ひとりで抱え込まないために—依存症回復を支えるセルフヘルプグループ
看護師国家試験 第114回 午後 第114問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。 入院後5日、物質使用障害<依存症>(substance use disorders)の診断を受け、治療によって状態が安定したAさんは退院の準備をすることになった。Aさんは1人暮らしを続けながら復学を希望している。 Aさんに利用を勧める社会資源はどれか。
- 1.行動援護
- 2.同行援護
- 3.セルフヘルプグループ
- 4.共同生活援助<グループホーム>
対話形式の解説
博士
今日はAさんが退院後にどんな社会資源を使うかを考えるぞ。診断は物質使用障害、希望は1人暮らし継続と復学じゃ。
アユム
依存症って薬を止めたら治る…わけじゃないですよね?
博士
その通り。依存症は「慢性かつ再発する脳の疾患」と位置づけられておる。退院後に支える仕組みがないと再使用に陥りやすいのじゃ。
アユム
では何が一番効くんですか?
博士
世界共通でゴールドスタンダードとされるのは、当事者同士が体験を語り合うセルフヘルプグループ(自助グループ)への参加じゃ。薬物ならNA、アルコールならAA、ギャンブルならGAが代表例じゃな。
アユム
同じ経験をした人と話すと何がいいんでしょう?
博士
3つある。1つ目は「自分だけじゃない」と知れて孤立感が和らぐ。2つ目は再使用しそうな場面の対処法を仲間から学べる。3つ目は新しい人間関係を作って依存していたコミュニティから距離を取れる。
アユム
Aさんの希望にもぴったりですね。
博士
そうじゃ。1人暮らしも復学も継続したまま参加できる。費用もほとんどかからず、地域の会場や最近はオンラインミーティングもある。
アユム
選択肢1の行動援護はなぜ違うんですか?
博士
行動援護は知的・精神障害で行動上著しい困難があり常時介護が必要な人の外出支援じゃ。Aさんは自立生活ができる回復段階で対象外じゃ。
アユム
選択肢2の同行援護は…視覚障害向けでしたよね?
博士
その通り。視覚機能に問題のないAさんには適応外じゃ。
アユム
選択肢4の共同生活援助は1人暮らしの希望と合わないですね。
博士
鋭いのう。グループホームは自立生活が難しい人が世話人の支援を受けて共同生活する場。Aさんの「ひとり暮らし継続」とは方向性が逆じゃ。
アユム
依存症治療って薬以外に何があるんですか?
博士
標準的には3本柱じゃ。①医療機関での外来治療と再発予防薬②SMARPPなどの認知行動療法プログラム③セルフヘルプグループ。これらを組み合わせると再使用率が下がることが示されておる。
アユム
家族向けの集まりもあるんですか?
博士
ある。Nar-AnonやAl-Anonといった家族会じゃ。家族も巻き込まれて共依存に陥りやすいから、家族のケアも重要じゃ。
アユム
看護師としては具体的な団体名や連絡先を渡せると安心ですね。
博士
まさに。各都道府県の精神保健福祉センターが情報のハブになっておる。退院支援ではこうした地域資源マップを一緒に作るのが看護の腕の見せどころじゃ。
POINT
物質使用障害は慢性かつ再発しやすい疾患であり、薬物療法だけでなく心理社会的支援が不可欠です。なかでもセルフヘルプグループ(NA・AA・GAなど)は同じ経験をもつ仲間との体験共有を通じて孤立感を軽減し、再使用の回避スキルや新たな人間関係を築く場となります。Aさんは1人暮らし継続と復学を希望しており、生活形態を変えずに参加できるセルフヘルプグループは最も適合する資源です。行動援護・同行援護・共同生活援助はそれぞれ重度障害者・視覚障害者・自立生活困難者を対象としており、Aさんの状況と合いません。看護師は外来治療・認知行動療法・自助グループという3本柱を念頭に、地域の具体的な資源情報を退院支援に組み込んでいくことが求められます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。 入院後5日、物質使用障害<依存症>(substance use disorders)の診断を受け、治療によって状態が安定したAさんは退院の準備をすることになった。Aさんは1人暮らしを続けながら復学を希望している。 Aさんに利用を勧める社会資源はどれか。
解説:正解は 3 です。物質使用障害(依存症)の回復には「同じ問題を抱えた当事者同士の支え合い」が極めて重要であり、これを担うのがセルフヘルプグループ(自助グループ)です。代表的なものに薬物依存ではNA(Narcotics Anonymous)、アルコール依存ではAA(Alcoholics Anonymous)、ギャンブル依存ではGA(Gamblers Anonymous)があります。Aさんは1人暮らしを継続しながら復学を希望しており、生活の場や形態を大きく変えずに継続的回復支援を受けられるセルフヘルプグループは最適な社会資源です。再使用予防、孤立感の軽減、新たな人間関係の構築が同時に達成できる利点があります。
選択肢考察
-
× 1. 行動援護
行動援護は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、知的障害や精神障害により行動上著しい困難があり常時介護を必要とする人の外出支援を行うもの。Aさんは自立生活と復学が可能な状態であり対象とならない。
-
× 2. 同行援護
同行援護は視覚障害により移動が著しく困難な人を対象とした外出支援サービス。視覚障害のないAさんは対象外である。
-
○ 3. セルフヘルプグループ
依存症からの回復に最も基本的かつ有効な社会資源。同じ依存症を経験した仲間と体験を共有することで再使用予防、孤立解消、自尊心の回復が図れ、Aさんが希望する1人暮らし+復学のライフスタイルとも両立できる。
-
× 4. 共同生活援助<グループホーム>
共同生活援助は障害者が世話人の支援を受けながら共同で生活する居住の場で、自立生活が困難な人が対象。1人暮らしを希望するAさんの意向と合わない。
依存症治療は薬物療法だけでは完結せず、心理社会的アプローチが不可欠とされる。治療の柱は「医療機関での外来治療+認知行動療法(SMARPPなど)+セルフヘルプグループへの参加」の三本柱が標準的で、家族向けにはNar-Anon・Al-Anonといった家族会もある。看護師は本人の意思を尊重しながら、近隣の自助グループ情報・依存症専門外来・精神保健福祉センターの相談窓口などを具体的に提示することが求められる。
物質使用障害の回復期にある若年女性に勧める社会資源を問う問題。「1人暮らし+復学」という生活希望に合致し、依存症の継続的回復支援に最も寄与する資源を選ぶことが要点となる。
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