耐性形成を見抜こう!アルコール依存症の症状整理
看護師国家試験 第105回 午前 第111問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(42歳、男性)は、全身倦怠感を訴え病院を受診したところ、肝機能障害が認められ内科に入院した。Aさんは大量飲酒を長期間続けており、アルコール依存症(alcohol dependence)が疑われた。内科医からの依頼で精神科医が診察をしたときは、Aさんは意識清明で見当識障害はなかった。妻とは不仲であり、半年前に仕事で大きなトラブルがあったため、朝から飲酒するようになり飲酒量はさらに増えていた。 Aさんに認められるのはどれか。
- 1.病的酩酊
- 2.妻との共依存
- 3.コルサコフ症候群(Korsacoff syndrome)
- 4.アルコールに対する耐性
対話形式の解説
博士
今日はアルコール依存症の症状を整理するぞい。Aさんは42歳男性、長年の大量飲酒で肝機能障害が出て入院した事例じゃ。
サクラ
意識清明で見当識もあるのに、朝から飲むようになって量も増えているんですよね。
博士
そう、そこが最大のヒントじゃ。正解は4のアルコールに対する耐性。反復飲酒で脳のGABAやグルタミン酸受容体が適応し、同量では酔えなくなる現象じゃな。
サクラ
じゃあ選択肢1の病的酩酊はどうして違うんですか?
博士
病的酩酊は意識混濁や見当識障害、幻覚、異常興奮を伴う異常酩酊で、血中濃度と不釣り合いな重症像を示す。Aさんは意識清明で見当識障害もないから当てはまらんのじゃ。
サクラ
2の妻との共依存は?
博士
共依存は家族が世話を焼き続けて結果的に飲酒を支えてしまう関係性じゃが、Aさんは妻と不仲とあるから成立せん。
サクラ
3のコルサコフ症候群は?
博士
ビタミンB1欠乏による記銘力障害・見当識障害・作話が三徴じゃ。意識清明で見当識も保たれている今のAさんには合わん。ウェルニッケ脳症から移行することが多い慢性期の状態と覚えておくとよい。
サクラ
なるほど、耐性が形成されたから量が増えるんですね。依存症の診断基準にも耐性は入っていますよね。
博士
そのとおり。ICD-10やDSM-5では耐性・離脱・渇望・コントロール喪失・他活動より飲酒優先・有害性を知りつつ継続、などが並ぶ。『酒に強くなった』という自覚はむしろ依存進行のサインじゃ。
サクラ
早期から出るんですね。介入のタイミングも大事そうです。
博士
肝機能障害はすでに身体合併症が始まっている証拠じゃから、断酒につなげる動機づけ面接が鍵になるぞい。
POINT
アルコール依存症では中枢神経のアルコールへの適応により耐性が形成され、同量では酔えず飲酒量が増大します。Aさんは意識清明・見当識保持で病的酩酊やコルサコフ症候群は否定され、妻とは不仲で共依存も成立しません。朝からの飲酒と飲酒量増大は耐性形成の典型像で、正解は4です。耐性は依存の早期から認められ、診断基準の中核項目となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(42歳、男性)は、全身倦怠感を訴え病院を受診したところ、肝機能障害が認められ内科に入院した。Aさんは大量飲酒を長期間続けており、アルコール依存症(alcohol dependence)が疑われた。内科医からの依頼で精神科医が診察をしたときは、Aさんは意識清明で見当識障害はなかった。妻とは不仲であり、半年前に仕事で大きなトラブルがあったため、朝から飲酒するようになり飲酒量はさらに増えていた。 Aさんに認められるのはどれか。
解説:正解は 4 です。アルコール依存症では、長期にわたる飲酒により中枢神経系のGABA受容体やグルタミン酸受容体の感受性が変化し、同じ量のアルコールでは酔わなくなる「耐性」が形成されます。その結果として飲酒量が増大し、身体依存・精神依存が進行していくのが典型的経過です。Aさんは朝からの飲酒に移行し飲酒量もさらに増えており、耐性形成を強く示唆します。
選択肢考察
-
× 1. 病的酩酊
病的酩酊は意識混濁・見当識障害・幻覚・異常興奮など血中アルコール濃度に不釣り合いな重度の精神症状を呈する異常酩酊の一型です。Aさんは意識清明で見当識障害もなく、該当しません。
-
× 2. 妻との共依存
共依存とは、家族が患者の世話や尻ぬぐいをし続けることで結果的に飲酒行動を維持させてしまう関係性を指します。Aさんは妻と不仲であり、こうした関係は成立していません。
-
× 3. コルサコフ症候群(Korsacoff syndrome)
コルサコフ症候群はビタミンB1欠乏による記銘力障害・見当識障害・作話を三徴とする慢性期の健忘症候群です。Aさんは意識清明かつ見当識障害がなく、所見に合致しません。
-
○ 4. アルコールに対する耐性
反復飲酒により中枢神経系がアルコールに適応し、以前と同じ酔いを得るために量を増やさざるを得なくなる状態が耐性です。Aさんは朝から飲酒を開始し飲酒量も増大しており、典型的な耐性形成像を示しています。
アルコール依存症の診断にはICD-10やDSM-5の基準が用いられ、耐性・離脱・渇望・コントロール喪失・他の活動より飲酒を優先する・有害と知りつつ続ける、などが中核症状です。耐性は依存の早期から出現する指標で、『昔より酒に強くなった』という自覚は危険信号と覚えておきましょう。
アルコール依存症の中核症状である『耐性』の概念を、意識清明・見当識保持という情報から他の離脱・認知症状と区別できるかを問う問題です。
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