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『寝室に女の子がいる』─レビー小体型認知症の初期症状を見抜く

看護師国家試験 第115午前100(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午前100

状況設定

Aさん(75歳、男性)は妻(70歳)と2人で暮らしている。日中は本を読んで過ごすことが多い。2か月前からAさんは、椅子から立ち上がる時にバランスを崩すことや「寝室に女の子がいる」と言うことがあった。また、就寝後、夜間に大きな声で「おーい」と叫んで手を振る行動が継続してみられるようになった。心配になった妻がAさんと病院を受診し、初期のLewy〈レビー〉小体型認知症と診断された。Aさんは要介護認定の申請をし、要支援1と認定された。

Aさんに出現している症状はどれか。2つ選べ。

  1. 1.幻視
  2. 2.徘徊
  3. 3.観念失行
  4. 4.実行機能障害
  5. 5.レム睡眠行動障害

対話形式の解説

博士博士
今回は75歳男性Aさんの事例じゃ。椅子から立ち上がる時にバランスを崩し、『寝室に女の子がいる』と言い、夜には『おーい』と叫んで手を振る。初期のレビー小体型認知症、いわゆるDLBと診断されておる。
サクラサクラ
レビー小体型認知症って、アルツハイマー型とは何が違うんですか?
博士博士
良い質問じゃ。DLBはαシヌクレインを主成分とするレビー小体が大脳皮質や脳幹のニューロンに蓄積して起こる神経変性疾患で、変性性認知症ではアルツハイマー型に次いで頻度が高い。診断基準には4つの中核的特徴があってな、『認知機能の変動』『反復する具体的な幻視』『REM睡眠行動障害(RBD)』『パーキンソニズム』じゃ。これらのうち2つ以上で『probable DLB』と判定される。
サクラサクラ
Aさんの『寝室に女の子がいる』っていう発言は…幻視ですね?
博士博士
その通り。DLBの幻視は『そこに小さな子どもがいる』『動物が歩いている』といった、人や生き物が具体的かつ鮮明に見えるのが特徴じゃ。本人にとっては実在しているかのように体験される。だから頭ごなしに『そんなものいないでしょ』と否定するのは禁物じゃよ。
サクラサクラ
じゃあ夜中に『おーい』と叫んで手を振るのは何ですか?徘徊…ではないですよね?
博士博士
徘徊ではないのう。これはREM睡眠行動障害、略してRBDじゃ。通常REM睡眠中は身体の骨格筋がほぼ麻痺状態になって動かないようになっておるのじゃが、その抑制メカニズムが壊れると、夢の内容に合わせて寝ながら叫んだり手足を動かしたりしてしまう。DLBでは認知症の発症より何年も前からRBDが先行することもあって、早期診断の手がかりになる。
サクラサクラ
なるほど!じゃあ徘徊が選択肢にあるのはひっかけですね。徘徊はどんな認知症で多いんですか?
博士博士
徘徊は目的が不明確なまま歩き回る行動で、アルツハイマー型認知症の中等度以降に多くみられる。本症例には外出して戻れない・落ち着きなく歩き回るといった記載はないから当てはまらん。
サクラサクラ
選択肢の『観念失行』と『実行機能障害』はどう違うんですか?よく混同してしまいます。
博士博士
整理しよう。観念失行は『道具の使い方』や『一連の動作の手順』が分からなくなる失行で、歯ブラシで歯を磨けない、急須でお茶を入れる手順がぐちゃぐちゃになる、といった具合じゃ。一方、実行機能障害は『計画を立てて段取り良く遂行する力』が落ちる症状で、料理の手順を組み立てられない、買い物リストを作れない、状況の変化に応じて行動を切り替えられない、といった形で現れる。
サクラサクラ
どちらも本症例には描写がないですもんね。じゃあ正解は『幻視』と『レム睡眠行動障害』の2つで決まりですね。
博士博士
うむ、その通りじゃ。ちなみにAさんが立ち上がる時にバランスを崩すのはパーキンソニズム(姿勢反射障害)を示唆していて、DLBらしさがさらに補強される所見じゃな。
サクラサクラ
看護師として気をつけることはありますか?
博士博士
いくつかある。第一に、幻視を頭ごなしに否定せず、不安を受け止めながら部屋の明るさや影をつくる物の配置を調整して、見間違いを誘発しにくい環境を整える。第二に、パーキンソニズムによる転倒予防として手すり設置や段差解消、足元の見える履物の工夫。第三に、RBDによる転落やベッドパートナーへの外傷を防ぐため、ベッド周囲の安全確保や寝室レイアウトの工夫。第四に、DLBは抗精神病薬への過敏性が知られていて、ハロペリドールなどで悪性症候群様の反応が出ることがあるから、薬剤情報を多職種で共有することが重要じゃ。
サクラサクラ
要支援1ということは、介護予防サービスが使えるんですよね。
博士博士
その通り。介護予防訪問看護や介護予防通所リハビリテーションなどを活用しながら、本人と妻の生活全体を支える視点が大切じゃ。早期から関わることで、転倒や事故のリスクを減らし、進行に応じた支援を準備できる。

