StudyNurse

下肢静脈瘤の危険因子を見抜く!『静脈弁不全』から読み解く2つの正解

看護師国家試験 第115午後82

国試問題にチャレンジ

115午後82

下肢静脈瘤の危険因子はどれか。2つ選べ。

  1. 1.外傷
  2. 2.喫煙
  3. 3.高齢
  4. 4.手術
  5. 5.妊娠

対話形式の解説

博士博士
今日は第115回の午後82問目、下肢静脈瘤の危険因子について一緒に考えていこう。選択肢は外傷・喫煙・高齢・手術・妊娠の5つ、この中から2つ選ぶ問題だ。
サクラサクラ
博士、下肢静脈瘤って下肢の血管がボコボコ浮き出ているあれですよね。なんとなく『立ち仕事の人がなる』というイメージはあるんですが、メカニズムまでは正直あやふやで…。
博士博士
いい着眼点だね。下肢静脈瘤の本質は『表在静脈の弁不全と静脈圧上昇』だ。下肢の静脈には逆流を防ぐ弁がついていて、ふくらはぎの筋ポンプ作用と合わせて血液を心臓に押し戻している。この弁が壊れたり、静脈内圧が長期間上がったりすると、血液が下肢に貯まって静脈が拡張し蛇行する。これが下肢静脈瘤の正体だよ。
サクラサクラ
なるほど!じゃあ『弁を壊す要因』と『静脈圧を上げる要因』が危険因子になるんですね。そう考えると、加齢で静脈壁や弁が弱くなる『高齢』は当てはまりそうです。あと妊娠は…大きなお腹で骨盤の静脈が圧迫されそうですね。
博士博士
その通り!高齢では弾性線維やコラーゲンが減って弁構造が脆くなる。妊娠では子宮の圧迫に加えて、循環血液量の増加、プロゲステロンによる静脈壁平滑筋の弛緩まで重なって、まさに静脈瘤の好発条件がそろうんだ。だから正解は3の高齢と5の妊娠になる。
サクラサクラ
では他の選択肢はどうして違うのか教えてください。外傷や手術も血管に影響しそうな気がしてしまって…。
博士博士
いい疑問だ。まず外傷は、表在静脈の弁不全を直接起こす因子ではない。打撲や創でいきなり弁が壊れるわけではないからね。喫煙はどうかな?
サクラサクラ
喫煙は血管に悪い、というイメージしかないです。
博士博士
喫煙は確かに血管に有害だが、影響を受けるのは主に『動脈系』なんだ。閉塞性動脈硬化症やバージャー病、虚血性心疾患の危険因子としては最重要だけれど、静脈瘤の主要因ではない。ここを区別できると強いよ。
サクラサクラ
手術はどうですか?術後に血栓ができやすいと習いました。
博士博士
鋭い!それは『深部静脈血栓症(DVT)』の話だね。長期臥床、手術、悪性腫瘍などはVirchow三徴の血流停滞・血管内皮障害・凝固能亢進をきたしてDVTを起こしやすくする。でもDVTは『深部静脈の血栓』、下肢静脈瘤は『表在静脈の弁不全』と病態が全く別だ。看護師国家試験ではこの2つを混同させる選択肢がよく出るから要注意だよ。
サクラサクラ
なるほど、深部と表在、血栓と弁不全をしっかり分けて理解する必要があるんですね。ところで臨床ではどんな症状が出るんですか?
博士博士
初期は下肢のだるさ、むくみ、こむら返り、見た目の瘤状静脈で気づかれる。進行すると色素沈着、うっ滞性皮膚炎、ついにはうっ滞性潰瘍まで起こる。診断は下肢静脈超音波(カラードプラ)で逆流を評価し、治療は弾性ストッキングによる圧迫療法が基本、進行例では血管内焼灼術(レーザー・ラジオ波)、硬化療法、ストリッピング術などが行われるよ。
サクラサクラ
看護のポイントはありますか?
博士博士
長時間の立位を避ける、下肢を挙上する、適度な運動でふくらはぎの筋ポンプを働かせる、弾性ストッキングを正しく着用する、これらの生活指導が大切だ。妊婦さんへの保健指導でも頻出だから、ぜひ押さえておこう。危険因子はゴロで『女・年・お産・立ち・太り・血筋』と覚えるといいね。

