StudyNurse

老老介護のSOSを見逃すな!主介護者の腰痛が示す在宅崩壊リスク

看護師国家試験 第115午後92(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後92

状況設定

Aさん(78歳、女性、要介護1)は夫(82歳、要支援1)と2人で暮らしている。 高血圧症と心不全と診断され、降圧薬と利尿薬を内服し、日常生活では呼吸困難の症状はない。 病状管理のために訪問看護を週1回利用している。Aさんは「最近、買い物に行くとすぐに疲れてしまい、重いものが買えない」と話し、訪問看護師の買い物への同行を希望した。Aさんの希望を受けてサービス担当者会議が開催され、訪問介護事業所から訪問看護師に「買い物に同行するときに注意することはありますか」と質問があった。

Aさんの夫は洗濯や簡単な食事の準備、掃除、ゴミ出しをしている。長女家族は徒歩15分くらいのところに住んでおり、週2回訪れている。訪問看護師が訪問すると、夫から「家事をすることには慣れてきたけれど、最近、腰に痛みを感じることがあります」、長女から「両親はお金がかかってもサービスを使いたいと言っています」と話があった。 訪問看護師がAさんについて介護支援専門員と共有する内容で優先されるのはどれか。

  1. 1.経済的な状況
  2. 2.室内の清掃状況
  3. 3.Aさんの夫の体調
  4. 4.Aさんの夫への気持ち

対話形式の解説

博士博士
今回は状況設定問題じゃ。78歳のAさんは要介護1で心不全がある。介護を担っておるのは82歳の夫、しかも夫自身が要支援1という設定じゃな。
サクラサクラ
要介護の妻を、要支援の夫が支えているんですね。なんだか心配な構図です…。
博士博士
そう、この構造を「老老介護」と呼ぶ。今回はその夫が「最近、腰に痛みを感じる」と訴えた場面で、訪問看護師が介護支援専門員に最優先で共有すべき情報は何か、が問われておる。
サクラサクラ
選択肢は「経済的な状況」「室内の清掃状況」「Aさんの夫の体調」「Aさんの夫への気持ち」の4つですね。私は…経済的な状況かな?お金がかかってもサービスを使いたいって言ってますし。
博士博士
ふむ、その気持ちはわかるが、よく読んでごらん。家族はすでに「お金がかかってもサービスを使いたい」と意思表示しておる。つまり経済面はネックではなく、むしろ前向きな姿勢を示しておるのじゃ。
サクラサクラ
あ、本当だ。経済面が障害になっているわけじゃないんですね。
博士博士
その通り。では今この場面で新しく出てきた最も重要な変化は何か?それは「夫が腰に痛みを感じている」という主介護者の身体症状じゃ。これが正解の3「Aさんの夫の体調」なのじゃ。
サクラサクラ
なるほど…でも、腰痛くらいで在宅生活に影響しますか?
博士博士
侮ってはいかん。夫は洗濯・食事準備・掃除・ゴミ出しと、家事のほぼ全てを担っておる。腰痛が悪化すれば家事が止まり、Aさんの食事や清潔保持も滞る。さらに夫自身が動けなくなれば、要介護のAさんが要支援の夫を介護する事態にもなりかねん。
サクラサクラ
主介護者が倒れたら、Aさんの在宅生活そのものが成り立たなくなるんですね。これがいわゆる「共倒れ」ですか。
博士博士
その通り。共倒れを防ぐには、ケアマネジャーが早期に介護負担を察知して、訪問介護の追加や家事援助の拡充、福祉用具の導入などを検討せねばならん。だからこそ、まず共有すべきは夫の体調なのじゃ。
サクラサクラ
室内の清掃状況や夫の気持ちは優先度が下がる理由もわかりました。今この瞬間の介護体制を維持できるかという現実的課題が一番大きいんですね。
博士博士
うむ。看護師は利用者本人だけ見ていてはいかん。家族介護者の健康・睡眠・食欲・自覚症状を継続的にアセスメントし、変化を多職種に伝える役割があるのじゃ。
サクラサクラ
訪問看護師は自宅に上がる職種だから、介護者の小さな変化に気付きやすい立場なんですね。
博士博士
その通り。在宅ケアでは「家族も支援対象」という視点が欠かせん。特に高齢夫婦世帯では、介護者アセスメントが在宅継続の鍵を握るのじゃ。
サクラサクラ
利用者本人のケアと、介護者のケア、両方を意識して情報共有することが大切なんですね。よくわかりました!

