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なぜ側頭葉?単純ヘルペス脳炎の好発部位を解剖学から読み解く

看護師国家試験 第115午後30

国試問題にチャレンジ

115午後30

成人の単純ヘルペスウイルスによる脳炎の好発部位はどれか。

  1. 1.小脳
  2. 2.後頭葉
  3. 3.側頭葉
  4. 4.頭頂葉

対話形式の解説

博士博士
今日のテーマは「単純ヘルペスウイルスによる脳炎の好発部位」じゃ。これは一度覚えれば一生忘れない、解剖学のロマンが詰まった問題なのじゃよ。
サクラサクラ
ヘルペスって、口の周りにできる水ぶくれのイメージですけど、脳炎まで起こすんですか?
博士博士
起こすのじゃ。原因のほとんどはHSV-1、つまり口唇ヘルペスと同じウイルスじゃ。実は多くの人が幼少期に感染して、その後ずっと三叉神経節という顔の神経の根元に潜伏しておるのじゃよ。
サクラサクラ
え、ずっと潜んでるんですか?怖い…。普段は何ともないのに、急に脳炎になるのはなぜですか?
博士博士
免疫が落ちたりストレスがかかったりすると、潜伏ウイルスが再活性化する。すると三叉神経や嗅神経の経路を伝って、神経の終点である脳の特定部位に到達してしまうのじゃ。
サクラサクラ
その「特定部位」が今回の答えになるんですね。
博士博士
そう、選択肢は小脳・後頭葉・側頭葉・頭頂葉。さて、どこじゃと思う?
サクラサクラ
うーん、三叉神経って顔の感覚を伝える神経ですよね。顔に近いところ…側頭葉でしょうか?
博士博士
お見事、正解は3の「側頭葉」じゃ!特に側頭葉の内側、海馬や扁桃体といった辺縁系を中心に、出血性で壊死を伴う病変を作るのが特徴じゃよ。
サクラサクラ
辺縁系って、記憶や感情を司る場所ですよね。じゃあ症状もそれに関係するんですか?
博士博士
鋭いのう。発熱や意識障害に加えて、ものすごく特徴的なのが「記憶障害」「人格変化」「幻覚」「奇異な行動」じゃ。精神疾患と間違えられて精神科に紹介されてしまうこともあるくらいじゃよ。
サクラサクラ
それは怖い…。診断が遅れたら命に関わりそうですね。
博士博士
無治療だと致死率は70%以上と言われておる。じゃが、アシクロビルという抗ウイルス薬を早期に点滴で開始すれば予後は劇的に改善する。だから「疑ったら検査結果を待たずに治療開始」が鉄則じゃ。
サクラサクラ
検査は何をするんですか?
博士博士
髄液のPCRでHSV-DNAを検出するのが最も確実じゃ。MRIでは側頭葉内側の高信号、脳波ではPLEDsという周期性の異常波が手がかりになる。覚えておくと国試でも臨床でも役立つぞ。
サクラサクラ
他の選択肢、小脳とか後頭葉に病変を作るウイルスもあるんですか?
博士博士
あるある。例えば小児の水痘の後に急性小脳失調症が出ることがあるし、麻疹ウイルスの遅発性合併症である亜急性硬化性全脳炎は大脳全般を侵す。原因ウイルスごとに「好発部位と症状」がセットで決まっているのが脳炎の面白いところじゃ。
サクラサクラ
ウイルスがどこから入って、どの神経をたどって、どの脳の部位に行き着くか…全部つながってるんですね。丸暗記じゃなくて、ストーリーで覚えられそうです。
博士博士
その姿勢が大事じゃ。看護師として現場に立ったとき、発熱と意識障害と奇妙な言動を併発した患者を見たら「HSV脳炎かも」と頭の片隅に置けるかどうかが、その人の予後を左右するのじゃよ。

POINT

成人の単純ヘルペス脳炎が「側頭葉」を中心とした辺縁系に病変を作りやすいという、解剖学的な特徴と臨床症状の対応を理解しているかを問う問題。HSV-1の潜伏部位(三叉神経節)と進展経路から好発部位が決まる点がポイント。

解答・解説

正解は3です

問題文:成人の単純ヘルペスウイルスによる脳炎の好発部位はどれか。

解説:正解は 3 です。単純ヘルペスウイルス(HSV)脳炎は、成人ではほとんどがHSV-1の再活性化によって生じ、ウイルスが嗅神経や三叉神経の神経節から中枢神経へと逆行性に進展するため、解剖学的に近い側頭葉内側部(海馬・扁桃体・帯状回など辺縁系)および前頭葉眼窩面に出血性・壊死性の病変を作りやすい。このため画像所見(MRI拡散強調像やFLAIR)でも側頭葉内側の高信号が特徴的で、発熱・意識障害・けいれん・人格変化・健忘などの症状が出現する。

選択肢考察

  1. ×1.  小脳

    小脳は単純ヘルペス脳炎の好発部位ではない。小脳に病変を生じる脳炎としては、小児のVZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)感染後の急性小脳失調症などが知られる。

  2. ×2.  後頭葉

    後頭葉は単純ヘルペス脳炎の典型的な病変部位ではない。後頭葉病変では同名半盲などの視覚野症状が出るが、HSV脳炎の主症状とは一致しない。

  3. 3.  側頭葉

    正解。HSV-1は三叉神経節などに潜伏し、再活性化すると嗅神経路や三叉神経路を介して側頭葉内側(海馬・扁桃体)や前頭葉眼窩面に進展しやすい。辺縁系を侵すため、記憶障害・人格変化・幻覚・側頭葉てんかんなど特徴的な症状を呈する。

  4. ×4.  頭頂葉

    頭頂葉はHSV脳炎の好発部位ではない。頭頂葉病変では失認・失行などの高次脳機能障害が生じるが、HSV脳炎ではまず側頭葉・前頭葉症状が前景に立つ。

単純ヘルペス脳炎は無治療では致死率70%以上に達する重篤な疾患であるが、抗ウイルス薬アシクロビルの静脈内投与を早期に開始すれば予後を大きく改善できるため、疑った時点で確定診断を待たずに治療を始めるのが原則である。診断には髄液PCR(HSV-DNA検出)が最も感度・特異度が高く、MRIでは側頭葉内側〜前頭葉眼窩面の浮腫性病変や出血性変化が、脳波では側頭部優位の周期性一側性てんかん型放電(PLEDs)がヒントとなる。看護では、けいれん発作の観察と安全確保、意識レベルや瞳孔・バイタルの厳重なモニタリング、後遺症としての記憶障害や人格変化に対する長期的なリハビリ支援が重要である。

成人の単純ヘルペス脳炎が「側頭葉」を中心とした辺縁系に病変を作りやすいという、解剖学的な特徴と臨床症状の対応を理解しているかを問う問題。HSV-1の潜伏部位(三叉神経節)と進展経路から好発部位が決まる点がポイント。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。