統合失調症の再発予防に有効!家族心理教育とは
看護師国家試験 第106回 午後 第105問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん(28歳、女性)は、両親と3人で暮らしている。24歳のときに統合失調症( schizophrenia )を発症し治療を開始している。Aさんは大学卒業後に一度就職したが、発症後に退職し、現在も無職である。2週前から元気がなく、自室に引きこもって独り言を言っているのが目立つようになったため、両親同伴で外来を受診した。両親からは、1年前から便秘が続き、Aさんが薬の副作用(有害事象)を気にするようになったという話があった。 診察では幻聴の悪化が認められたため、薬物治療の見直しが行われた。その後、定期的に両親同伴で外来通院を続けた。3か月後、幻聴は改善傾向を示し、規則正しい生活ができるようになった。外来の診察で、悪化した原因を改めて振り返ったところ、Aさんは「半年前から家族に分からないように薬をトイレに捨てていた」と話した。診察後、Aさんからそれを聞いた両親が、医師や看護師の目の前でAさんを大きな声で叱ると、Aさんの表情は険しくなった。 Aさんの両親に勧めるものとして適切なのはどれか。
- 1.心理教育
- 2.内観療法
- 3.自律訓練法
- 4.精神分析療法
対話形式の解説
博士
前回のAさんの続きじゃ。服薬再開で症状は改善したが、半年前から薬を捨てていたと告白した。両親はそれを聞いて大声で叱責した。
サクラ
Aさんの表情が険しくなったのは、叱られて辛かったんでしょうね。
博士
そうじゃ。統合失調症の家族研究では『高EE』という概念が重要じゃ。
サクラ
高EEって何ですか?
博士
高EE(high expressed emotion、高表出感情)とは家族の批判的コメント、敵意、情緒的巻き込まれが強い状態のことでな、これが高いと再発率が2倍以上に上がることが報告されておる。
サクラ
つまり両親の叱責行動は、統合失調症にとって最も避けるべき関わり方だったんですね。
博士
その通り。だからこそ家族に病気の特徴と適切な関わり方を教える必要がある。それが心理教育じゃ。
サクラ
心理教育ってどんなことをするんですか?
博士
疾患の症状・原因・治療、症状悪化のサイン、服薬管理、ストレス対処、コミュニケーションスキルなどを構造的に学ぶプログラムじゃ。家族と患者が一緒に学ぶ場合もある。
サクラ
効果はあるんですか?
博士
エビデンスはしっかりしておるぞ。家族心理教育は統合失調症の再発率を約半分まで低下させることが示されておる。日本でも『家族心理教育実施マニュアル』に沿って全国で実施されている。
サクラ
他の選択肢を見てみます。『内観療法』は?
博士
日本の吉本伊信が創始した療法じゃ。『してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと』の3項目で過去を振り返る。神経症やアルコール依存症に適応で、統合失調症の家族支援には不適切じゃ。
サクラ
『自律訓練法』はリラックス法でしたよね?
博士
ドイツのシュルツが開発した自己催眠法じゃ。『手足が重い・温かい』などの段階的公式で自律神経を整える。不安障害や心身症向けで、両親の疾患理解支援には当てはまらん。
サクラ
『精神分析療法』は?
博士
フロイト発祥の自由連想による無意識探索じゃ。長時間かかる上、統合失調症では症状悪化のリスクがあるため禁忌に近い。
サクラ
心理教育と他の心理療法の違いがよくわかりました。
博士
心理教育の特徴は『教育的支援』である点じゃ。病気を理解して対処スキルを身につけるという実用的なアプローチじゃな。
サクラ
看護師は家族支援でもこうした社会資源を適切に紹介できる力が大切ですね。
博士
その通り。家族も治療の重要なパートナーじゃから、家族が疲弊せず適切に関われるよう支援するのが看護の役割じゃ。
POINT
統合失調症の再発予防には薬物療法と並んで家族の関わり方が極めて重要で、批判・敵意・情緒的巻き込まれの強い高EE環境は再発リスクを2倍以上に高めることが知られています。家族心理教育は疾患理解、症状悪化サインの見極め、コミュニケーションスキル、服薬支援などを構造的に学ぶプログラムで、再発率を約半分に低下させるエビデンスがあります。Aさんの両親の叱責行動は高EEに相当するため、心理教育で適切な関わり方を学ぶ必要があります。内観療法・自律訓練法・精神分析療法は統合失調症患者家族への再発予防教育としては適応外であり、心理教育との違いを明確に理解しておくことが重要です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(28歳、女性)は、両親と3人で暮らしている。24歳のときに統合失調症( schizophrenia )を発症し治療を開始している。Aさんは大学卒業後に一度就職したが、発症後に退職し、現在も無職である。2週前から元気がなく、自室に引きこもって独り言を言っているのが目立つようになったため、両親同伴で外来を受診した。両親からは、1年前から便秘が続き、Aさんが薬の副作用(有害事象)を気にするようになったという話があった。 診察では幻聴の悪化が認められたため、薬物治療の見直しが行われた。その後、定期的に両親同伴で外来通院を続けた。3か月後、幻聴は改善傾向を示し、規則正しい生活ができるようになった。外来の診察で、悪化した原因を改めて振り返ったところ、Aさんは「半年前から家族に分からないように薬をトイレに捨てていた」と話した。診察後、Aさんからそれを聞いた両親が、医師や看護師の目の前でAさんを大きな声で叱ると、Aさんの表情は険しくなった。 Aさんの両親に勧めるものとして適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。心理教育とは、精神疾患の症状・原因・治療・対処法などの知識を患者と家族に提供し、病気への理解を深め適切な対処行動を身につけられるよう支援する心理療法的アプローチである。両親は『薬をトイレに捨てていた』行動に対して叱責で反応しており、統合失調症の病態理解や高EE(表出感情)が再発リスクを高める知識が不足している。心理教育を受けることで、家族の適切な関わり方が身につき、Aさんの再発予防と治療継続に有効となる。
選択肢考察
-
○ 1. 心理教育
疾患の理解と対処スキルを家族・患者に提供する教育的支援。統合失調症では高EE(批判・敵意・情緒的巻き込まれ)が再発リスクを高めることが知られ、家族心理教育は再発率低下に有効なエビデンスがある。両親の叱責行動を適切な関わりに変えるのに最適。
-
× 2. 内観療法
日本独自の心理療法で、過去の人間関係を『してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと』の3項目で振り返り自己洞察を深める方法。神経症やアルコール依存などが適応で、統合失調症患者の家族支援には不適切。
-
× 3. 自律訓練法
ドイツのシュルツが開発した自己催眠による段階的リラクセーション法。不安障害や心身症の症状緩和に用いる。両親の疾病理解不足に対する支援法ではない。
-
× 4. 精神分析療法
フロイトに始まる無意識の葛藤を自由連想で探る心理療法。長時間を要し、統合失調症では症状悪化の恐れがあるため適応外。家族への再発予防教育には不向き。
統合失調症の再発予防における家族研究で、家族の高EE(expressed emotion:批判的コメント・敵意・情緒的巻き込まれ)は再発リスクを2倍以上に高めると報告されている。家族心理教育は疾患理解の促進、適切なコミュニケーションスキル、症状悪化のサインの見極め、服薬管理の支援方法などを構造的に学ぶプログラムで、患者の再発率を約半分にまで低下させるエビデンスがある。日本でも『統合失調症薬物治療ガイドライン』や『家族心理教育実施マニュアル』に沿って全国で実施されている。
統合失調症の家族支援における心理教育の位置づけと、他の心理療法との違いを区別できるかを問う問題。
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