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認知症の中核症状と類型

老年看護学 / 認知症ケア

解説

今回は認知症の中核症状と類型について解説します。認知症とは、いったん正常に発達した認知機能が、後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態のことをいいます。加齢に伴う物忘れと違い、進行性で生活機能が損なわれる点が特徴です。

認知症の症状の全体像

認知症の症状は、大きく中核症状と**周辺症状(BPSD)**の2つに分けて理解します。中核症状は、脳の神経細胞が障害されたことによって必ず現れる認知機能そのものの障害です。一方、周辺症状は中核症状を背景に、本人の性格・身体状態・環境・周囲の関わり方などが影響して二次的に出現する行動・心理症状で、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia の頭文字をとってBPSDと呼ばれます。 中核症状は脳の器質的変化によるため根治が難しく進行性ですが、周辺症状は環境調整や心理的支援、適切な対応によって軽減することが可能です。両者を区別することは、ケアの方向性を考えるうえで非常に重要です。

中核症状の内容

中核症状には、記憶障害見当識障害、理解力・判断力の障害、実行機能障害、失語・失行・失認が含まれます。 記憶障害では、特に新しい出来事を覚えられない近時記憶(記銘力)の低下が初期から目立ち、同じことを何度も尋ねたり、約束を忘れたりします。見当識障害は、時間・場所・人物の認識が障害されるもので、通常は時間→場所→人物の順に障害が進みます。理解力・判断力の障害では、状況に応じた適切な判断ができなくなり、買い物の計算や金銭管理が難しくなります。 実行機能障害(遂行機能障害)とは、目標を立てて計画し、順序立てて実行し、状況に応じて調整する能力の障害です。たとえば調理では、材料の準備・調理の順序・火加減の調整など複数の手順を要するため、実行機能が障害されると手順が分からなくなり料理が完成しなくなります。 失語は言葉の理解や表出ができなくなる障害、失行は運動機能に問題がないのに目的に沿った動作ができない障害、失認は対象を正しく認識できない障害を指します。

周辺症状(BPSD)の内容

周辺症状には、不安・抑うつ・幻覚・妄想(物盗られ妄想など)・徘徊・暴言・暴力・睡眠障害・せん妄・失禁などが含まれます。希死念慮や幻聴もこれに含まれます。BPSDは出現の有無や程度に個人差が大きく、環境調整や関わり方の工夫で軽減が期待できます。

認知症の主な類型

認知症の原因疾患は多数ありますが、代表的なものとしてアルツハイマー型認知症血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭型認知症の4つを四大認知症と呼びます。それぞれ病態・初発症状・進行様式が異なるため、特徴をセットで覚えることが重要です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の原因として最も多く、全体の約6〜7割を占めます。病態の中心は、脳内へのアミロイドβタンパクの異常蓄積による老人斑(アミロイド斑)と、タウタンパクのリン酸化による神経原線維変化で、これらが神経細胞死と大脳萎縮を引き起こします。萎縮は側頭葉内側・海馬から始まり、画像所見でも海馬萎縮が特徴的です。 初期症状は近時記憶の障害(記銘力障害)で、新しいことを覚えられないところから始まり、見当識障害、判断力低下、失語・失行・失認と進み、最終的には寝たきりに至ります。緩徐進行性であることも特徴です。 治療薬としては、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)と、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンが用いられ、近年は抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ)も登場しています。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳血管障害の繰り返しによって生じる認知症です。障害された部位の機能のみが低下するため、ある領域の能力は保たれているのに別の領域は強く障害されるというまだら認知症の状態を示し、進行は脳血管障害が起こるたびに悪化する階段状の経過をたどります。高血圧・糖尿病・脂質異常症など脳血管障害の危険因子の管理が予防の鍵となります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症(DLB)は、αシヌクレインを主成分とするレビー小体が大脳皮質(特に後頭葉)や脳幹に蓄積する神経変性疾患です。中核症状は4つあり、第一に、認知機能の動揺(日内・日差の変動が大きい)、第二に、具体的で鮮明な幻視(小動物・子ども・虫などを実際に見たかのように訴える、約80%に出現)、第三に、パーキンソニズム(動作緩慢・筋強剛・小刻み歩行)、第四に、レム睡眠行動障害(夢に一致して大声を出したり手足を動かしたりする)です。 支持症状として、抗精神病薬への過敏反応、起立性低血圧や便秘などの自律神経症状、嗅覚低下があります。薬物療法ではドネペジルが保険適用されていますが、抗精神病薬は過敏反応の危険があるため慎重投与が必要です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症(ピック病を含む)は前頭葉と側頭葉前部の萎縮による認知症で、65歳未満の若年発症も多いのが特徴です。記憶障害よりも先に人格変化脱抑制常同行動、食行動異常(甘い物嗜好・過食)が目立ちます。 脱抑制とは、社会的規範を守る抑制機能が低下し、衝動のままに行動してしまう状態で、他者の食べ物を勝手に食べてしまう、万引きをする、場をわきまえない発言をするといった行為が現れます。記憶はむしろ比較的保たれる点が他の認知症との大きな違いです。ケアでは叱責を避け、環境調整や本人の行動パターンを活かした関わりが有効です。

