熱中症疑いのA君、搬送中の処置
看護師国家試験 第107回 午後 第98問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
A君( 14歳、男子 )は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。 B教諭が病院に電話連絡したところ、熱中症( heat illness )の疑いがあるため、A君をタクシーで病院に連れて行くこととなった。このときのA君の意識は清明で、体温は38.7℃であった。 病院到着までに、看護師がB教諭に指示する処置として適切なのはどれか。
- 1.A君の体を冷やす。
- 2.A君に水を飲ませる。
- 3.A君の上体を高くする。
- 4.中枢から末梢に向けてA君の手足をマッサージする。
対話形式の解説
博士
A君は嘔吐があり体温38.7℃、熱中症が疑われるぞ。搬送中の処置で指示すべきはなんじゃ?
アユム
体を冷やすことだと思います。
博士
正解じゃ。頸部、腋窩、鼠径部を冷やすと効率がよいのじゃ。
アユム
太い血管が皮下を走っているからですよね。
博士
そうじゃ。さらに風を送って蒸散冷却も併用するとよい。
アユム
水を飲ませるのは嘔吐後なので誤嚥のリスクがありますね。
博士
意識清明でも嘔吐直後の経口補水は危険じゃ。病院で輸液するほうが安全じゃ。
アユム
上体を高くすると脳血流がさらに低下してしまいます。
博士
循環血液量が減っておるから、水平臥位か下肢挙上が基本じゃ。
アユム
マッサージは末梢から中枢が原則ですよね。
博士
静脈還流を促す方向じゃ。それに熱中症急性期ではマッサージより冷却が優先じゃ。
アユム
熱中症はⅠ〜Ⅲ度に分類されるんですよね。
博士
Ⅲ度は熱射病で、深部体温を30分以内に39℃以下にすることが推奨されるぞ。
アユム
応急処置はFIREと覚えればよいですね。
博士
Fluid、Icing、Rest、Emergencyじゃ。涼しい場所への移動と全身冷却が基本じゃよ。
POINT
熱中症の応急処置は体温を速やかに下げることが最優先で、頸部、腋窩、鼠径部など太い血管が通る部位を冷却します。嘔吐があり誤嚥のリスクがある段階では無理な経口補水は避け、医療機関で静脈内注射による補液を行います。循環血液量が減少している状態では水平臥位や下肢挙上で脳血流を保ち、上体挙上は避けるのが原則です。マッサージは末梢から中枢へ向けて静脈還流を促す方向で行いますが、急性期は冷却を優先します。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:A君( 14歳、男子 )は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。 B教諭が病院に電話連絡したところ、熱中症( heat illness )の疑いがあるため、A君をタクシーで病院に連れて行くこととなった。このときのA君の意識は清明で、体温は38.7℃であった。 病院到着までに、看護師がB教諭に指示する処置として適切なのはどれか。
解説:正解は1です。熱中症では体温を速やかに下げることが最優先であり、頸部、腋窩、鼠径部など太い血管が皮下を走行する部位を冷却することで全身の体温が効率的に低下します。
選択肢考察
-
○ 1. A君の体を冷やす。
熱中症の応急処置の原則は速やかな体温低下です。頸部、腋窩、鼠径部を氷嚢や保冷剤で冷却し、風を送って蒸散冷却を促す方法が有効で、搬送中も継続すべき処置です。
-
× 2. A君に水を飲ませる。
A君はすでに嘔吐しており、意識は清明でも水分を経口で与えると誤嚥や再嘔吐のリスクが高まります。経口補水は嘔吐が治まり安全に飲めると判断できる状況で行います。
-
× 3. A君の上体を高くする。
熱中症では循環血液量が減少し血圧が低下していることが多く、上体を高くすると脳血流がさらに低下する恐れがあります。基本は水平臥位または下肢挙上で全身の循環を保ちます。
-
× 4. 中枢から末梢に向けてA君の手足をマッサージする。
マッサージは静脈還流を促す目的で末梢から中枢へ向けて行うのが原則です。また急性期の熱中症で積極的にマッサージを行う意義は乏しく、冷却を優先します。
熱中症はⅠ〜Ⅲ度に分類され、頭痛、嘔吐、倦怠感はⅡ度(熱疲労)、意識障害や臓器障害を伴うとⅢ度(熱射病)です。Ⅲ度では深部体温を30分以内に39℃以下にすることが推奨されます。応急処置の頭文字はFIRE(Fluid, Icing, Rest, Emergency)と覚えるとよく、涼しい場所、脱衣、全身冷却、可能なら経口補水、重症なら医療機関搬送が基本です。頸動脈、腋窩動脈、大腿動脈周囲の冷却が効率的です。
熱中症では体温を下げることが最優先で、頸部・腋窩・鼠径部の冷却が基本です。嘔吐時の経口補水は誤嚥に注意します。
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