POINT

状況設定の患者描写(幻視を疑わせる発言と、夜間の異常行動)から、DLBの中核症状である『反復する幻視』と『REM睡眠行動障害』を見抜けるかを問う複数選択問題。

解答・解説

正解は1です

問題文:Aさんに出現している症状はどれか。2つ選べ。

解説:正解は 1 と 5 です。Lewy(レビー)小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies:DLB)は、大脳皮質や脳幹のニューロンにαシヌクレインを主成分とするレビー小体が蓄積することで生じる神経変性疾患で、アルツハイマー型認知症に次いで頻度の高い変性性認知症です。診断基準では『認知機能の変動』『反復する具体的な幻視』『REM睡眠行動障害(RBD)』『パーキンソニズム』が中核的特徴とされ、これらのうち2つ以上を満たすと『probable DLB』と判定されます。Aさんの『寝室に女の子がいる』という発言は、実際にはいない人物が鮮明に見える典型的な幻視(選択肢1)に該当します。さらに、就寝後に大きな声で『おーい』と叫び手を振るという行動は、REM睡眠中に夢の内容に呼応して身体が動いてしまうREM睡眠行動障害(選択肢5)の典型像であり、DLBの初期から先行して出現することが多い症状です。また、椅子から立ち上がる時にバランスを崩す描写はパーキンソニズム(姿勢反射障害)を示唆しており、本症例がDLBである臨床像と矛盾しません。

選択肢考察

  1. 1.  幻視

    『寝室に女の子がいる』という発言は、実在しない人物が具体的・鮮明に見える幻視であり、DLBの中核的特徴の一つ。子どもや小動物が見えると訴えるケースが典型で、本人にとっては実在しているかのようにありありと体験される。

  2. ×2.  徘徊

    徘徊は目的が不明確なまま歩き回る行動で、アルツハイマー型認知症の中等度以降などで多くみられる。本症例には外出して戻れなくなる・落ち着きなく歩き回るといった記載はなく、当てはまらない。

  3. ×3.  観念失行

    観念失行は道具の使い方や一連の動作の手順が分からなくなる失行で、例えば歯ブラシを使えない・湯のみで茶を入れる手順が崩れるなどが典型。本症例にはそのような道具操作の障害を示す描写はない。

  4. ×4.  実行機能障害

    実行機能障害は計画立案・段取り・遂行・状況に応じた修正が困難になる症状で、料理や買い物などの遂行困難として現れる。本症例の記載からはそうした行動上の障害は読み取れない。

  5. 5.  レム睡眠行動障害

    REM睡眠中の筋緊張抑制が破綻し、夢の内容に呼応して大声を出したり手足を動かしたりする睡眠時随伴症。『夜間に大きな声で叫び手を振る行動』はその典型像で、DLBでは認知症発症の数年前から先行して出現することもある。

DLBの中核的特徴は『認知機能の変動』『反復する具体的な幻視』『REM睡眠行動障害』『パーキンソニズム』の4つ。加えて自律神経症状(起立性低血圧・便秘)、抗精神病薬への過敏性、嗅覚低下、抑うつなどの支持的特徴も多い。看護では、(1)幻視に対して頭ごなしに否定せず安心できる環境調整を行う、(2)パーキンソニズムによる転倒予防(手すり・段差解消・履物の工夫)、(3)RBDによる転落・ベッドパートナーの外傷予防、(4)抗精神病薬の過敏性に注意し薬剤情報を多職種で共有する、といった視点が重要。要支援1の段階から介護予防サービスを活用し、本人と妻の生活全体を支える視点が求められる。

状況設定の患者描写(幻視を疑わせる発言と、夜間の異常行動)から、DLBの中核症状である『反復する幻視』と『REM睡眠行動障害』を見抜けるかを問う複数選択問題。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。