CAPD導入直後の食事指導〜血液透析との違いを押さえよう
看護師国家試験 第115回 午前 第99問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(60歳、女性、会社員)は15年前に糖尿病と診断され血糖降下薬を服用していた。その後、微量のアルブミン尿が出現し、腎機能は徐々に悪化したため、10年前からインスリン療法が開始された。Aさんは外来受診時に労作時の息切れを訴えており、肺野の水泡音と下肢の浮腫が認められ、精査加療目的で入院した。入院時は、身長155 cm、体重65 kgで1か月前から5 kg増加している。体温36.3℃、呼吸数28/分、脈拍82/分、血圧160/82 mmHgであった。血液検査データは、Hb 8.5 g/dL、HbA1c 8.5%、アルブミン3.1 g/dL、クレアチニン3.5 mg/dL、K 4.0 mEq/Lで、推算糸球体濾過量(eGFR)は15 mL/分/1.73㎡であった。
その後、Aさんには連続携行式腹膜透析法〈CAPD〉が開始された。同時に腹膜透析の方法と必要な自己管理についての指導が開始となった。現在の血液検査データは、Hb9.0g/dL、アルブミン2.9g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、K3.8mEq/Lであった。また腹膜透析開始後の除水量は平均450mL/日、尿量は平均900mL/日であった。 現在のAさんに対する食事指導の内容で適切なのはどれか。
- 1.蛋白質は0.2 g/kg/日とする。
- 2.カリウムを含む食品の制限はない。
- 3.水分摂取量は除水量と同量とする。
- 4.総エネルギーは50 kcal/kg/日とする。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士POINT
CAPDでは血液透析と異なり、持続的な透析で電解質変動が緩やかであり、血清K値が正常範囲なら一律のK制限は不要。また透析液への蛋白喪失と糖吸収を踏まえ、蛋白質は十分量、エネルギーは過剰にならないよう調整するのがポイント。
解答・解説
正解は2です
問題文:その後、Aさんには連続携行式腹膜透析法〈CAPD〉が開始された。同時に腹膜透析の方法と必要な自己管理についての指導が開始となった。現在の血液検査データは、Hb9.0g/dL、アルブミン2.9g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、K3.8mEq/Lであった。また腹膜透析開始後の除水量は平均450mL/日、尿量は平均900mL/日であった。 現在のAさんに対する食事指導の内容で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんは糖尿病性腎症から末期腎不全に至り、連続携行式腹膜透析(CAPD)が導入されたばかりの段階にあります。血清カリウム値は3.8 mEq/L(基準値3.5〜5.0 mEq/L)と正常範囲内であり、現時点でカリウムを過度に制限する根拠はありません。さらに腹膜透析は、24時間連続的に透析液を腹腔内に貯留して老廃物や電解質を除去するため、間欠的に行う血液透析(HD)と比較してカリウムの除去がよりマイルドかつ持続的に行われます。そのため、HDのように厳格なカリウム制限を必要とせず、むしろ低カリウム血症をきたすこともあるため、画一的な制限はせず血清カリウム値や尿量・残腎機能を見ながら個別に調整するのが原則です。Aさんの場合、尿量も平均900 mL/日と残腎機能が比較的保たれており、カリウム制限の優先度は低いと判断できます。
選択肢考察
- ×1. 蛋白質は0.2 g/kg/日とする。
蛋白質0.2 g/kg/日は極端に少なく、明らかな低栄養を招く危険な指示。CAPDでは透析液とともに1日5〜10 g程度の蛋白質が腹膜を介して喪失するため、保存期腎不全よりも蛋白制限はゆるく、一般に0.9〜1.2 g/kg/日程度の摂取が推奨される。AさんはAlb 2.9 g/dLと低値で低栄養傾向にあり、なおさら蛋白質を制限してはならない。
- ○2. カリウムを含む食品の制限はない。
血清K 3.8 mEq/Lは正常範囲。CAPDは持続的に透析が行われるためカリウムの蓄積が起こりにくく、血液透析のような厳格なカリウム制限は原則として不要。残尿量も900 mL/日と確保されており、現時点でカリウム制限を行う必要はない。ただし高K血症が出現した場合は個別に調整する。
- ×3. 水分摂取量は除水量と同量とする。
水分摂取量は「尿量+除水量+不感蒸泄相当の補正」で考えるのが基本。除水量450 mL/日と同量の450 mLだけに制限すると、尿量900 mL/日や不感蒸泄(成人で約700〜900 mL/日)を考慮した出納が大幅にマイナスとなり、脱水・血圧低下・残腎機能低下を招く。Aさんでは尿量+除水量=約1,350 mL/日が水分排泄量の目安となる。
- ×4. 総エネルギーは50 kcal/kg/日とする。
腹膜透析患者の推奨総エネルギーは概ね30〜35 kcal/kg/日(腹膜透析液からのブドウ糖吸収分を含む)。50 kcal/kg/日は過剰で、体重増加・肥満・脂質異常・血糖コントロール悪化を助長する。糖尿病を併存するAさんでは特に過剰摂取に注意が必要。
CAPDの食事管理の要点は、(1) 十分な蛋白質摂取(0.9〜1.2 g/kg/日、透析液への蛋白喪失を補う)、(2) エネルギー30〜35 kcal/kg/日(透析液のブドウ糖吸収分を差し引く)、(3) 水分は尿量+除水量+不感蒸泄を考慮した出納管理、(4) 塩分は6 g/日未満、(5) カリウムは血清K値に応じて個別調整(HDより緩い)、(6) リンは制限が必要なことが多い、の6点である。Aさんは糖尿病性腎症が原疾患であるため、血糖コントロール(HbA1c 8.5%は不良)も重要で、透析液から1日約100〜200 kcal相当のブドウ糖が吸収される点を踏まえ、食事の糖質量とインスリン調整も計画する必要がある。また低アルブミン血症(2.9 g/dL)は腹膜炎や心血管イベントのリスク因子であり、栄養状態の改善が予後を左右する。
CAPDでは血液透析と異なり、持続的な透析で電解質変動が緩やかであり、血清K値が正常範囲なら一律のK制限は不要。また透析液への蛋白喪失と糖吸収を踏まえ、蛋白質は十分量、エネルギーは過剰にならないよう調整するのがポイント。
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