POINT

下肢静脈瘤の発症機序(静脈弁不全と静脈圧上昇)から危険因子を導けるかを問う問題で、DVTの危険因子と混同しないことがポイントです。

解答・解説

正解は3です

問題文:下肢静脈瘤の危険因子はどれか。2つ選べ。

解説:正解は3(高齢)と5(妊娠)です。下肢静脈瘤は、下肢の表在静脈(大伏在静脈・小伏在静脈やその分枝)の静脈弁が機能不全をきたし、血液が逆流して静脈内に貯留した結果、静脈が拡張・蛇行・瘤状に変化した状態をいいます。発症の中心的なメカニズムは『静脈弁不全+静脈圧上昇』であり、これを引き起こす因子が危険因子となります。加齢に伴い静脈壁の弾性線維が減少し弁の構造が脆弱化して逆流が生じやすくなるため『高齢』は重要な危険因子です。また妊娠では、増大した子宮による骨盤内静脈の圧迫、循環血液量の増加、エストロゲンやプロゲステロンによる静脈壁平滑筋の弛緩や弁の脆弱化など、複数の要因が重なり下肢静脈瘤が好発します。実際、女性、立ち仕事、肥満、家族歴、多産歴なども典型的な危険因子として知られています。

選択肢考察

  1. ×1.  外傷

    外傷は下肢静脈瘤の代表的な危険因子ではありません。下肢の打撲や創傷そのものが静脈弁不全を直接引き起こすメカニズムは確立されていません。なお、深部静脈損傷後に二次性静脈瘤が生じることはありますが、これは特殊な病態であり、一般的な原発性下肢静脈瘤の危険因子として挙げられる項目ではないため、誤りです。

  2. ×2.  喫煙

    喫煙は閉塞性動脈硬化症やバージャー病など『動脈系』血管疾患や肺疾患、虚血性心疾患の主要な危険因子ですが、下肢静脈瘤の主因として位置づけられる因子ではありません。静脈瘤の本質である静脈弁不全に直接寄与するエビデンスは乏しく、本問の正答には該当しません。

  3. 3.  高齢

    正解です。加齢により静脈壁のコラーゲン・弾性線維が変性し、静脈弁の構造と機能が低下します。これにより静脈血の逆流が生じ、静脈内圧が慢性的に上昇して静脈瘤が形成されます。下肢静脈瘤の有病率は加齢とともに明らかに上昇することが疫学的に示されており、高齢は確立された危険因子です。

  4. ×4.  手術

    手術は『深部静脈血栓症(DVT)』の主要な危険因子(Virchow三徴の血流停滞・血管内皮障害・凝固能亢進をきたす)ですが、表在静脈の弁不全による下肢静脈瘤を直接引き起こす因子ではありません。手術後の長期臥床による血栓と本問の静脈瘤を混同しないことが重要です。

  5. 5.  妊娠

    正解です。妊娠中は、増大した子宮による骨盤内・下大静脈の圧迫で下肢静脈圧が上昇すること、循環血液量が約30〜50%増加すること、プロゲステロンやエストロゲンの作用で静脈壁の平滑筋が弛緩し弁機能が低下することなど、複数の機序が重なって下肢静脈瘤が発生・増悪しやすくなります。多産であるほどリスクが高まることも知られています。

下肢静脈瘤の主要な危険因子は『女性・高齢・妊娠/多産・立ち仕事・肥満・家族歴』と整理できます。覚え方として『女・年・お産・立ち・太り・血筋』とリズムで覚えるとよいでしょう。臨床所見では下肢のだるさ・むくみ・こむら返り、見た目の瘤状静脈、進行例では色素沈着・うっ滞性皮膚炎・うっ滞性潰瘍が生じます。検査は下肢静脈超音波検査(カラードプラ)で逆流の有無と部位を評価します。治療は弾性ストッキングによる圧迫療法、生活指導(長時間の立位回避、下肢挙上、運動)、進行例では血管内焼灼術(ラジオ波・レーザー)、硬化療法、ストリッピング術が行われます。看護では、皮膚保護、下肢挙上、弾性ストッキングの正しい着用指導が重要です。なお『下肢静脈瘤=表在静脈の弁不全による疾患』、『DVT=深部静脈の血栓性閉塞』と区別して整理しておきましょう。

下肢静脈瘤の発症機序(静脈弁不全と静脈圧上昇)から危険因子を導けるかを問う問題で、DVTの危険因子と混同しないことがポイントです。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。