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心不全のおばあちゃんと買い物へ ── 訪問看護師が介護職に伝えるべき安全のコツ

看護師国家試験 第115午後91(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後91

状況設定

Aさん(78歳、女性、要介護1)は夫(82歳、要支援1)と2人で暮らしている。 高血圧症と心不全と診断され、降圧薬と利尿薬を内服し、日常生活では呼吸困難の症状はない。 病状管理のために訪問看護を週1回利用している。Aさんは「最近、買い物に行くとすぐに疲れてしまい、重いものが買えない」と話し、訪問看護師の買い物への同行を希望した。Aさんの希望を受けてサービス担当者会議が開催され、訪問介護事業所から訪問看護師に「買い物に同行するときに注意することはありますか」と質問があった。

このときに訪問看護師が助言する内容で適切なのはどれか。

  1. 1.「外出時は水分制限をしてください」
  2. 2.「Aさんに息切れが出たら休憩してください」
  3. 3.「食塩はAさんの好きなものを買ってください」
  4. 4.「Aさんを車椅子に乗せて買い物に行ってください」

対話形式の解説

博士博士
今回は状況設定問題じゃ。78歳のAさんは夫と二人暮らし、要介護1で心不全と高血圧症を抱えておる。降圧薬と利尿薬を飲みながら週1回の訪問看護を利用しておるぞ。
サクラサクラ
日常生活では呼吸困難はないんですよね。でも「買い物に行くとすぐ疲れる」って訴えてヘルパーさんに同行をお願いしたんですね。
博士博士
そうじゃ。サービス担当者会議で、訪問介護事業所から「買い物に同行するとき何に注意すればよいか」と訊かれた。さて、訪問看護師としてどう助言する?
サクラサクラ
んー、心不全だから「水分を制限してください」って言ったほうがいいんでしょうか?
博士博士
それはちょっと危ないのう。Aさんは利尿薬を飲んでおる。外を歩く場面でさらに水分を絞ると、脱水や立ちくらみで転倒のリスクが上がってしまうのじゃ。水分管理は主治医と相談しながら日頃から行うべきもので、外出時だけ一律に制限する話ではない。
サクラサクラ
なるほど、薬と一緒に考えないといけないんですね。じゃあ「車椅子に乗せて買い物に行ってください」はどうですか?安全そうですけど。
博士博士
気持ちはわかるが、Aさんは要介護1で、自分の足で買い物に行きたいという希望を持っておる。いきなり車椅子に切り替えると、残った歩行能力が落ちてしまい、廃用症候群を招きかねん。自立支援の観点から見ても適切ではないのう。
サクラサクラ
あ、そっか。本人の希望を尊重するのが在宅ケアの基本ですもんね。
博士博士
そう。残る選択肢は「食塩はAさんの好きなものを買ってください」と「息切れが出たら休憩してください」じゃが、どちらが正解と思う?
サクラサクラ
心不全なら減塩が大事ですよね。好きなだけ塩分とったら、体液がたまって心不全が悪化しちゃう。だから「息切れが出たら休憩」が正解だと思います!
博士博士
その通りじゃ。Aさんの訴えからは活動耐容能の低下と易疲労性が読み取れる。買い物中に息切れや動悸が出たら、ベンチに座って休むようヘルパーに伝えておけば、心負荷の蓄積と転倒を防げる。これが最も具体的で実践的な助言じゃな。
サクラサクラ
NYHA分類でいうとⅡ度くらいですかね。日常では平気だけど、買い物みたいな日常を少し超える負荷で症状が出る感じ。
博士博士
鋭いのう。心不全のセルフモニタリングでは、息切れ・体重増加・浮腫・夜間の咳などをチェックする。買い物同行のときは、ヘルパーにも「歩いている途中で息が上がっていないか」「顔色が悪くなっていないか」を観察してもらうとよい。
サクラサクラ
荷物の重さもポイントですか?重いものを持つと心臓に負担がかかりそう。
博士博士
その通り。重い物は配達サービスを使う、保冷バッグ付きカートで分散する、人混みを避けて涼しい時間帯に行く、ベンチのあるルートを選ぶなど、具体的工夫を多職種で共有することが大切じゃ。サービス担当者会議はまさにそれを話し合う場なのじゃよ。
サクラサクラ
看護師の視点からの「ちょっとした注意点」が、ヘルパーさんの安全な支援につながるんですね。在宅ケアって本当にチームプレイなんだなあ。

