処方薬がいつしか「快感の道具」に…乱用と急性中毒はどう違う?
看護師国家試験 第114回 午後 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。 Aさんの現在の状態はどれか。
- 1.急性中毒の状態である。
- 2.拘禁反応が出現している。
- 3.有害な使用<乱用>である。
- 4.フラッシュバックが出現している。
対話形式の解説
博士
今回はベンゾジアゼピン系抗不安薬を巡る乱用と依存の話じゃ。Aさんの経過を読むと、まず最初は不安緩和目的で頓用していた。これは適切な使用じゃな。
アユム
はい、頓服指示通りに飲んでいたなら問題ないですよね。
博士
ところが途中から「酩酊や陶酔感」を求めて飲むようになった。これがターニングポイントじゃ。何が問題と感じる?
アユム
使う目的が変わってしまったことですか?
博士
その通り。医学的目的から逸脱した目的での使用、これは乱用の重要な特徴の1つじゃ。さらに同量で効かなくなって用量を増やしているところもポイントじゃな。
アユム
それって耐性ですよね?
博士
うむ、まさに耐性形成じゃ。そして翌日大学を休むという社会機能の低下まで出ておる。乱用の3要素「快感目的」「コントロール障害」「有害な結果」が揃っておるのじゃ。
アユム
選択肢1の急性中毒との違いはどこですか?
博士
急性中毒は今まさに大量服薬して意識障害や呼吸抑制が出ている場面を指す。Aさんの「現在の状態」は慢性的な使用パターンの記述で、急性中毒の症状記載はない。
アユム
なるほど、時間軸が違うんですね。
博士
その通りじゃ。選択肢2の拘禁反応はどう思う?
アユム
閉じ込められた環境で起こるやつですよね?Aさんは1人暮らしで自由なのでズレますね。
博士
正解。拘禁反応は刑務所や閉鎖病棟など極端に自由が制限された環境特有の精神反応じゃ。
アユム
選択肢4のフラッシュバックは…PTSDで出るやつですか?
博士
うむ。トラウマ体験や幻覚剤使用後に過去の知覚が突然蘇る現象。問題文にそんな訴えはないから却下じゃ。
アユム
ICD-10の整理を聞いてもいいですか?
博士
もちろんじゃ。物質関連は急性中毒・有害な使用・依存症候群・離脱状態・精神病性障害などに分けられる。Aさんは有害な使用に該当し、耐性とコントロール障害の項目があるから依存症候群への移行が懸念される。
アユム
処方薬でも依存って起こるんですね。怖い…。
博士
ベンゾジアゼピン系は短期使用なら有用じゃが、長期・高用量では依存形成リスクが高い。だから現在のガイドラインでは原則4週間以内、漫然投与は避けるとされておる。
アユム
看護師としては早期発見と専門治療や自助グループへのつなぎが大事ですね。
POINT
Aさんは抗不安薬を陶酔目的で処方量を超えて使用し、耐性形成と大学の欠席という社会機能低下まで生じています。これはICD-10における「有害な使用(乱用)」の定義に合致し、依存症候群への移行段階と評価されます。急性中毒は服用直後の中毒症状を、拘禁反応は強い拘束環境下で起こる精神反応を、フラッシュバックはPTSDや幻覚剤後遺症で過去体験が再現する現象を指し、いずれもAさんの慢性的な使用パターンには当てはまりません。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は適切な使用なら有用ですが、長期・高用量で依存リスクが高く、処方薬依存は今や看護師が遭遇する代表的な物質使用障害の1つです。早期に乱用パターンを察知し、専門医療や自助グループへつなぐ橋渡しの視点を持つことが、回復支援の鍵となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(21歳、女性、大学生)は、1人で暮らしている。友人関係のトラブルでうつ状態になり、3か月前から精神科クリニックへの通院を開始した。頓用の抗不安薬を処方され不安が高まったときに服用していたが、徐々に酩酊や陶酔感を得るために服用するようになった。最近は指示された抗不安薬の量では酩酊や陶酔感が得られなくなってきたため、数日分の薬を溜めて一度に大量に服用するようになった。抗不安薬を大量に使用した翌日は大学を休むことが続いていた。 Aさんの現在の状態はどれか。
解説:正解は 3 です。Aさんは本来「不安緩和」のために頓用処方された抗不安薬を、酩酊や陶酔感という快感目的で服用するようになり、しかも処方量を超えて数日分をまとめ飲みするまで使用パターンが逸脱しています。さらに大量服用の翌日は大学を欠席するなど社会生活にも明らかな悪影響が出ています。このように医学的に推奨されない方法で物質を反復使用し、心身や社会機能に害が生じている状態をICD-10では「有害な使用(harmful use)」、一般的には「乱用(abuse)」と呼びます。耐性形成(同量で効かなくなる)も認められており、依存症への進展段階にあると評価できます。
選択肢考察
-
× 1. 急性中毒の状態である。
急性中毒は服用直後に意識障害・呼吸抑制・運動失調などが出現している「いま中毒症状が起こっている」状態を指す。問題文は慢性的な乱用パターンを問うており、現在意識障害などの症状は記載されていないため該当しない。
-
× 2. 拘禁反応が出現している。
拘禁反応は刑務所・閉鎖病棟など自由が著しく制限される環境下で生じる一過性の精神症状であり、自由な生活を送っているAさんには当てはまらない。
-
○ 3. 有害な使用<乱用>である。
陶酔目的での処方量逸脱、耐性形成、欠席による社会機能低下という3点が揃っており、ICD-10の「有害な使用」の定義に合致する。依存症の前段階または併存する状態と理解されている。
-
× 4. フラッシュバックが出現している。
フラッシュバックは外傷的体験や幻覚剤使用後に過去の体験・知覚が突然再現する現象で、PTSDや覚醒剤後遺症などで生じる。Aさんには該当する訴えがない。
ICD-10では物質関連の状態を「急性中毒」「有害な使用」「依存症候群」「離脱状態」「精神病性障害」などに整理している。有害な使用と依存症候群の違いは、依存症候群が「渇望」「コントロール障害」「耐性」「離脱」「他の興味の喪失」「有害と知りつつ続ける」などのうち複数項目を満たす点にある。Aさんはすでに耐性とコントロール障害の徴候があり、依存症への移行リスクが高いため、本人の動機づけ支援とともに専門医療や自助グループへのつなぎが重要となる。
処方薬を陶酔目的で逸脱使用し社会生活に支障が出ている状態を、急性中毒・拘禁反応・乱用・フラッシュバックのどれに位置づけるかを問う精神科分類問題。
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