精神障害者のリカバリを理解しよう
看護師国家試験 第104回 午前 第90問 / 精神看護学 / 精神看護の対象理解と支援
国試問題にチャレンジ
精神障害者のリカバリ〈回復〉の考え方で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.患者に役割をもたせない。
- 2.薬物療法を主体に展開する。
- 3.患者の主体的な選択を支援する。
- 4.患者のストレングス〈強み・力〉に着目する。
- 5.リカバリ〈回復〉とは病気が治癒したことである。
対話形式の解説
博士
今日はリカバリの考え方じゃ。リカバリって治ることと同じ意味かの?
アユム
違う気がします。症状があっても自分らしく生きることでしょうか?
博士
おお、よく分かっておるな。それがパーソナル・リカバリじゃ。
アユム
症状の消失とは違うんですね。
博士
そうじゃ。クリニカル・リカバリと区別されるぞ。両方含む概念じゃ。
アユム
看護では何を大切にしますか?
博士
当事者の主体的な選択を支援することじゃ。本人が決めるのを支えるんじゃ。
アユム
ストレングスって何ですか?
博士
当事者の強み・能力・希望・関心・周囲の資源のことじゃ。問題ばかり見ずに強みに焦点を当てるんじゃ。
アユム
ストレングスモデルが土台なんですね。
博士
その通り。アンソニーやラップの理論が有名じゃ。
アユム
薬物療法は主体ではないんですか?
博士
薬は支える要素の一つにすぎん。心理社会的支援やピアサポート、就労支援も重要じゃ。
アユム
役割を持つことは大事ですか?
博士
非常に大事じゃ。役割が自己効力感や生きがいを高めるんじゃ。
アユム
共同意思決定という言葉も聞きました。
博士
SDMじゃな、医療者と当事者がともに選択肢を検討する手法じゃ。
アユム
覚えるべきキーワードはありますか?
博士
CHIME、つまり繋がり、希望、アイデンティティ、意味、エンパワメントじゃ。
POINT
リカバリは症状の消失だけを指すのではなく、精神障害があっても希望をもって主体的に人生を歩む過程を意味します。看護ではストレングスへの着目と当事者の主体的選択の支援が基本です。薬物療法は支える一要素であり、役割の獲得や共同意思決定、ピアサポートなど多面的支援が求められます。CHIMEの枠組みで整理して覚えると理解しやすいでしょう。
解答・解説
正解は 3 ・ 4 です
問題文:精神障害者のリカバリ〈回復〉の考え方で正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は3と4です。リカバリは症状の完全消失(治癒)ではなく、精神障害があってもその人らしく希望を持って主体的な人生を歩む過程を指します。当事者の主体的選択を支援し、ストレングス(強み・力・資源)に着目して活用するアプローチが基本となります。
選択肢考察
-
× 1. 患者に役割をもたせない。
役割を担うことで自己効力感や生きがいが高まり、リカバリが促進されます。役割を奪うのではなく、本人の力を発揮できる役割を支援することが大切です。
-
× 2. 薬物療法を主体に展開する。
薬物療法はリカバリを支える要素の一つに過ぎず、心理社会的支援、就労支援、ピアサポート、本人の希望に沿った生活設計など多面的なアプローチが基本です。
-
○ 3. 患者の主体的な選択を支援する。
リカバリの核は当事者の自己決定の尊重です。共同意思決定(SDM)に基づき、選択肢を共に検討し、本人が主体となって選ぶ過程を支援します。
-
○ 4. 患者のストレングス〈強み・力〉に着目する。
ストレングスモデルでは、当事者の能力・関心・希望・人的資源など強みに焦点を当て、それを活かして生活を再構築します。問題志向ではなく強み志向のアプローチです。
-
× 5. リカバリ〈回復〉とは病気が治癒したことである。
リカバリは症状の消失(クリニカル・リカバリ)だけでなく、症状があっても自分らしく生きるパーソナル・リカバリを含む概念で、必ずしも治癒を意味しません。
リカバリの概念はアンソニー(Anthony)らによって提唱され、希望、自己責任、エンパワメント、有意義な役割の獲得、自己成長などが要素とされます。実践モデルとしてストレングスモデル、共同意思決定(SDM)、ピアサポート、IPS(個別就労支援プログラム)、WRAP(元気回復行動プラン)などがあり、CHIME(Connectedness、Hope、Identity、Meaning、Empowerment)の枠組みでも整理されます。
精神障害者支援におけるリカバリの定義と、ストレングスモデルや主体的選択の支援といった看護の基本的な姿勢を問う問題です。
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