学童期の脂質は20〜30%!0%にしてはいけないワケ
看護師国家試験 第114回 午後 第104問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 A君(12歳、男児)は、肥満を心配した保護者に連れられて来院した。A君と保護者は、医師から「1日の食事内容を毎日記録し、1週後に再診してください」と説明された。 既往歴と家族歴:特記すべきことはない。 生活歴:スナック菓子などの間食を好む。時間があればポータブル型のゲーム機でサッカーゲームばかりして、就寝時刻は毎晩午前0時を過ぎる。A君は、学校生活は楽しく思っているが朝起きられず遅刻して登校することが多い。また、運動することが嫌いなため運動の習慣はない。 身体所見:身長153.0cm(標準152.4cm)、体重61.7kg(標準44.1kg)。血圧100/60mmHg。心音と呼吸音に異常はない。腹部は平坦、軟で、肝臓と脾臓を触知しない。 A君の1週間の食事内容の記録によると、野菜が不足し、高カロリーな菓子類や甘い飲み物を好んで摂取していることが判明した。A君と保護者は「食事内容を見直し、体重を減らすことが大切です」と医師から説明され、食事摂取基準のパンフレットを渡された。パンフレットには、学童期の脂質エネルギー比率(%エネルギー)は20〜30%と記載されている。A君が診療を終えて帰宅する際、保護者は看護師に「痩せるために脂質は可能な限り0%にしないとだめですね」と話した。 脂質エネルギー比率(%エネルギー)に関する看護師の助言で適切なのはどれか。
- 1.「標準的な目標量である25%程度が良いですよ」
- 2.「当面は35%くらいだとストレスがないでしょう」
- 3.「その通りです。0%に近づける努力をしましょう」
- 4.「10%程度で成人になるまで続けるのが効果的です」
- 5.「脂質は急に減らさず、野菜の摂取で栄養を補いましょう」
対話形式の解説
博士
今日は栄養指導の問題じゃ。保護者が『脂質を0%にしないと痩せませんよね』と言ってきた場面、君ならどう答える?
アユム
え、0%はさすがにダメだと思うんですけど、どう説明すればいいか…。
博士
学童期の脂質エネルギー比率の目標量を覚えておるか?
アユム
パンフレットには20〜30%って書いてありましたね。
博士
その通り。日本人の食事摂取基準で定められておる。中央値は25%じゃ。
アユム
ということは、25%くらいを目安に伝えるのが良さそうですね。
博士
正解じゃ。極端に少なくても多くてもいけない。バランスが大事なのじゃ。
アユム
でも脂質って太る原因ですよね?減らした方が良くないんですか?
博士
脂質は確かに高カロリーじゃが、必須脂肪酸や脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収に欠かせない。細胞膜やホルモン、神経組織の材料でもある。特に成長期で0%にしたら大変なことじゃ。
アユム
どんな影響が出るんですか?
博士
皮膚障害、成長障害、免疫低下、女子では月経異常や性ホルモン異常もありうる。脳の発達にも悪影響じゃな。
アユム
じゃあ35%はどうですか?少しオーバーするくらい大丈夫そうな…。
博士
目標量の上限を超えるとエネルギー過剰になり肥満が悪化する。減量目標とは逆方向じゃ。
アユム
野菜を増やせばいいって答えるのは?
