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パニック障害の回避行動に認知行動療法で挑む

看護師国家試験 第108回 午前 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

108回 午前 第112問

次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害(panic disorder)と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 受診から1か月後、Aさんは11階の職場に向かう途中、エレベーターの中でパニック発作を再び起こした。その時は、息が止まってしまうように感じた。それ以来、エレベーターを見ると、また同じようになってしまうかもしれないと思うようになり、怖くて乗れなくなり、仕事にも支障が出るようになった。 Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。

  1. 1.「エレベーターの中で息が止まる」という認知による感情・行動を修正する。
  2. 2.同じ症状を持つ人々との話し合いを通じて症状の軽減を図る。
  3. 3.抗うつ薬の効果についての正しい知識を教育する。
  4. 4.ロールプレイを通じて社会生活技能を訓練する。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは再発作の後「エレベーターに乗ると息が止まる」と感じ、エレベーターを避けるようになった。これを何と呼ぶかのう

アユム アユム

予期不安と回避行動ですか?

博士 博士

その通りじゃ。パニック障害では発作そのものよりも、また起こるのではないかという予期不安、そして状況を避ける回避行動が生活の質を大きく下げるんじゃ

アユム アユム

なぜ認知の修正が必要なんですか?

博士 博士

Aさんは動悸や息苦しさという身体感覚を「息が止まる」と破局的に解釈しておる。この自動思考が不安を増幅し、回避行動を生むんじゃ。認知行動療法ではこの誤った解釈を現実的な見方に修正していく

アユム アユム

具体的にはどうやるんですか?

博士 博士

認知再構成で「実際に息が止まった証拠はあるか」「最悪何が起きるか」と現実検討を促し、さらに段階的曝露で安全な状況から少しずつエレベーターに近づいていく。これを組み合わせるのが基本じゃ

アユム アユム

選択肢2の同じ症状の人との話し合いは?

博士 博士

ピアサポートは回復期には有用じゃが、現段階では他者の発作体験を聞くと逆に不安が強まる恐れがある。最優先ではない

アユム アユム

選択肢3の抗うつ薬の知識教育はどうですか

博士 博士

Aさんは薬の効果を理解していないわけではない。服薬教育だけでは回避行動は解消しないんじゃ

アユム アユム

選択肢4のロールプレイはどうでしょう

博士 博士

それは社会生活技能訓練(SST)のことじゃな。主に統合失調症の患者が対人技能を獲得するためのプログラムで、パニック障害の予期不安への介入ではない

アユム アユム

それで正解は1なんですね

博士 博士

その通り。パニック障害では放置すると広場恐怖症を合併し、外出もできなくなる例があるから、早期に認知行動療法を導入することが重要じゃ

アユム アユム

薬物療法と心理療法の両輪ですね

博士 博士

まさにその通り。SSRIで生理的な発作の閾値を上げ、認知行動療法で心理的メカニズムに働きかける。これが標準治療じゃ

POINT

パニック障害では身体感覚への破局的解釈が予期不安と回避行動を生み、社会生活を大きく損ないます。Aさんは「エレベーター=息が止まる」という誤った認知を形成しており、認知行動療法により認知再構成と段階的曝露を行うことが第一選択です。ピアサポートや服薬教育、SSTは現段階の第一選択ではなく、歪んだ認知への直接介入が必要です。SSRIと認知行動療法の併用が標準治療となります。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害(panic disorder)と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 受診から1か月後、Aさんは11階の職場に向かう途中、エレベーターの中でパニック発作を再び起こした。その時は、息が止まってしまうように感じた。それ以来、エレベーターを見ると、また同じようになってしまうかもしれないと思うようになり、怖くて乗れなくなり、仕事にも支障が出るようになった。 Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。Aさんはエレベーターで発作を経験したことから「エレベーターに乗ると息が止まる」という誤った認知(破局的解釈)が形成され、予期不安と回避行動を呈しています。これは認知行動療法の対象となる典型的な状態で、誤った自動思考を同定し、現実的な認知へ修正していくことがパニック障害・広場恐怖症の治療の中核です。

選択肢考察

  1. 1.  「エレベーターの中で息が止まる」という認知による感情・行動を修正する。

    パニック障害における予期不安と回避行動は、身体感覚を破局的に解釈する誤った認知から生じます。認知行動療法によりこの認知を修正し、段階的曝露を組み合わせることで回避行動を改善できます。

  2. × 2.  同じ症状を持つ人々との話し合いを通じて症状の軽減を図る。

    ピアサポートは回復期に有用ですが、現在Aさんに最優先されるのは歪んだ認知の修正です。他者の体験談を聞くことで逆に不安が増幅する場合もあり、今の段階での第一選択ではありません。

  3. × 3.  抗うつ薬の効果についての正しい知識を教育する。

    Aさんの問題は薬への理解不足ではなく、特定状況に対する予期不安と回避です。服薬教育だけでは回避行動は解消しません。

  4. × 4.  ロールプレイを通じて社会生活技能を訓練する。

    社会生活技能訓練(SST)は統合失調症など対人スキルの獲得が課題の患者に用いる手法で、パニック障害の予期不安・回避への介入としては適切ではありません。

パニック障害への認知行動療法では、身体感覚への破局的解釈を修正する認知再構成と、回避している状況に段階的に曝露するエクスポージャーを組み合わせます。広場恐怖症(アゴラフォビア)を合併する例も多く、放置すると社会機能が大きく損なわれるため早期介入が重要です。

パニック障害の予期不安・回避行動に対する第一選択の心理療法(認知行動療法)を理解しているかが問われています。