若い女性のバセドウ病、不安に寄り添う一言は?人生設計まで支える看護の視点
看護師国家試験 第115回 午後 第99問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(21歳、女性、大学生)は半年ほど前から疲れやすさを自覚していた。その後、夜間にも息切れと動悸が出現するようになり、1か月前から所属するテニスサークルを休んでいる。数日前からは手が震えるようになり、学業にも支障が出てきた。頻脈に汗が出ると自覚しており、母親から「首が腫れている」と指摘され受診した。受診時は、身長160cm、体重44kgで半年前から6kg減少していた。体温37.5℃、呼吸数22/分、脈拍132/分、血圧152/70mmHgであった。
2週後の外来受診でAさんは「Basedow〈バセドウ〉病を知るほどに怖くなってきた。眼が出ることもあるって。最近、足がつることが多くてテニスもできていない。就職が決まったけど働くことができるのかしら。将来、結婚したり妊娠したりできるのか心配」と思いを訴えた。 看護師の返答で適切なのはどれか。
- 1.「自己嫌悪が必要です」
- 2.「眼が出ることはありません」
- 3.「妊娠、出産は避けてください」
- 4.「症状が落ちつけば運動もできます」
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
Basedow病に伴う多面的な不安(眼症・運動・就労・結婚・妊娠)を抱える若年女性への返答として、不安を否定せず、治療継続により生活の幅が回復することを現実的に伝える共感的対応を選べるかが問われている。
解答・解説
正解は4です
問題文:2週後の外来受診でAさんは「Basedow〈バセドウ〉病を知るほどに怖くなってきた。眼が出ることもあるって。最近、足がつることが多くてテニスもできていない。就職が決まったけど働くことができるのかしら。将来、結婚したり妊娠したりできるのか心配」と思いを訴えた。 看護師の返答で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。 Aさんは21歳の女性で、就職・結婚・妊娠という人生の節目を控えた時期にBasedow病と診断され、眼症の出現、筋痙攣(足がつる)、就労継続への不安、将来の妊娠出産への懸念など、複合的な不安を表出している。 この場面で看護師に求められるのは、不安を頭ごなしに否定したり、過度に制限を強いたりすることではなく、まずは思いを受け止めたうえで、適切な治療継続によって生活の幅が再び広がるという現実的かつ前向きな見通しを伝えることである。 Basedow病は抗甲状腺薬による継続治療や放射性ヨウ素内用療法・手術などにより長期的なコントロールが十分可能な疾患であり、症状が安定すれば学業・就労・運動・妊娠・出産・授乳もそれぞれ調整しながら行える。 「症状が落ちつけば運動もできます」という返答は、現状を共有しつつ将来の可能性を具体的に示すものであり、患者の不安に寄り添う共感的かつ建設的な対応として最も適切である。
選択肢考察
- ×1. 「自己嫌悪が必要です」
患者の不安に対して自己否定や自責を促す言葉かけは、心理的な負担をさらに増やし、治療意欲を損ねかねない。看護では、不安や恐れを表出したことを肯定的に受け止め、共に整理する姿勢が基本であり、この返答は受容・共感の原則からも逸脱している。
- ×2. 「眼が出ることはありません」
Basedow病では甲状腺眼症(上眼瞼後退、眼球突出、複視、眼球運動障害、視神経症など)を合併することがあり、TRAb高値や喫煙が増悪因子として知られている。眼症は必ず生じるものではないが「絶対に起こらない」と断言することは医学的に不正確で、誤った安心を与え、早期発見の機会を奪う恐れがある。可能性と観察すべき症状、必要時の眼科受診を含めて説明するのが望ましい。
- ×3. 「妊娠、出産は避けてください」
Basedow病があっても、甲状腺機能が安定していれば妊娠・出産は可能である。妊娠初期は催奇形性の少ないプロピルチオウラシル(PTU)、妊娠中期以降は胎盤通過の少ない薬剤への切り替えなど、薬剤調整を行いながら管理する。授乳中もチアマゾール(MMI)少量やPTUの服用は通常可能とされる。一律に妊娠を避けるよう伝えることは、将来設計を奪う不適切な指導であり、必要なのは妊娠前カウンセリングと内分泌科・産科連携による継続支援である。
- ○4. 「症状が落ちつけば運動もできます」
現在のAさんは脈拍132/分、体重減少、振戦、筋痙攣、易疲労感が強く、運動は控えるべき時期である。しかし抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンが基準値に近づけば、循環動態や筋症状は改善し、テニスサークルなどの活動再開も見込める。患者の不安を受け止めつつ、治療継続による将来の生活回復という具体的見通しを示す本選択肢は、共感と現実的情報提供のバランスがとれた最も適切な返答である。
Basedow病は自己抗体(TRAb)が甲状腺TSH受容体を刺激することで甲状腺ホルモンが過剰産生される疾患で、20〜40代女性に好発する。治療は①抗甲状腺薬(MMI・PTU)、②放射性ヨウ素内用療法(131I)、③甲状腺亜全摘術の3本柱で、いずれも長期的に良好なコントロールが可能である。甲状腺眼症は本疾患の約30〜50%に何らかの形で合併するが、禁煙や血中ホルモン安定化、ステロイドや眼窩減圧術などで対応できる。妊娠希望時はTRAbと甲状腺機能を評価し、PTUを第一選択とする時期や薬剤切り替えを内分泌医と相談する。若年女性患者では「治療しながらの就労」「妊娠・出産・授乳」「学業や運動の継続」が大きな関心事となるため、看護師は心理的支援と具体的な生活情報の両面から関わることが重要である。就労支援では合理的配慮(休憩や勤務調整)の活用、外来通院継続のための職場との情報共有なども助言の対象となる。
Basedow病に伴う多面的な不安(眼症・運動・就労・結婚・妊娠)を抱える若年女性への返答として、不安を否定せず、治療継続により生活の幅が回復することを現実的に伝える共感的対応を選べるかが問われている。
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