博士
野菜摂取自体は良いことじゃが、保護者は脂質の数値を聞いておる。具体的な目安を示さないと誤解は解けないのう。
アユム
なるほど、相手の質問にきちんと答えることが大事ですね。
博士
うむ。栄養指導は『何を、どのくらい』を具体的に伝えるのがコツじゃ。
アユム
A君の食事はスナック菓子や甘い飲み物中心ですよね。これらを質の良い脂質に置き換える工夫もいりますね。
博士
魚や植物油など、不飽和脂肪酸を選ぶのが良い。総量だけでなく中身の質にも目を向けるとさらに効果的じゃよ。
POINT
日本人の食事摂取基準では学童期の脂質エネルギー比率の目標量を20〜30%としており、その中央値である25%前後を目安にすることで、必須脂肪酸や脂溶性ビタミンを確保しつつ過剰摂取を避けることができる。脂質は成長期において細胞膜・ホルモン・神経組織の重要な構成成分であり、0%や10%といった極端な制限は発育障害や免疫低下、性ホルモン異常を招くため不適切である。保護者の誤った認識を是正するには、具体的な数値を示して安心感を与えることが必要で、35%の容認や数値を示さない助言は適切とは言えない。減量指導では総エネルギー量の調整と栄養バランスの両立が原則であり、スナック菓子や甘い飲料を質の良い脂質源に置き換える視点が、成長期の健全な体重管理につながる。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 A君(12歳、男児)は、肥満を心配した保護者に連れられて来院した。A君と保護者は、医師から「1日の食事内容を毎日記録し、1週後に再診してください」と説明された。 既往歴と家族歴:特記すべきことはない。 生活歴:スナック菓子などの間食を好む。時間があればポータブル型のゲーム機でサッカーゲームばかりして、就寝時刻は毎晩午前0時を過ぎる。A君は、学校生活は楽しく思っているが朝起きられず遅刻して登校することが多い。また、運動することが嫌いなため運動の習慣はない。 身体所見:身長153.0cm(標準152.4cm)、体重61.7kg(標準44.1kg)。血圧100/60mmHg。心音と呼吸音に異常はない。腹部は平坦、軟で、肝臓と脾臓を触知しない。 A君の1週間の食事内容の記録によると、野菜が不足し、高カロリーな菓子類や甘い飲み物を好んで摂取していることが判明した。A君と保護者は「食事内容を見直し、体重を減らすことが大切です」と医師から説明され、食事摂取基準のパンフレットを渡された。パンフレットには、学童期の脂質エネルギー比率(%エネルギー)は20〜30%と記載されている。A君が診療を終えて帰宅する際、保護者は看護師に「痩せるために脂質は可能な限り0%にしないとだめですね」と話した。 脂質エネルギー比率(%エネルギー)に関する看護師の助言で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。「日本人の食事摂取基準」では学童期(6〜17歳)の脂質エネルギー比率の目標量を20〜30%エネルギーと定めている。これは中央値である25%前後を狙うことで、必須脂肪酸や脂溶性ビタミンの確保と、過剰摂取によるエネルギー過剰の回避を両立する目的がある。脂質は細胞膜・ホルモン・神経組織の構成成分として成長期に欠かせない栄養素であり、極端な制限はかえって発育障害や月経異常などを招く。保護者の「0%に近づける」という誤解を解き、目標量の中央である25%を具体的な目安として提示する助言が最も適切である。
選択肢考察
-
○ 1. 「標準的な目標量である25%程度が良いですよ」
学童期の脂質エネルギー比率の目標量20〜30%の中央値であり、成長に必要な脂質を確保しつつ過剰を避けられる現実的な目安。保護者の極端な制限志向を是正する助言として最適。
-
× 2. 「当面は35%くらいだとストレスがないでしょう」
35%は目標量の上限30%を超え、エネルギー過剰や肥満悪化につながる。減量を目指す場面では適切でない。
-
× 3. 「その通りです。0%に近づける努力をしましょう」
脂質は必須脂肪酸や脂溶性ビタミンの吸収に不可欠で、特に成長期では神経系や性ホルモン形成にも必要。0%は健康被害を招く誤った指導。
-
× 4. 「10%程度で成人になるまで続けるのが効果的です」
10%は目標量の下限を大きく下回る。必須脂肪酸欠乏により皮膚障害、成長障害、免疫機能低下を招くおそれがあり長期維持は不適切。
-
× 5. 「脂質は急に減らさず、野菜の摂取で栄養を補いましょう」
野菜摂取の促進自体は有益だが、脂質エネルギー比率に関する具体的な数値を提示しておらず、保護者の誤解を直接解消する助言にならない。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、学童期・思春期の三大栄養素のエネルギー比率の目標量を、たんぱく質13〜20%、脂質20〜30%(飽和脂肪酸は10%以下)、炭水化物50〜65%としている。減量指導では総エネルギー量と栄養バランスの両面からのアプローチが原則で、特定の栄養素を極端にカットする方法は成長期では避ける。スナック菓子や清涼飲料水は遊離糖類と飽和脂肪酸が多く、これらを置き換えることが現実的な改善策となる。
学童期の脂質エネルギー比率の目標量と、保護者の誤った認識を是正する栄養指導を問う問題。極端な制限は成長期では禁忌である点が判断のポイント。
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