レビー小体型認知症の浴室、まず守るべきは「支える壁」ではなく「掴める手すり」
看護師国家試験 第115回 午前 第101問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(75歳、男性)は妻(70歳)と2人で暮らしている。日中は本を読んで過ごすことが多い。2か月前からAさんは、椅子から立ち上がる時にバランスを崩すことや「寝室に女の子がいる」と言うことがあった。また、就寝後、夜間に大きな声で「おーい」と叫んで手を振る行動が継続してみられるようになった。心配になった妻がAさんと病院を受診し、初期のLewy〈レビー〉小体型認知症と診断された。Aさんは要介護認定の申請をし、要支援1と認定された。
診断から1か月後の外来受診時に、Aさんの妻から看護師に「夫は夜8時くらいに入浴しますが、最近、入浴時にふらつくことがあるそうです。ふらついた時は壁や浴槽の端に手をついてバランスをとっていると聞きました。夫が安全に入浴するにはどうすればよいか教えてほしいです」と相談があった。 看護師のAさんの妻への助言で適切なのはどれか。
- 1.「お風呂場に手すりを付けましょう」
- 2.「奥さんが入浴を手伝ってあげてください」
- 3.「バスマットは床と異なる色にしましょう」
- 4.「入浴前に1時間以上の睡眠をとりましょう」
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士POINT
レビー小体型認知症のパーキンソニズムによるふらつきに対しては、本人の自立を尊重しつつ転倒を防ぐ環境整備(手すり設置等)が最優先。要支援1でも介護保険の住宅改修費が利用できる点を押さえる。
解答・解説
正解は1です
問題文:診断から1か月後の外来受診時に、Aさんの妻から看護師に「夫は夜8時くらいに入浴しますが、最近、入浴時にふらつくことがあるそうです。ふらついた時は壁や浴槽の端に手をついてバランスをとっていると聞きました。夫が安全に入浴するにはどうすればよいか教えてほしいです」と相談があった。 看護師のAさんの妻への助言で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 「お風呂場に手すりを付けましょう」です。 レビー小体型認知症(DLB)はパーキンソニズム(筋強剛・動作緩慢・姿勢反射障害)を中核症状の一つとし、立ち上がりや方向転換、立位保持の際にバランスを崩しやすくなります。さらに自律神経障害による起立性低血圧、注意・覚醒レベルの変動、視空間認知障害も合併し、転倒リスクが他の認知症より高いことが知られています。 浴室は、(1) 床や浴槽が濡れて滑りやすい、(2) 段差や浴槽縁のまたぎ動作で重心が大きく動く、(3) 温熱による血圧低下や立ちくらみが起こりやすい、という三重の危険因子が重なる場所です。Aさんはすでに「ふらついた時に壁や浴槽の端に手をついて支えている」状況であり、まさに支持物(手すり)を本能的に求めている状態です。 看護師の助言として最優先されるのは、本人の自立性を保ったまま安全を確保できる住環境整備、すなわち「手すりの設置」です。要支援1であれば介護保険の住宅改修費(上限20万円・原則1割負担)の対象となり、手すり取り付けは代表的な給付項目です。出入口・浴槽またぎ・洗い場の3点を意識して設置することで、転倒予防効果が大きく高まります。
選択肢考察
- ○1. 「お風呂場に手すりを付けましょう」
正解。ふらつきが既に生じている段階での第一選択は環境整備による転倒予防であり、その代表が手すりの設置である。立ち上がり・浴槽またぎ・洗い場移動の各動作で支持物が得られ、本人の自立入浴を保ったまま安全性を高められる。要支援1なら介護保険の住宅改修費(上限20万円)の対象となり、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談して具体的な位置を決められる。
- ×2. 「奥さんが入浴を手伝ってあげてください」
不正解。Aさんは現時点で自立入浴ができており、要支援1という比較的軽度の段階である。家族介助をいきなり導入すると、本人の自尊心や残存機能を損ない、ADL低下や妻の介護負担増加(70歳の妻自身の腰痛・転倒リスク)を招く。介助は必要性をアセスメントしたうえで段階的に検討すべきで、まずは環境整備が優先される。
- ×3. 「バスマットは床と異なる色にしましょう」
不正解。色のコントラストをつける工夫は視認性向上・視空間認知障害への対応として有用ではあるが、今回の主訴は「ふらつき」であり、必要なのは支持物の確保である。また、DLBでは床の模様やコントラストが幻視や錯視の誘因となる場合もあり、安易に派手な色を選ぶと逆効果になることもある。
- ×4. 「入浴前に1時間以上の睡眠をとりましょう」
不正解。夜8時の入浴前に1時間以上の睡眠をとることは生活リズムを崩し、夜間の主睡眠を妨げる可能性がある。さらにDLBではレム睡眠行動障害(夜間に大声を出し手を振る等)や覚醒レベルの変動があり、睡眠後の覚醒不十分なまま入浴するとかえって転倒リスクが上がる。ふらつきの直接的対策にもならない。
レビー小体型認知症(DLB)の中核症状は (1) 認知機能の変動、(2) 具体的な幻視、(3) パーキンソニズム、(4) レム睡眠行動障害の4つ。Aさんに見られる「寝室に女の子がいる」は具体的幻視、「夜間に大声を出して手を振る」はレム睡眠行動障害、「立ち上がり時のバランス崩し」はパーキンソニズムに該当し、診断基準に合致する。 転倒予防の介護保険住宅改修対象は、(1) 手すりの取り付け、(2) 段差解消、(3) 床材変更(滑り防止)、(4) 引き戸への変更、(5) 洋式便器への取り替え、(6) これらに付帯する工事の6項目。要支援・要介護者ともに利用可能で、上限20万円・原則1割負担(所得により2〜3割)。 浴室での転倒予防は「手すり+滑り止めマット+シャワーチェア+脱衣所と浴室の温度差解消(ヒートショック予防)+見守り体制」を組み合わせるのが基本。DLBでは自律神経障害による起立性低血圧も加わるため、湯温は40℃前後、入浴時間は10分以内、入浴前後の水分補給を勧める。
レビー小体型認知症のパーキンソニズムによるふらつきに対しては、本人の自立を尊重しつつ転倒を防ぐ環境整備(手すり設置等)が最優先。要支援1でも介護保険の住宅改修費が利用できる点を押さえる。
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