「もの忘れ」と「認知症」を分ける決定的ポイント――加齢性健忘の見抜き方
看護師国家試験 第115回 午後 第57問
国試問題にチャレンジ
加齢による「もの忘れ」はどれか。
- 1.昨晩、夕食を食べたことを覚えていない。
- 2.家族から電話がかかってきたことを忘れてしまった。
- 3.友人の顔を見て名前を思い出すのに時間がかかった。
- 4.買い物に出たが、自分が今どこにいるのか分からない。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
加齢による生理的なもの忘れと、認知症による病的なもの忘れの違いを理解しているかを問う問題。「体験の一部を忘れる(加齢)」か「体験そのものを忘れる(認知症)」かが鑑別の鍵。
解答・解説
正解は3です
問題文:加齢による「もの忘れ」はどれか。
解説:正解は 3 です。加齢による生理的なもの忘れ(良性老化健忘)は、記憶の「想起(思い出す)」過程が遅くなることが特徴で、エピソードの一部(人の名前、固有名詞、約束の細部など)が思い出しにくくなる一方、ヒントや時間をかければ想起できる、または「忘れていたこと」自体は自覚できるという点で病的なもの忘れ(認知症)と区別される。脳の老化に伴って情報の検索速度が低下するために起こる現象であり、日常生活には大きな支障をきたさない。選択肢3「友人の顔を見て名前を思い出すのに時間がかかった」は、出来事(友人に会った)は認識できているが、名前という固有情報の想起に時間を要しているという加齢性変化の典型例である。
選択肢考察
- ×1. 昨晩、夕食を食べたことを覚えていない。
「夕食を食べた」という体験エピソード全体を忘れているため、エピソード記憶の障害が疑われる。加齢性のもの忘れでは「何を食べたか」を忘れることはあっても、食べたという出来事自体は記憶している。体験そのものの欠落は、アルツハイマー型認知症などの病的なもの忘れを示唆する。
- ×2. 家族から電話がかかってきたことを忘れてしまった。
電話を受けたという最近の出来事(近時記憶)そのものが抜け落ちているため、加齢性のもの忘れでは説明しにくい。エピソード記憶の障害は認知症の初期症状として典型的であり、本人にも自覚されにくいことが多い。
- ○3. 友人の顔を見て名前を思い出すのに時間がかかった。
顔を見て「友人だ」と認識でき、名前を思い出そうとする努力もできており、時間をかければ想起できる状態。これは記憶の検索速度の低下による生理的(加齢性)もの忘れの典型像である。本人が「思い出せない」ことを自覚している点もポイント。
- ×4. 買い物に出たが、自分が今どこにいるのか分からない。
場所に関する見当識障害であり、認知症で出現する症状である。加齢のみでは普段慣れた場所で迷うことは通常起こらない。見当識は時間→場所→人物の順に障害されることが多く、場所の見当識障害は中等度認知症で顕著になる。
加齢性もの忘れと認知症によるもの忘れの鑑別ポイントを整理しておきたい。加齢性は「体験の一部を忘れる/ヒントで思い出せる/自覚あり/進行が緩徐/日常生活は自立」が特徴。一方、認知症性は「体験全体を忘れる/ヒントでも思い出せない/自覚に乏しい/進行性/日常生活に支障」が特徴である。たとえば「朝食のメニューを忘れる」は加齢性、「朝食を食べたこと自体を忘れる」は認知症性。さらに、加齢と認知症の中間段階として軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)があり、年間約10〜15%が認知症へ移行するとされる。MCIは認知症の予備群として早期介入の対象となり、運動・社会参加・知的活動の維持が予防に有効。看護師は外来や訪問の場で家族からの情報も含めて経時的に変化を評価し、必要に応じてHDS-RやMMSEなどの認知機能検査につなげる視点が重要である。
加齢による生理的なもの忘れと、認知症による病的なもの忘れの違いを理解しているかを問う問題。「体験の一部を忘れる(加齢)」か「体験そのものを忘れる(認知症)」かが鑑別の鍵。
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