカロリー摂取は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、巨大児のリスクを上げる。つわり期のエネルギー摂取目標は通常量+50kcal程度で十分。
つわりが重症化し、脱水・電解質異常・体重減少(5%以上)・ケトン尿を伴う場合は『妊娠悪阻(hyperemesis gravidarum)』として入院・輸液治療の対象となる。食事指導のポイントは①少量頻回②冷たくさっぱりした食物③酸味・柑橘系の活用④匂いの少ない食品⑤水分補給を優先。薬剤としてはビタミンB6、メトクロプラミドなどが使用されることもある。つわりは概ね16週までに軽快するが、個人差が大きい。
妊娠初期のつわりに対する食事指導の基本『少量頻回(分割食)』を選ぶ問題。空腹時嘔気の機序と対処法を理解しているかが問われる。
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