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『そのとき』ではなく『いま』から始める防災ー高齢世帯への避難支援

看護師国家試験 第115午後93(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後93

状況設定

Aさん(78歳、女性、要介護1)は夫(82歳、要支援1)と2人で暮らしている。 高血圧症と心不全と診断され、降圧薬と利尿薬を内服し、日常生活では呼吸困難の症状はない。 病状管理のために訪問看護を週1回利用している。Aさんは「最近、買い物に行くとすぐに疲れてしまい、重いものが買えない」と話し、訪問看護師の買い物への同行を希望した。Aさんの希望を受けてサービス担当者会議が開催され、訪問介護事業所から訪問看護師に「買い物に同行するときに注意することはありますか」と質問があった。

Aさんが「2人とも高齢なので、災害が起こった時に避難できるかどうか心配です」と話があった。 訪問看護師によるAさんへの説明で適切なのはどれか。

  1. 1.「自宅内の避難経路を点検してください」
  2. 2.「訪問看護師は災害が発生したらすぐに誘導します」
  3. 3.「災害が発生してから近くの避難所の場所を確認しましょう」
  4. 4.「災害発生時は長女さんの家族が来てから避難してください」

対話形式の解説

博士博士
今日は災害時の避難に不安を抱える高齢夫婦への助言を考えるぞ。Aさんは78歳要介護1、夫は82歳要支援1。心不全で利尿薬も飲んでおる。さて、訪問看護師としてどんな声かけが適切かのう?
サクラサクラ
『災害が発生したらすぐ誘導します』って言ってあげると安心しそうな気がしますが…。
博士博士
気持ちは分かるが、それは危険な約束じゃ。災害時は道路の寸断、停電、看護師自身の被災もあり得る。来られない可能性が高いのに『来る』と約束すれば、Aさん夫婦は救援を待ち続けて逃げ遅れてしまうかもしれん。
サクラサクラ
あっ、確かに。災害時って訪問看護師さん自身も被災者になる可能性があるんですね。
博士博士
そうじゃ。だから防災では『自助・共助・公助』という考え方が基本になる。発災直後はまず自分と家族で身を守る自助、次に近所や地域で助け合う共助、そして時間が経って行政の公助が動き出す、という順番じゃ。
サクラサクラ
じゃあ正解は『自宅内の避難経路を点検してください』なんですね。これは自助を高める助言ということですか?
博士博士
その通り。要介護・要支援の夫婦にとって、まず大事なのは『玄関まで安全に出られるか』じゃ。廊下に物が積んでないか、段差につまずかないか、夜間に停電してもライトはあるか、非常持ち出し袋はどこに置くか、家具は固定されているか…平時にこそ点検すべき項目はたくさんある。
サクラサクラ
『災害が発生してから避難所の場所を確認しましょう』はどうしてダメなんですか?
博士博士
発災後は混乱の真っ最中じゃ。停電や通信障害で情報が取りにくくなり、高齢者は心理的にも動揺する。避難所の場所や経路、ハザードマップによる自宅周辺の浸水・土砂災害リスクは、平時に市町村の防災情報で確認しておくのが鉄則じゃ。
サクラサクラ
『長女さん家族が来てから避難』は、家族の力を借りる共助だから良さそうにも見えますが…。
博士博士
共助は大切じゃが、長女家族も同時に被災して動けないかもしれん。徒歩15分の距離でも、道路が寸断されればたどり着けない。家族支援は『連絡手段』『合流場所』『来られない場合の判断基準』まで事前に決めておくのが本物の共助じゃ。到着を待つことが前提では、避難開始が遅れて命にかかわる。
サクラサクラ
なるほど…。あと、Aさん夫婦みたいな高齢世帯って、行政から特別な支援はあるんですか?
博士博士
よい質問じゃ。災害対策基本法に基づき、市町村は『避難行動要支援者名簿』を作成しておる。高齢者・障害者・難病患者など、自力避難が困難な人を登録し、本人同意のうえで民生委員・自主防災組織・消防などと共有して避難支援につなげる仕組みじゃ。訪問看護師は登録状況を確認し、未登録なら市町村への相談を促すのも大事な役割じゃな。
サクラサクラ
非常持ち出し品も、高齢者ならではの工夫がありそうですね。
博士博士
その通り。一般的な水・食料・懐中電灯・現金に加え、高齢者では『内服薬1週間分』『お薬手帳のコピー』『予備の眼鏡』『補聴器の電池』『入れ歯洗浄剤』『おむつ』などを準備しておく。Aさんは心不全で利尿薬を飲んでおるから、薬を持ち出せるかは特に重要じゃ。避難所では薬がもらえるとは限らんからな。
サクラサクラ
心不全の患者さんが避難所生活になると、塩分過多のレトルト食品で症状悪化、なんてこともありそうですね…。
博士博士
鋭い視点じゃ。だからこそ平時からかかりつけ医・薬局・ケアマネジャー・訪問看護ステーションと連携し、災害時の医療継続計画(BCP)を共有しておくことが重要になる。看護師の防災支援は単なる避難所案内ではなく、療養生活そのものを災害から守る包括的な視点が求められるのじゃ。
サクラサクラ
『そのとき』に動くんじゃなくて、『いま』から備えるーそれが看護師の災害支援なんですね。