POINT

高齢夫婦世帯における訪問看護師の役割として、主介護者の健康アセスメントとケアマネジャーへの情報共有の優先順位を問う問題。老老介護における共倒れ防止の視点が解答のカギとなる。

解答・解説

正解は3です

問題文:Aさんの夫は洗濯や簡単な食事の準備、掃除、ゴミ出しをしている。長女家族は徒歩15分くらいのところに住んでおり、週2回訪れている。訪問看護師が訪問すると、夫から「家事をすることには慣れてきたけれど、最近、腰に痛みを感じることがあります」、長女から「両親はお金がかかってもサービスを使いたいと言っています」と話があった。 訪問看護師がAさんについて介護支援専門員と共有する内容で優先されるのはどれか。

解説:正解は 3 です。 Aさん(78歳、要介護1)の主たる介護者は夫(82歳、要支援1)であり、いわゆる老老介護の状態にある。夫自身も要支援認定を受けている高齢者でありながら、洗濯・調理・掃除・ゴミ出しといった生活全般の家事を担っている。その夫が「腰に痛みを感じる」と訴えていることは、介護者の身体機能低下を示すサインであり、放置すれば家事継続が困難になり、Aさんの在宅生活そのものが立ち行かなくなる可能性がある。介護支援専門員(ケアマネジャー)はケアプランの作成・見直しを行う立場にあるため、主介護者である夫の体調変化という情報を最優先で共有し、訪問介護の追加、家事援助の見直し、福祉用具の導入など、介護負担軽減策を検討してもらう必要がある。

選択肢考察

  1. ×1.  経済的な状況

    サービス利用計画を立てる際、自己負担額の検討は確かに必要な視点である。しかし夫自身が「お金がかかってもサービスを使いたい」と意思表示しており、経済面の不安よりもサービス導入への前向きな姿勢が示されている。この場面で最優先となる情報ではない。

  2. ×2.  室内の清掃状況

    住環境のアセスメントは在宅療養支援に欠かせないが、設問で問われているのはこの時点で生じている新たな変化のうち最も優先度の高い情報である。清掃状況は喫緊の課題として記述されておらず、優先順位は下がる。

  3. 3.  Aさんの夫の体調

    主介護者である夫が腰痛を訴えていることは、在宅介護の継続可能性を左右する重大な情報である。高齢の要支援者が介護を担う老老介護では、介護者の健康破綻が共倒れに直結する。介護支援専門員がケアプランの修正やサービス追加を判断するためにも、まず共有すべきは夫の体調変化である。

  4. ×4.  Aさんの夫への気持ち

    夫婦間の心理的関係性も支援計画上は重要だが、現時点で具体的に表面化しているのは夫の身体的負担と家事継続への不安である。情緒面の情報よりも、介護体制を維持するために必要な身体機能上の変化を優先して共有すべきである。

高齢夫婦のみの世帯における介護では、主介護者自身が高齢で身体機能に余裕がない「老老介護」となるケースが増えている。主介護者が体調を崩すと、被介護者の生活全体が一気に破綻する「共倒れ」のリスクがある。訪問看護師は利用者本人の状態だけでなく、家族介護者の健康状態・睡眠・食事・腰痛や関節痛などの自覚症状・介護負担感を継続的にアセスメントし、変化があれば速やかに介護支援専門員へ報告して、ケアプラン見直しや家事援助・福祉用具の追加につなげる役割を担う。多職種連携の中でも、介護者の健康情報を最も身近にキャッチできるのは訪問看護師であることを意識したい。

高齢夫婦世帯における訪問看護師の役割として、主介護者の健康アセスメントとケアマネジャーへの情報共有の優先順位を問う問題。老老介護における共倒れ防止の視点が解答のカギとなる。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。