精神看護のセルフケア6項目で「いま何が一番大事?」を見抜く
看護師国家試験 第114回 午前 第115問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(30歳、男性)は統合失調症(schizophrenia)で内服治療をしていた。最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出しなくなった。ある日、母親がAさんの部屋で大量の薬を見つけ、確認すると「薬は飲みたくない」と話した。受診に付き添った母親は「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かってℾ悪口を言うな』ℾ監視するな』と大声で怒鳴る」と主治医に話した。Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始された。 入院3日、夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。他の患者と話すことはあるがトラブルはない。歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う。 Aさんのセルフケアの観察項目で優先度が高いのはどれか。
- 1.孤独と付き合いのバランス
- 2.活動と休息のバランス
- 3.安全を保つ能力
- 4.個人衛生
対話形式の解説
博士
今日は統合失調症で入院したAさんの観察優先度の問題じゃ。Underwoodのセルフケア理論、覚えておるかの?
サクラ
えっと…6つの項目があるんですよね。
博士
そうじゃ。①空気・水・食物、②排泄、③活動と休息のバランス、④孤独と付き合いのバランス、⑤安全を保つ能力、⑥個人衛生の6つ。これでアセスメントするのが精神看護の基本枠組みなんじゃ。
サクラ
Aさんはどんな状態ですか?
博士
入院前に服薬を自己中断して幻聴・被害妄想が悪化、入院3日目で夜間覚醒・日中傾眠の昼夜逆転状態じゃな。
サクラ
それぞれ照らし合わせてみますね。他患者とトラブルはないので「孤独と付き合いのバランス」は今すぐ大問題ではないかな。
博士
その通り。回復期で社会復帰を考える段階で重要になる項目じゃ。
サクラ
安全を保つ能力は?被害妄想がありますけど…。
博士
自傷他害はみられず、声をひそめて訴える程度。観察は継続するが、優先度は活動と休息より低い。
サクラ
個人衛生は声かけで対応できているので、これも優先度は中くらいですね。
博士
残るは活動と休息のバランス。夜間覚醒・日中傾眠で、レクリエーションも「疲れた」で参加できておらん。これが今のAさんの一番の課題じゃ。
サクラ
どうして昼夜逆転がそんなに重要なんですか?
博士
生活リズムが崩れると疲労やストレスがたまり、服薬の遵守も乱れやすい。これが症状再燃の引き金になるんじゃ。
サクラ
悪循環を断つためにまずは生活リズムを整えるってことですね。
博士
その通り。日中の覚醒を促し、夜間の睡眠を確保する関わりが、抗精神病薬の効果を引き出すうえでも欠かせん。
サクラ
統合失調症の急性期って、薬だけじゃなく生活面の支援も重要なんですね。
博士
そうじゃ。さらに薬物療法と心理教育を組み合わせて、退院後の服薬継続まで見据えるのが精神看護の専門性じゃ。
サクラ
Underwoodの6項目を覚えておくと、優先順位を機械的に判定できそうですね。
POINT
精神看護におけるセルフケアアセスメントは、Underwoodの6項目(空気水食物・排泄・活動と休息・孤独と付き合い・安全・個人衛生)を枠組みとし、対象の状態に応じて優先順位をつけて支援します。本症例のAさんは服薬自己中断により陽性症状が再燃し、夜間覚醒・日中傾眠という生活リズムの破綻が最大の問題で、活動と休息のバランスを整えることが最優先課題となります。生活リズムの乱れは疲労蓄積、服薬遵守低下、症状再燃という負のスパイラルを生むため、急性期では薬物療法と並行して睡眠覚醒リズムの確立を支援することが回復の鍵を握ります。陽性症状(幻覚・妄想)と陰性症状(自閉・感情の平板化)、認知機能障害といった統合失調症の3群症状を理解した上で、回復段階に応じてセルフケア支援の重点をシフトしていく視点も大切です。再発予防には継続服薬と心理社会的治療の併用が有効であることが示されており、急性期から退院後の生活像を見据えた看護介入が求められます。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(30歳、男性)は統合失調症(schizophrenia)で内服治療をしていた。最近、部屋にこもり、精神科受診以外は外出しなくなった。ある日、母親がAさんの部屋で大量の薬を見つけ、確認すると「薬は飲みたくない」と話した。受診に付き添った母親は「Aは昼間に寝ていて、夜に窓を開けて、隣の家に向かってℾ悪口を言うな』ℾ監視するな』と大声で怒鳴る」と主治医に話した。Aさんと母親の強い希望があり、精神科病棟に入院することになり、薬物療法が開始された。 入院3日、夜間の巡視のたびにAさんは起きていて「隣の人が自分を監視している」「皆が悪口を言っている」と小さな声で看護師に話した。日中はホールで眠そうにしていることもあり、レクリエーションには「疲れた」と言って参加しない。他の患者と話すことはあるがトラブルはない。歯磨きや身だしなみは、声をかけると行う。 Aさんのセルフケアの観察項目で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんは入院前に服薬を自己中断したことで陽性症状(被害妄想・幻聴)が悪化しており、入院3日目の現在は夜間覚醒・日中の傾眠という昼夜逆転状態にあります。Orem-Underwoodのセルフケア理論では、精神看護で観察する基本的セルフケアは①空気・水・食物、②排泄、③活動と休息のバランス、④孤独と付き合いのバランス、⑤安全を保つ能力、⑥個人衛生の6項目に整理されますが、Aさんの現状で最も支援が必要なのは「活動と休息のバランス」です。生活リズムの乱れは疲労の蓄積、服薬遵守の低下、症状再燃と直結するため、睡眠覚醒リズムを整えることが急性期治療と回復の土台になります。
選択肢考察
-
× 1. 孤独と付き合いのバランス
他患者と会話しトラブルもなく、対人交流に大きな問題はみられない。陽性症状が落ち着いた回復期以降に重視される観察項目で、急性期の現段階での優先度は高くない。
-
○ 2. 活動と休息のバランス
夜間に覚醒し日中傾眠する昼夜逆転状態で、レクリエーションも疲労で参加できていない。生活リズムの乱れは服薬遵守低下や症状悪化に直結するため、最優先で観察し支援すべき項目である。
-
× 3. 安全を保つ能力
被害妄想はあるが他患者とのトラブルや自傷他害行為はみられない。観察は継続するが、現時点では活動と休息ほどの優先度はない。
-
× 4. 個人衛生
声かけで歯磨きや身だしなみを整えられており、最低限のセルフケアは保たれている。優先度は他の項目より低い。
Underwoodのセルフケア理論は精神看護で広く活用される枠組みで、6つのカテゴリーで対象を多面的にアセスメントする。統合失調症の急性期は陽性症状が顕著で、生活リズムの破綻・服薬中断・幻覚妄想による不眠が連鎖して悪化することが多い。回復期に入ると対人関係や社会復帰、再発予防のための心理教育が中心となる。本症例のように服薬自己中断による再燃例では、まず睡眠覚醒リズムを整え、薬物療法を確実に行い、心理教育で服薬継続の動機づけを行う流れが基本となる。
Underwoodのセルフケア6領域に基づき、入院急性期の統合失調症患者で最も優先される観察項目を選ぶ。昼夜逆転を伴う活動と休息のバランス調整が鍵。
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