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急性腎不全と頻呼吸 ―酸塩基平衡から読み解く呼吸の変化―

看護師国家試験 第115午後80

国試問題にチャレンジ

115午後80

急性腎不全の症状について正しいのはどれか。

  1. 1.関節痛
  2. 2.頻呼吸
  3. 3.食欲増進
  4. 4.視力低下
  5. 5.足のムズムズ

対話形式の解説

博士博士
今日は急性腎不全の症状についての問題じゃ。選択肢のうち正解はどれかわかるかの?
サクラサクラ
ええっと…頻呼吸ですか?でもなぜ腎臓が悪くなると呼吸が速くなるんでしょう?
博士博士
いいところに気づいたな。腎臓は単に尿を作る臓器じゃなく、体の酸塩基平衡を維持する重要な役割を担っておる。腎機能が急に落ちると、体内の酸(H+)が排泄できなくなり、重炭酸イオンHCO3-も十分産生できなくなる。その結果、血液が酸性に傾く「代謝性アシドーシス」が進むのじゃ。
サクラサクラ
なるほど!それで体は酸性を打ち消そうとするんですね。
博士博士
その通り。体は肺からCO2を多めに吐き出すことで、血液中の炭酸を減らしてpHを保とうとする。これが呼吸性代償で、深くて速い呼吸=クスマウル呼吸として観察される。臨床ではまさに頻呼吸として現れるのじゃ。
サクラサクラ
糖尿病性ケトアシドーシスでも同じ呼吸が見られると習いました。
博士博士
ええ記憶じゃな。代謝性アシドーシスを呈する病態では共通してみられる代償反応じゃ。さらにAKIでは乏尿による体液貯留で肺うっ血が起こり、これも頻呼吸の原因になる。
サクラサクラ
では他の選択肢はなぜ違うんですか?食欲増進はちょっと違和感がありました。
博士博士
鋭いな。AKIでは尿素やクレアチニンなど尿毒症性物質が蓄積し、消化器症状として悪心・嘔吐・食欲不振が出る。食欲増進はむしろ逆方向の所見じゃ。
サクラサクラ
関節痛や視力低下は?
博士博士
関節痛は痛風や関節リウマチ、感染性関節炎などで、視力低下は糖尿病網膜症や高血圧性網膜症などで生じる。いずれもAKIの急性期に直接結びつく症状ではないのじゃ。
サクラサクラ
足のムズムズは透析患者さんで聞いたことがあります。
博士博士
それはレストレスレッグス症候群じゃな。慢性腎不全や透析患者で時にみられるが、急性腎不全の代表症状とは言えん。
サクラサクラ
AKIの観察ポイントを整理したいです。
博士博士
看護では、尿量(0.5mL/kg/時未満は注意)、体重、in/outバランス、血圧、浮腫、呼吸数と呼吸様式、心電図モニターでの高K血症所見(テント状T波)を継続的にみることが大切じゃ。
サクラサクラ
原因によって対応も変わりますよね?
博士博士
腎前性なら循環血液量の補正、腎性なら原因薬剤中止や腎保護、腎後性なら尿路閉塞解除と、原因に応じた治療が基本になる。看護師は早期発見・早期介入のキーパーソンじゃ。

POINT

急性腎不全では代謝性アシドーシスや体液過剰により頻呼吸が生じることを理解しているかが問われています。電解質異常や尿毒症症状と関連づけて整理しましょう。

解答・解説

正解は2です

問題文:急性腎不全の症状について正しいのはどれか。

解説:正解は2の「頻呼吸」です。急性腎不全(急性腎障害:AKI)では、腎機能の急激な低下によって水素イオン(H+)や不揮発性酸の排泄が滞り、また重炭酸イオン(HCO3-)の再吸収・産生も障害されるため、代謝性アシドーシスが進行します。血液pHの低下を呼吸性に代償しようとして、肺からCO2を多く排出するために呼吸数や換気量が増加し、深く速い呼吸(クスマウル呼吸を含む頻呼吸)として観察されます。さらに、尿排泄低下による体液貯留が肺うっ血や心不全を引き起こすことでも頻呼吸は出現し、高K血症が筋力低下や換気障害を介して呼吸状態に影響することもあります。これらが複合的に作用し、頻呼吸はAKIの病態を反映する重要な所見となります。

選択肢考察

  1. ×1.  関節痛

    関節痛は痛風、関節リウマチ、感染性関節炎などでみられる症状で、急性腎不全の代表的症状ではありません。慢性腎不全に伴う高尿酸血症から痛風発作が起こることはありますが、急性期で頻呼吸ほど特徴的ではありません。

  2. 2.  頻呼吸

    急性腎不全では代謝性アシドーシスが進行し、その代償としてCO2を排出するために呼吸数が増加します。また体液貯留による肺うっ血、心不全、高K血症なども頻呼吸の原因となるため、最も適切な症状です。

  3. ×3.  食欲増進

    急性腎不全では尿毒症性物質の蓄積により、悪心・嘔吐・食欲不振が前面に出ます。食欲増進は逆の所見であり、誤りです。

  4. ×4.  視力低下

    視力低下は糖尿病網膜症や高血圧性網膜症など慢性疾患の経過で生じる症状で、急性腎不全の急性期に直接出現する症状ではありません。

  5. ×5.  足のムズムズ

    下肢のむずむず感はレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)で、慢性腎不全や透析患者でみられることがあります。急性腎不全の代表症状とは言えません。

急性腎不全(AKI)の症状は、(1)乏尿・無尿による体液過剰(浮腫、肺水腫、高血圧)、(2)電解質異常(高K血症による不整脈、高P血症、低Ca血症)、(3)代謝性アシドーシス(頻呼吸、クスマウル呼吸)、(4)尿毒症症状(悪心、嘔吐、食欲不振、意識障害、心膜炎)に整理して覚えると効率的です。原因別には腎前性(脱水・出血・心不全)、腎性(急性尿細管壊死、薬剤性、糸球体腎炎)、腎後性(尿路閉塞)に分類されます。看護では、尿量モニタリング、体重測定、in/outバランス、心電図モニター(高K血症に伴うテント状T波)、呼吸数・呼吸様式の観察が重要です。

急性腎不全では代謝性アシドーシスや体液過剰により頻呼吸が生じることを理解しているかが問われています。電解質異常や尿毒症症状と関連づけて整理しましょう。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。