軽度認知障害(MCI)

**軽度認知障害(MCI)**は、認知症と正常加齢の中間にあたる状態です。記憶障害を中心とした認知機能の低下が客観的に認められますが、日常生活動作(ADL)は自立しており、認知症の診断基準は満たしません。DSM-5の軽度認知障害では、複雑性注意・実行機能・学習と記憶・言語・知覚運動・社会的認知のうち1領域以上の軽度低下が含まれ、実行機能の低下も該当します。 MCIは年間約10〜15%が認知症に移行するとされ、運動・食事・社会参加・認知トレーニングなど早期介入の重要なターゲットです。国試では「ADL自立」「認知症の前段階」「早期発見が重要」がキーワードとなります。

まとめ

認知症の症状は、必ず現れる中核症状(記憶障害・見当識障害・理解力と判断力の障害・実行機能障害・失語・失行・失認)と、二次的に出現する周辺症状(BPSD:幻覚・妄想・徘徊・抑うつ・暴言など)に大別されます。中核症状と周辺症状の区別はケアの方向性に直結する重要事項です。原因疾患の四大類型では、アルツハイマー型はアミロイドβ蓄積と海馬萎縮で記憶障害から始まる緩徐進行、血管性はまだら認知症で階段状進行、レビー小体型はαシヌクレイン蓄積で幻視・パーキンソニズム・認知機能の動揺・レム睡眠行動障害、前頭側頭型は人格変化と脱抑制が特徴と整理しましょう。さらにADL自立を保ちつつ認知機能が軽度低下したMCIは、認知症移行を防ぐ早期介入の対象として国試頻出です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    認知症の症状のうち、脳の神経細胞の障害によって必ず現れる認知機能そのものの障害をという。

  2. 2.

    中核症状を背景に、性格や環境などの影響で二次的に現れる行動・心理症状をBPSD、すなわちという。

  3. 3.

    認知症の中核症状のうち、目標を設定し計画を立てて順序立てて実行する能力の障害をという。

  4. 4.

    認知症の原因疾患として最も多く、アミロイドβタンパクの蓄積と海馬萎縮を特徴とするのはである。

  5. 5.

    脳血管障害の繰り返しにより、障害部位ごとに機能低下の差が生じる「まだら認知症」を呈し、階段状に進行する認知症をという。

  6. 6.

    αシヌクレインを主成分とするレビー小体が大脳皮質や脳幹に蓄積し、具体的な幻視・認知機能の動揺・パーキンソニズム・レム睡眠行動障害を中核症状とする認知症をという。

  7. 7.

    前頭葉・側頭葉前部の萎縮により、記憶障害よりも先に人格変化・脱抑制・常同行動が出現する認知症をという。

  8. 8.

    前頭側頭型認知症で、社会的規範を守る抑制機能が低下し、衝動のままに行動してしまう症状をという。

  9. 9.

    認知症と正常加齢の中間にあたり、認知機能の低下はあるが日常生活動作(ADL)は自立している状態をという。

認知症の中核症状と類型」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。