痔瘻のキホンを押さえよう!原因・合併症・治療方針を整理
看護師国家試験 第115回 午後 第83問
国試問題にチャレンジ
基礎疾患のない患者の痔瘻について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.先天性の疾患である。
- 2.悪性腫瘍の発生がある。
- 3.手術療法が原則である。
- 4.上下直腸静脈の静脈瘤である。
- 5.骨盤底筋群の虚弱が原因である。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
肛門腺感染を原因とする後天性疾患である痔瘻について、その本態(瘻管形成)、長期放置で痔瘻癌が発生しうること、根治には手術が原則であることを問う基本問題です。痔核との病態の違いを明確に区別できるかが鍵となります。
解答・解説
正解は2です
問題文:基礎疾患のない患者の痔瘻について正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は2と3です。痔瘻(あな痔)は、肛門と直腸の境目にある歯状線部の肛門陰窩(こうもんいんか)に開口する肛門腺に大腸菌などの細菌が感染し、肛門周囲膿瘍を形成したのち、その膿瘍が自壊または切開排膿された結果、肛門管内の一次口(原発口)と皮膚側の二次口(外口)を結ぶ瘻管が形成された状態を指します。原因が肛門腺感染という後天的な炎症であるため、先天性疾患ではなく、また血管病変でもありません。長期間(一般に10年以上)放置された痔瘻からはまれに腺癌(痔瘻癌)が発生することが知られており(選択肢2が正解)、瘻管は上皮化して自然閉鎖しにくく抗菌薬のみでは治癒しないため、根治には瘻管の切開開放術や括約筋温存術式(くりぬき法、シートン法など)といった手術療法が原則となります(選択肢3が正解)。痔瘻はCrohn病や結核、HIV感染症など基礎疾患に伴う続発性のものもありますが、本問では「基礎疾患のない患者」と限定されているため、最も典型的な肛門腺感染由来の特発性痔瘻として考えます。
選択肢考察
- ×1. 先天性の疾患である。
誤りです。痔瘻は生まれつきの異常ではなく、肛門陰窩に開口する肛門腺への細菌感染を契機として肛門周囲膿瘍が生じ、それが瘻管化することで形成される後天性の疾患です。なお乳児にみられる乳児痔瘻は別カテゴリーで、男児に多くアンドロゲン関与が示唆される特殊な病態ですが、一般成人の痔瘻と同様に先天性疾患には分類されません。
- ○2. 悪性腫瘍の発生がある。
正解です。10年以上といった長期間放置された慢性痔瘻からは、瘻管上皮を発生母地として粘液産生腺癌(痔瘻癌)が発生することがまれにあります。頻度は高くないものの、長期経過例で硬結や膿性分泌物の性状変化、出血、疼痛増強などがみられる場合は悪性化を念頭に組織生検が必要です。
- ○3. 手術療法が原則である。
正解です。痔瘻の瘻管は上皮化し感染源として残存するため、抗菌薬や坐薬などの保存的治療では根治せず再発・再燃を繰り返します。したがって治療の原則は瘻管そのものを処理する外科的治療であり、低位筋間痔瘻に対する瘻管切開開放術、括約筋温存を目的とするくりぬき法、複雑痔瘻に対するシートン法などが病型に応じて選択されます。
- ×4. 上下直腸静脈の静脈瘤である。
誤りです。これは痔瘻ではなく内痔核・外痔核(いわゆる「いぼ痔」)の説明にあたります。痔核は直腸下端から肛門の静脈叢(上・下直腸静脈叢)がうっ血して拡張・蛇行した静脈瘤様病変であり、瘻管形成を本態とする痔瘻とは病態がまったく異なります。
- ×5. 骨盤底筋群の虚弱が原因である。
誤りです。骨盤底筋群の脆弱化は直腸脱や骨盤臓器脱、便失禁などの原因となりますが、痔瘻の成因とは関係ありません。痔瘻の主因はあくまで歯状線部の肛門陰窩から侵入した細菌による肛門腺感染であり、筋肉の支持性低下によって生じる疾患ではありません。
痔瘻はPark分類により、瘻管の走行と肛門括約筋との位置関係から(1)皮下・粘膜下痔瘻、(2)低位筋間痔瘻、(3)高位筋間痔瘻、(4)坐骨直腸窩痔瘻、(5)骨盤直腸窩痔瘻に大別されます(隅越分類I〜IV型もよく用いられます)。前駆病態である肛門周囲膿瘍は強い肛門部痛、発熱、発赤、腫脹を呈し、早期切開排膿が必要です。膿瘍が排膿されると一時的に症状は軽快しますが、瘻管が残ると痔瘻に移行します。臨床的には肛門周囲の小孔(外口)からの持続的な膿性分泌、下着の汚染、肛門周囲のかゆみ・湿疹などが主訴となります。なおCrohn病に合併する痔瘻は複雑で難治性のことが多く、原疾患の治療(抗TNFα抗体など)と並行した管理が必要であり、本問のように「基礎疾患のない患者」と区別して扱われる点が重要です。
肛門腺感染を原因とする後天性疾患である痔瘻について、その本態(瘻管形成)、長期放置で痔瘻癌が発生しうること、根治には手術が原則であることを問う基本問題です。痔核との病態の違いを明確に区別できるかが鍵となります。
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