甲状腺クリーゼを見抜こう
看護師国家試験 第113回 午前 第80問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 基本的な病因
国試問題にチャレンジ
甲状腺クリーゼ(thyroid crisis)について正しいのはどれか。
- 1.低体温となる。
- 2.致死率は2%以下である。
- 3.誘因として感染症が多い。
- 4.初期症状として徐脈を認める。
- 5.甲状腺ホルモンの欠乏症である。
対話形式の解説
博士
今回は甲状腺クリーゼじゃ。どんな病態か説明できるかな?
アユム
バセドウ病などの甲状腺機能亢進症が急激に悪化する緊急事態ですよね。
博士
その通り。ホルモン過剰による全身の臓器不全を起こす。致死率は?
アユム
10〜20%と高く、緊急対応が必要です。
博士
うむ。誘因として最も多いのは何じゃ?
アユム
感染症です。ほかに手術、外傷、分娩、抗甲状腺薬の中断もありましたね。
博士
ヨード造影剤の使用も誘因になるぞ。覚えておくとよい。
アユム
症状は発熱、頻脈、意識障害、消化器症状などでしたね。
博士
体温は高いか低いか?
アユム
38℃以上の高熱です。代謝亢進で熱産生が増えるからですね。
博士
徐脈か頻脈か?
アユム
頻脈です。心房細動を起こして心不全につながることもあります。
博士
ホルモンは過剰か欠乏か?
アユム
もちろん過剰です。逆に欠乏の重症型は粘液水腫性昏睡で、低体温・徐脈が特徴ですね。
博士
よく整理できておる。治療薬は何じゃ?
アユム
抗甲状腺薬、β遮断薬、ステロイド、無機ヨード、そして全身管理です。
博士
完璧じゃ。発熱と頻脈を見たら甲状腺機能も忘れずに評価するんじゃぞ。
POINT
甲状腺クリーゼは甲状腺機能亢進症の急性増悪であり、感染症を最多の誘因として発症します。高熱、頻脈、中枢神経症状、心不全、消化器症状が特徴で、致死率は10〜20%と高率です。治療は抗甲状腺薬、β遮断薬、ステロイド、無機ヨード、全身管理を組み合わせて行います。粘液水腫性昏睡との鑑別を意識し、バセドウ病患者が高熱を呈した際は本症を念頭に置くことが重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:甲状腺クリーゼ(thyroid crisis)について正しいのはどれか。
解説:正解は3です。甲状腺クリーゼは甲状腺機能亢進症(主にバセドウ病)が何らかの誘因で急性増悪した致死的病態で、誘因として感染症が最も多いとされています。
選択肢考察
-
× 1. 低体温となる。
甲状腺ホルモン過剰による代謝亢進で高体温(38℃以上)となります。低体温は逆に粘液水腫性昏睡の特徴です。
-
× 2. 致死率は2%以下である。
適切な治療を行っても致死率は10%前後、重症例では20%を超えるとされる緊急性の高い病態です。
-
○ 3. 誘因として感染症が多い。
感染症がもっとも多い誘因で、ほかに手術・外傷・抗甲状腺薬の自己中断・ヨード負荷・分娩・糖尿病性ケトアシドーシスなどが誘因となります。
-
× 4. 初期症状として徐脈を認める。
洞性頻脈や心房細動など頻脈性不整脈が特徴的です。心不全を併発することもあります。
-
× 5. 甲状腺ホルモンの欠乏症である。
欠乏ではなく過剰による病態です。ホルモン作用が急激かつ著明に増強した状態といえます。
診断は日本内分泌学会の診断基準が用いられ、必須項目として甲状腺中毒症があり、中枢神経症状・発熱・頻脈・心不全・消化器症状のうち該当項目を満たすと診断されます。治療は抗甲状腺薬、β遮断薬、ステロイド、無機ヨード、全身管理を併用します。粘液水腫性昏睡(橋本病の重症型)との鑑別も重要です。
甲状腺クリーゼの病態・誘因・症状を総合的に理解しているかを問う問題です。
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