eGFR15・体重+5kg・水泡音──Aさんに最初に見るべき危険サインは何か
看護師国家試験 第115回 午前 第97問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(60歳、女性、会社員)は15年前に糖尿病と診断され血糖降下薬を服用していた。その後、微量のアルブミン尿が出現し、腎機能は徐々に悪化したため、10年前からインスリン療法が開始された。Aさんは外来受診時に労作時の息切れを訴えており、肺野の水泡音と下肢の浮腫が認められ、精査加療目的で入院した。入院時は、身長155 cm、体重65 kgで1か月前から5 kg増加している。体温36.3℃、呼吸数28/分、脈拍82/分、血圧160/82 mmHgであった。血液検査データは、Hb 8.5 g/dL、HbA1c 8.5%、アルブミン3.1 g/dL、クレアチニン3.5 mg/dL、K 4.0 mEq/Lで、推算糸球体濾過量(eGFR)は15 mL/分/1.73㎡であった。
Aさんの入院時のアセスメントで適切なのはどれか。
- 1.栄養状態は良好である。
- 2.高カリウム血症である。
- 3.肺水腫の危険性がある。
- 4.血糖コントロールは良好である。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士POINT
高度腎機能低下(eGFR 15)と急激な体重増加・浮腫・水泡音・頻呼吸という体液過剰所見から、肺水腫リスクを最優先で評価できるかを問う問題。各検査値の基準値との照合で他の選択肢を除外できる。
解答・解説
正解は3です
問題文:Aさんの入院時のアセスメントで適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。Aさんは15年来の糖尿病に伴う糖尿病性腎症が進行し、eGFR 15 mL/分/1.73㎡と末期腎不全(CKDステージG5)の段階に達している。1か月で体重が5 kg増加し、下肢浮腫、肺野の水泡音(coarse crackles)、呼吸数28/分の頻呼吸、血圧160/82 mmHgが揃っており、明らかな体液過剰(溢水)の状態にある。腎排泄機能の低下によりナトリウムと水が体内に貯留すると、循環血液量が増えて左心系に負担がかかり、肺毛細血管圧が上昇して間質・肺胞内に液体が漏出する。これが肺水腫であり、Aさんはすでにその前駆段階にあると判断できる。したがって入院時アセスメントとしては『肺水腫の危険性がある』が最も適切である。
選択肢考察
- ×1. 栄養状態は良好である。
血清アルブミンは3.1 g/dLで基準値(おおむね3.8〜5.0 g/dL)を下回っており、低アルブミン血症である。Hbも8.5 g/dLと貧血があり、腎性貧血や慢性疾患による低栄養が示唆される。さらに体重増加は体液貯留によるもので、栄養状態の改善を反映しているわけではない。よって『栄養状態は良好』とは判断できない。
- ×2. 高カリウム血症である。
血清カリウムは4.0 mEq/Lで基準範囲(3.5〜5.0 mEq/L)内であり、高カリウム血症ではない。腎不全では将来的に高K血症のリスクは高いが、現時点の検査値からは該当しない。
- ○3. 肺水腫の危険性がある。
1か月で5 kgの体重増加、下肢浮腫、肺野の水泡音、呼吸数28/分、収縮期血圧160 mmHgはいずれも体液過剰のサインである。eGFR 15 mL/分/1.73㎡という高度腎機能低下下では尿による水分排泄ができず、心負荷が増して肺水腫に移行する危険性が高い。労作時の息切れもうっ血性心不全・肺うっ血を疑わせる所見であり、最も注意すべきアセスメントである。
- ×4. 血糖コントロールは良好である。
HbA1cは8.5%で、糖尿病の合併症予防の目標値である7.0%未満を大きく上回っている。Aさんはインスリン療法中であるにもかかわらず血糖コントロール不良であり、これが糖尿病性腎症進行の一因とも考えられる。
糖尿病性腎症はわが国の透析導入原因の第1位である。腎機能が低下するとレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化やエリスロポエチン産生低下が生じ、体液貯留・高血圧・腎性貧血が連鎖的に進む。eGFR 15 mL/分/1.73㎡未満はCKDステージG5(末期腎不全)に相当し、透析や腎移植を含む腎代替療法の検討時期となる。アセスメントの優先順位を判断するときは、まず生命に直結する『気道・呼吸・循環(ABC)』の観点から見ることが重要で、Aさんのように呼吸数増加と肺野ラ音がある場合は肺水腫を最優先に評価する。なお体液過剰のサインとしては、頸静脈怒張、Ⅲ音、起座呼吸、SpO2低下、尿量減少もあわせて確認したい。
高度腎機能低下(eGFR 15)と急激な体重増加・浮腫・水泡音・頻呼吸という体液過剰所見から、肺水腫リスクを最優先で評価できるかを問う問題。各検査値の基準値との照合で他の選択肢を除外できる。
「腎・泌尿器」の関連問題
膀胱癌患者の急性尿閉はなぜ危険?緊急対応を要する排尿トラブルを見抜く
膀胱癌患者にみられる下部尿路症状のうち、放置すると腎機能障害や膀胱破裂など重篤な合併症を引き起こす「緊急対応を要する症状」を判別できるかを問う問題。急性尿閉の臨床的意義を理解しているかがポイント。
115回
急性腎不全と頻呼吸 ―酸塩基平衡から読み解く呼吸の変化―
急性腎不全では代謝性アシドーシスや体液過剰により頻呼吸が生じることを理解しているかが問われています。電解質異常や尿毒症症状と関連づけて整理しましょう。
115回
週3回通院は無理…在宅でできる「腹膜透析」のしくみと国試ポイント
腹膜透析の基本構造(腹腔カテーテル留置+腹膜を半透膜として利用)と、血液透析との比較における特徴(在宅可能・循環動態安定・主合併症は腹膜炎)を、患者の生活背景に即して説明できるかが問われている。
115回(状況設定)
CAPD導入直後の食事指導〜血液透析との違いを押さえよう
CAPDでは血液透析と異なり、持続的な透析で電解質変動が緩やかであり、血清K値が正常範囲なら一律のK制限は不要。また透析液への蛋白喪失と糖吸収を踏まえ、蛋白質は十分量、エネルギーは過剰にならないよう調整するのがポイント。
115回(状況設定)
前立腺肥大でなぜトイレが近くなる?残尿が招く頻尿の正体
前立腺肥大症で頻尿が起こるメカニズムを「残尿増加→有効膀胱容量減少」という病態生理から理解できているかを問う問題。
114回