POINT

心不全と要介護1を抱える高齢者の買い物同行において、訪問介護員へ伝えるべき注意点を問う問題。患者の希望(自分で買い物に行きたい)を尊重しつつ、心不全の易疲労性と高齢者の転倒リスクに配慮した、最も具体的で安全な助言を選べるかがカギとなる。

解答・解説

正解は2です

問題文:このときに訪問看護師が助言する内容で適切なのはどれか。

解説:正解は 2 です。Aさんは78歳・要介護1で、心不全と高血圧症を抱え降圧薬と利尿薬を内服している在宅療養者である。日常生活では呼吸困難はないものの、本人の「買い物に行くとすぐに疲れてしまい、重いものが買えない」という訴えから、活動耐容能の低下と易疲労性が顕在化していると判断できる。心不全患者では運動負荷により心拍出量需要が増し、息切れ・動悸・めまいなどが出現しやすく、無理を重ねると急性増悪や転倒・転落のリスクが一気に高まる。したがって、買い物に同行する訪問介護員に対しては、本人の症状サインをこまめに確認し、息切れが出た時点で立ち止まって休憩をとるよう助言することが最も実践的で安全な対応となる。

選択肢考察

  1. ×1.  「外出時は水分制限をしてください」

    心不全管理では水分バランスを意識する場面はあるが、Aさんは利尿薬を内服中であり、夏場や歩行を伴う外出では脱水・電解質異常のリスクの方が前景に立つ。場面を限定して一律に水分を制限する指示は適切でなく、水分管理は主治医の指示に沿って日頃から継続的に調整すべき内容である。

  2. 2.  「Aさんに息切れが出たら休憩してください」

    Aさん本人が「すぐに疲れる」と訴えており、心不全に伴う易疲労性と活動耐容能低下が背景にある。買い物中に息切れや動悸が出た時点でベンチや休憩スペースを利用して座って休むよう同行者に伝えておけば、心負荷の蓄積と転倒を未然に防ぎつつ、本人の「自分で買い物に行きたい」という希望も守れる。最も具体的で安全に直結する助言である。

  3. ×3.  「食塩はAさんの好きなものを買ってください」

    心不全と高血圧症のある人では減塩(一般に1日6g未満)が生活指導の柱であり、嗜好だけを優先して食塩や塩分の多い食品を購入することは体液貯留や血圧上昇を招き、心不全増悪につながる。買い物支援では本人の好みを尊重しつつ、減塩タイプを選ぶといった工夫を一緒に行うことが望ましい。

  4. ×4.  「Aさんを車椅子に乗せて買い物に行ってください」

    Aさんは要介護1で日常生活では呼吸困難もなく、自力で歩いて買い物に行きたいという希望を持っている。安易に車椅子移動へ切り替えることは残存能力の低下や廃用症候群、自立支援の機会喪失につながる。本人が歩ける範囲は歩き、疲れたら休むという形で活動を継続することが、心不全管理と生活機能維持の両立に資する。

心不全のステージ分類(NYHA心機能分類)では、日常生活で症状が出ない状態でも、坂道や買い物などの日常を超える負荷で症状が出るⅡ度に該当することが多い。在宅心不全患者の管理では、(1)塩分・水分の管理、(2)内服アドヒアランス、(3)体重・浮腫・息切れなどのセルフモニタリング、(4)活動と休息のバランス、が4本柱となる。要介護高齢者では加えて転倒予防の視点が重要で、買い物では荷物の重さを控えめにする、保冷バッグ付きカートを使う、夏は涼しい時間帯を選ぶ、人混みを避ける、ベンチのあるルートを選ぶ、といった工夫を多職種で共有しておくと安全性が高まる。サービス担当者会議は、こうした具体的な注意点をケアマネジャーや訪問介護員と共通言語化する貴重な場である。

心不全と要介護1を抱える高齢者の買い物同行において、訪問介護員へ伝えるべき注意点を問う問題。患者の希望(自分で買い物に行きたい)を尊重しつつ、心不全の易疲労性と高齢者の転倒リスクに配慮した、最も具体的で安全な助言を選べるかがカギとなる。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。