POINT

高齢夫婦世帯への災害時避難に関する助言を問う問題。災害対策は『発災してから』ではなく『平時から備える』のが原則であり、本人たちが今すぐ実行可能で自助力を高める内容を選ぶことがカギ。

解答・解説

正解は1です

問題文:Aさんが「2人とも高齢なので、災害が起こった時に避難できるかどうか心配です」と話があった。 訪問看護師によるAさんへの説明で適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。災害対策の原則は『発災してから動く』のではなく『平時から備える』ことであり、これは防災の自助・共助・公助の考え方の土台になっている。Aさんは要介護1、夫は要支援1の高齢夫婦世帯であり、避難行動要支援者に該当し得る世帯である。歩行能力や持病(心不全・高血圧)を踏まえると、玄関までの動線、段差、家具の転倒リスク、夜間の照明、つまずきやすい敷物などを平時に点検しておくことが、いざというときに安全に屋外避難へつなげるための具体的な第一歩になる。『自宅内の避難経路を点検してください』という助言は、本人たちが今すぐ実行でき、かつ自助力を高める現実的な防災行動であり、訪問看護師の助言として適切である。

選択肢考察

  1. 1.  「自宅内の避難経路を点検してください」

    高齢夫婦世帯では、屋外避難の前段階として『どの動線で玄関まで出るか』『段差や障害物はないか』『非常持ち出し袋をどこに置くか』を平時に整えておくことが重要である。Aさん夫婦は要介護・要支援状態で歩行能力が低下しており、平時の自宅内点検は最も実行可能で効果の高い自助行動となるため、看護師の助言として最も適切である。

  2. ×2.  「訪問看護師は災害が発生したらすぐに誘導します」

    災害時は道路の寸断、停電、訪問看護師自身の被災などにより、平時と同じように訪問できる保証はない。『すぐに駆けつける』という前提の説明は、利用者に過度な依存を生じさせ、結果として避難の遅れを招く恐れがある。災害時の支援は自助・共助・公助の組み合わせで考えるべきであり、医療職一人の駆け付けに依存させる助言は不適切である。

  3. ×3.  「災害が発生してから近くの避難所の場所を確認しましょう」

    避難所や避難経路の確認は、平時にハザードマップや市区町村の防災情報をもとに済ませておくべき事項である。災害発生後は停電や通信障害、混乱で情報収集が困難になり、高齢者にとっては心理的負担も大きい。発災後に初めて避難所を探すという計画は、避難遅延と二次被害のリスクを高めるため不適切である。

  4. ×4.  「災害発生時は長女さんの家族が来てから避難してください」

    長女家族は徒歩15分の距離に住む心強い共助資源であるが、災害時には道路状況や長女家族自身の安全確保もあり、必ずしも到着できるとは限らない。家族の到着を待つことで避難開始が遅れ、津波・浸水・火災などの危険から逃げ遅れる可能性がある。家族支援は事前の連絡手段や合流場所の取り決めと併せて計画しておくべきで、『到着を待ってから』を前提とする説明は適切でない。

防災の基本は自助(自分や家族で備える)・共助(近隣や地域で助け合う)・公助(行政の支援)の組み合わせであり、特に発災直後は自助と共助の比重が大きい。高齢者・障害者など災害時に支援を要する人は『避難行動要支援者』として市町村が名簿を作成し、本人同意のもとで民生委員・自主防災組織・消防などと共有する仕組みがある(災害対策基本法)。看護師は訪問の機会を活用して、(1)市町村のハザードマップで自宅周辺の浸水・土砂災害リスクを確認、(2)指定避難所・福祉避難所の場所と経路を確認、(3)避難行動要支援者名簿への登録状況を確認、(4)非常持ち出し品(内服薬1週間分・お薬手帳・水・食料・懐中電灯・予備の眼鏡・補聴器電池など)の準備、(5)家具固定や避難経路の家屋内整備、(6)家族・近隣との連絡方法と集合場所の取り決め、を一緒にチェックしていく姿勢が求められる。心不全で利尿薬を内服しているAさんでは、避難時に内服薬を持ち出せるかが特に重要なポイントとなる。

高齢夫婦世帯への災害時避難に関する助言を問う問題。災害対策は『発災してから』ではなく『平時から備える』のが原則であり、本人たちが今すぐ実行可能で自助力を高める内容を選ぶことがカギ。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。