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便潜血陽性のあとはどうする?大腸内視鏡が選ばれる理由

看護師国家試験 第115午後94(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後94

状況設定

Aさん(55歳、男性)は会社の健康診断で便潜血が陽性となった。他の検査項目に異常がなかったため、精密検査を受けなかった。6か月後、妻の強い勧めで病院を受診し「体調に変化がなかったので、仕事を優先していました。ただ、くわしく検査を受けないといけないのですね」と話した。Aさんに脊髄まで及ぶ悪性腫瘍はない。

Aさんの診断に最も有用な検査はどれか。

  1. 1.腹部MRI検査
  2. 2.大腸内視鏡検査
  3. 3.腹部超音波検査
  4. 4.低線量CT検査

対話形式の解説

博士博士
今回はAさん、55歳男性じゃ。健診で便潜血陽性と出たのに、症状がないからと半年放置してしまった。妻に説得されて受診した今、何の検査をするのが最善か、という問題じゃ。
サクラサクラ
便潜血陽性って、便に血が混じってるってことですよね?痔とかでも陽性になるって聞いたことがあります。
博士博士
鋭い視点じゃ。確かに痔核でも陽性になり得る。でも検診で便潜血を見る最大の目的は、大腸癌のスクリーニングなのじゃ。免疫学的便潜血検査、いわゆるFITはヒトヘモグロビンに特異的に反応するから、肉を食べた影響は受けないし、上部消化管出血では分解されて陽性になりにくい。つまり大腸由来の出血を拾いやすい検査になっておる。
サクラサクラ
じゃあ陽性が出たら、必ず大腸を調べなきゃいけないんですね。
博士博士
その通りじゃ。原因としては大腸癌、腺腫性ポリープ、炎症性腸疾患、憩室出血、痔核などが考えられるが、これらを区別するには粘膜を直接見るしかない。そこで登場するのが大腸内視鏡検査、いわゆるTCSじゃ。
サクラサクラ
選択肢には腹部MRIや腹部超音波、低線量CTもありますね。どうしてダメなんでしょう?
博士博士
順番に見ていこう。腹部MRIは肝胆膵や骨盤臓器を見るには優れておるが、腸管のような管腔臓器の粘膜病変を細かく見るのは苦手じゃ。腹部超音波は腸管内のガスで描出が乱れやすく、小さなポリープは見落としやすい。低線量CTは肺癌検診で胸部を撮るための検査で、大腸の精査には用いない。
サクラサクラ
なるほど、どれも大腸の中をしっかり見るのには向いていないんですね。大腸内視鏡だと粘膜を直接見られるんですか?
博士博士
その通り。肛門から内視鏡を入れて、直腸から盲腸まで全大腸を観察する。さらに病変が見つかったらその場で生検して組織診断につなげられるし、小さなポリープなら内視鏡的切除まで一気にできる。診断と治療を同時に行える、これが他の検査にはない決定的な強みじゃ。
サクラサクラ
Aさんは55歳ですよね。年齢的にも大腸癌は心配な世代ですか?
博士博士
大腸癌は50代から発生頻度が上がり始め、60代70代でピークを迎える。55歳男性で便潜血陽性なら、確率的に放置すべきではない。しかも6か月も検査を先延ばしにしておるから、看護師としては「症状がないからこそ怖い」という考え方を伝える必要があるのじゃ。
サクラサクラ
CTコロノグラフィーとかカプセル内視鏡という言葉も聞いたことがあるんですが、それは使わないんですか?
博士博士
良い質問じゃな。CTコロノグラフィー、いわゆる大腸CTは、内視鏡が技術的に難しい癒着の強い患者や、本人が強く拒否する場合の代替手段じゃ。カプセル大腸内視鏡も同様の位置づけ。ただし両方とも、病変が見つかっても生検ができないという致命的な弱点があるから、結局は内視鏡で確認しなおすことになる。だから第一選択はやはり大腸内視鏡なのじゃ。
サクラサクラ
看護師としては、Aさんにどんな声かけをしたらいいんでしょうか?
博士博士
まず「症状がない=異常がない」ではないこと、検診で陽性が出た意味、精密検査を完結させて初めて検診が機能することを丁寧に説明するのじゃ。検査前日は低残渣食、当日は腸管洗浄剤を2リットル程度内服するなど準備も大変じゃから、流れを具体的に伝えて不安を和らげる関わりも大切じゃな。
サクラサクラ
検診と精密検査はセットなんですね。出しっぱなしにすると、せっかくの検診が意味をなくしてしまう。
博士博士
その通り。日本では便潜血陽性者の精密検査受診率が約7割にとどまっておる。看護師の役割として、未受診者を確実に精査へつなげることが、大腸癌死亡率を下げる現場の力になるのじゃ。

