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食道癌術後の離床とドレーン管理 6本の管を安全に扱う鉄則

看護師国家試験 第115午前95(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午前95

状況設定

Aさん(56歳、男性、会社員)は胸部食道癌と診断され、開胸開腹下で食道切除再建術を受けることになった。 病状と手術の説明を聞き「酒もほとんど飲まないのに、食道癌になっちゃうんですね」と落ち込んだ様子で「早くよくなりたい。20歳から毎日20本吸っていたタバコも手術が決まってやめました」と話した。 身体所見:身長168 cm、体重54 kg、BMI 19。 血液所見:Hb 13.6 g/dL、Ht 41.4%、血小板数28万/μL、プロトロンビン時間11秒、総蛋白6.2 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、空腹時血糖102 mg/dL、HbA1c 4.8%。 呼吸機能所見:%VC 78%、FEV1% 67%。

Aさんは、右開胸開腹胸部食道亜全摘術、胃を用いた食道再建術、頸部リンパ節郭清術を受け、胸腔ドレーン、腹腔内ドレーン、頸部皮下ドレーン、胃管減圧チューブ、経腸栄養チューブ、膀胱留置カテーテルが挿入された。 術後1日には看護師が介助してベッドサイドで立位になり、足踏みを行った。術後2日には病室から廊下に出て歩行し、看護師がドレーンバッグを持つなどの介助をした。Aさんは「こんなにたくさん管が入るとは思わなかった。1人ではとても歩けない」と話した。 Aさんの離床を援助するときのドレーン類の取り扱いで正しいのはどれか。

  1. 1.ドレーン類は引っ張った状態で保持する。
  2. 2.ドレーンを気にしないで歩いてよいとAさんに伝える。
  3. 3.ドレーンバッグは、ドレーン挿入部よりも高い位置に掛ける。
  4. 4.離床前後にドレーンの固定位置が変わっていないことを確認する。

対話形式の解説

博士博士
今日はAさんの事例から、食道癌術後のドレーン管理について学ぶぞ。Aさんは胸腔・腹腔・頸部皮下の3本のドレーンに加え、胃管、経腸栄養、膀胱カテーテルと、なんと6本もの管が入っておる。
サクラサクラ
6本ですか…!私だったら動くのが怖くなりそうです。Aさんも「1人ではとても歩けない」って言ってますもんね。
博士博士
その通りじゃ。それでも離床は早期から進めねばならん。なぜだか分かるかの?
サクラサクラ
えーと、寝たきりだと肺炎とか深部静脈血栓症のリスクが上がるからですか?
博士博士
よく覚えておったな。特に開胸術後は無気肺のリスクが高い。前問のAさんのFEV1%は67%で閉塞性換気障害もあった。離床は呼吸器合併症予防の最重要対策じゃ。
サクラサクラ
じゃあ離床のときにドレーンはどう扱えばいいんでしょう。引っ張っちゃダメなのは分かるんですが…。
博士博士
基本は「牽引しない」「屈曲させない」「バッグは挿入部より低い位置」「閉鎖性を保つ」の4つじゃ。バッグを高くしてしまうと、排液が逆流して逆行性感染を引き起こすぞ。
サクラサクラ
なるほど、バッグは必ず低位ですね。じゃあ離床のときに看護師がバッグを持って一緒に歩くのも、その高さを保つためなんですね。
博士博士
そうじゃ。そしてもう一つ大事なのが、離床の前後でドレーンの固定位置がずれていないか確認することじゃ。体を動かすとテープが剥がれたり、挿入長が変わったりするからの。
サクラサクラ
マーキングをしておくと変化が分かりやすいんですよね。排液の量や色も併せて見るんですか?
博士博士
うむ。離床後に急に血性排液が増えていれば術後出血の可能性、混濁すれば感染、乳び様なら胸管損傷など、変化は重要なサインじゃ。
サクラサクラ
Aさんみたいに「歩けない」と不安を訴える患者さんには、どう声をかけたらいいんでしょう。
博士博士
「気にしないで」と流すのは厳禁じゃ。不安は転倒や自己抜去のもとになる。管の役割と安全な持ち方を一緒に確認し、「私たちが支えますよ」と具体的に伝えるのが大切じゃ。
サクラサクラ
安心感が動きやすさにつながるんですね。患者さんの心理面までケアしてこそのドレーン管理だと分かりました。
博士博士
その通り。食道癌術後はドレーンも多く、合併症も縫合不全・反回神経麻痺・乳び胸など多彩じゃ。多職種で協働しながら、安全に早期離床を進めることが回復への近道なのじゃ。