POINT

健診で便潜血陽性となった55歳男性に対し、確定診断につなげる精密検査として何を選ぶかを問う問題。大腸粘膜を直接観察し生検可能な大腸内視鏡検査が第一選択であることを理解しているかが鍵となる。

解答・解説

正解は2です

問題文:Aさんの診断に最も有用な検査はどれか。

解説:正解は 2 の大腸内視鏡検査です。便潜血検査は大腸癌検診における一次スクリーニングであり、消化管出血を示唆する微量の血液成分を糞便中から検出します。陽性となった場合、原因として大腸癌、腺腫性ポリープ、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患、痔核などが想定されますが、いずれも大腸粘膜を直接観察できる検査でなければ確定診断に至りません。大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入して盲腸から直腸まで全大腸の粘膜を観察でき、病変があればその場で生検を行って組織診断につなげられるため、便潜血陽性者の精密検査として最も優先順位が高い検査です。Aさんは55歳男性で、大腸癌の発生頻度が増加し始める年代でもあり、6か月放置していた経緯を踏まえれば、躊躇なく大腸内視鏡へ進む必要があります。

選択肢考察

  1. ×1.  腹部MRI検査

    腹部MRIは肝臓・胆道・膵臓・骨盤臓器など軟部組織のコントラスト評価に優れますが、大腸の粘膜病変を直接観察する目的には適しません。腸管の蠕動や残便によるアーチファクトもあり、便潜血陽性後の精査として第一選択にはならない検査です。

  2. 2.  大腸内視鏡検査

    便潜血陽性者の精密検査として最も推奨される検査です。全大腸の粘膜を直視下に観察でき、ポリープや腫瘍を発見すればその場で生検や内視鏡的切除も可能で、診断と治療を一連の手技で行える点が他検査にない大きな利点です。

  3. ×3.  腹部超音波検査

    腹部超音波は非侵襲で肝胆膵腎などの実質臓器評価に有用ですが、ガスを含む大腸管腔の観察は描出が不安定で、粘膜の小病変を捉えるのは困難です。便潜血陽性の原因検索としては補助的役割にとどまります。

  4. ×4.  低線量CT検査

    低線量CTは主として肺癌検診で胸部を撮影する目的で用いられる検査であり、大腸病変の精査には適しません。大腸の評価にはCTコロノグラフィー(大腸CT検査)という別の手技がありますが、これは便潜血陽性後の第一選択ではなく、内視鏡が困難な場合の代替として位置づけられます。

わが国の対策型大腸がん検診では、40歳以上を対象に免疫学的便潜血検査(FIT)の2日法が採用されています。1日でも陽性であれば精密検査が必要で、症状の有無や食事内容は判定に影響しません。精密検査として全大腸内視鏡検査が標準ですが、何らかの理由で内視鏡が困難な場合にはCTコロノグラフィー(大腸CT)や注腸X線造影、近年ではカプセル大腸内視鏡が選択肢となります。ただしこれらは病変発見時に生検ができないため、結局は内視鏡へ進む必要があります。便潜血陽性者の約3〜5%に大腸癌が発見されると報告されており、放置は予後を悪化させるため、検診と精密検査をセットで完結させることの重要性を患者に説明する役割を看護師は担います。

健診で便潜血陽性となった55歳男性に対し、確定診断につなげる精密検査として何を選ぶかを問う問題。大腸粘膜を直接観察し生検可能な大腸内視鏡検査が第一選択であることを理解しているかが鍵となる。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。