POINT

多数のドレーンが挿入された食道癌術後患者の離床援助では、ドレーンの安全管理(牽引しない・バッグは低位・固定確認)が必須であることを問う問題。

解答・解説

正解は4です

問題文:Aさんは、右開胸開腹胸部食道亜全摘術、胃を用いた食道再建術、頸部リンパ節郭清術を受け、胸腔ドレーン、腹腔内ドレーン、頸部皮下ドレーン、胃管減圧チューブ、経腸栄養チューブ、膀胱留置カテーテルが挿入された。 術後1日には看護師が介助してベッドサイドで立位になり、足踏みを行った。術後2日には病室から廊下に出て歩行し、看護師がドレーンバッグを持つなどの介助をした。Aさんは「こんなにたくさん管が入るとは思わなかった。1人ではとても歩けない」と話した。 Aさんの離床を援助するときのドレーン類の取り扱いで正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。Aさんは食道亜全摘+胃管再建+頸部リンパ節郭清という侵襲度の高い手術を受け、胸腔・腹腔・頸部皮下の3本のドレーンに加え、胃管減圧チューブ、経腸栄養チューブ、膀胱留置カテーテルと、合計6本ものチューブ・カテーテルが体に挿入されている。離床は無気肺・肺炎・DVTの予防に必須だが、動作のたびにドレーンが引っ張られて固定テープがずれたり、屈曲・閉塞・自己抜去のリスクが高まる。そのため離床前後で、固定位置がずれていないか、屈曲やねじれがないか、排液の量・性状に変化がないかを必ず確認することが、ドレーン管理の基本原則となる。Aさん自身が「1人ではとても歩けない」と不安を訴えていることも踏まえ、安全を担保したうえで離床を進める必要がある。

選択肢考察

  1. ×1.  ドレーン類は引っ張った状態で保持する。

    ドレーンを牽引すると、挿入部への機械的刺激による疼痛や出血、固定テープの剥がれ、最悪の場合は自己抜去・事故抜去を招く。離床時はチューブに余裕(たわみ)を持たせ、患者の動きに追随できるように保持することが原則である。

  2. ×2.  ドレーンを気にしないで歩いてよいとAさんに伝える。

    「1人ではとても歩けない」と訴えているAさんの不安に向き合わず安易に保証することは不適切。むしろドレーンの本数や役割、安全な持ち方、注意すべき動作(しゃがむ・振り向く等)を具体的に説明し、転倒や引っ掛けによる事故抜去を予防する関わりが求められる。

  3. ×3.  ドレーンバッグは、ドレーン挿入部よりも高い位置に掛ける。

    排液バッグは挿入部より低い位置に保持するのが鉄則。高い位置に置くと排液が体腔内へ逆流し、感染(逆行性感染)や貯留液による合併症を引き起こすリスクがある。胸腔ドレーンでは特に水封部より低く保つことが重要である。

  4. 4.  離床前後にドレーンの固定位置が変わっていないことを確認する。

    離床に伴う体動でドレーンの固定テープがずれたり、挿入長が変化したりすることがある。離床前後でマーキング位置・固定状態・排液の性状と量を確認することで、抜去や逸脱の早期発見、急変の予防につながる。本問のように多数のドレーンが挿入されている食道癌術後では特に重要である。

食道癌術後は侵襲が極めて大きく、無気肺・肺炎などの呼吸器合併症や縫合不全、反回神経麻痺、頸部リンパ漏など特有の合併症が多い。早期離床はこれらの予防に有効である一方、ドレーン管理が複雑になる。ドレーン管理の基本は「閉鎖性の維持」「逆流防止のためバッグは低位」「屈曲・牽引・閉塞の回避」「挿入部の清潔保持」「排液の量・性状・色の観察」の5点。離床時はあらかじめチューブをまとめ、看護師が安全にバッグを保持しながら患者の歩行を支える。挿入部にはマーキングや長さの記録を行い、ずれを客観的に把握できるようにしておくとよい。

多数のドレーンが挿入された食道癌術後患者の離床援助では、ドレーンの安全管理(牽引しない・バッグは低位・固定確認)が必須であることを問う問題。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。