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片麻痺の高齢者の排泄支援は『代替』より『安全な自立』が基本

看護師国家試験 第115午前58

国試問題にチャレンジ

115午前58

Aさん(70歳)は脳梗塞の後遺症で片麻痺があり、要支援2と認定された。杖で歩行しており、尿意はある。…Aさんの排泄に関する支援で適切なのはどれか。

  1. 1.一定の時間間隔で排尿誘導を行う。
  2. 2.ベッドサイドにポータブルトイレを設置する。
  3. 3.トイレの場所がわかりやすいように目印をつける。
  4. 4.トイレ移動時は滑り止めのついた靴を履くように指導する。

対話形式の解説

博士博士
今日は要支援2、片麻痺のAさん70歳の排泄支援を考えるぞ。まずどんな状態の方かを丁寧に読み解くのが大事じゃ。
サクラサクラ
脳梗塞の後遺症で片麻痺、杖で歩いている、尿意もある…って書いてありますね。けっこう自立度は高そう。
博士博士
そう、ポイントは『尿意あり』と『杖歩行可』の2つじゃ。この情報があるかないかで、選ぶべき支援は大きく変わるのじゃよ。
サクラサクラ
えーっと、片麻痺だしポータブルトイレをベッドサイドに置いてあげるのが親切かなって思ったんですけど…ダメですか?
博士博士
優しさは伝わるが、それは『歩ける人の足をうばう』ことになりかねん。歩行能力は使わないとどんどん落ちる。廃用症候群を進めてしまうのじゃ。
サクラサクラ
あー、確かに。せっかくトイレまで歩けるのに、ベッド横で済ませちゃうと筋力もバランスも落ちますね。
博士博士
その通り。介護の原則は『できることは本人にやってもらう』じゃ。じゃあ次、時間で区切って排尿誘導するのはどうじゃ?
サクラサクラ
Aさんは尿意があるから…自分で訴えられますもんね。時間誘導は認知症などで尿意を訴えにくい人向けですか?
博士博士
ご名答。尿意がある人に機械的に時間誘導すると、自尊心も損なうし、本人のペースを乱す。次、トイレに目印は?
サクラサクラ
これも認知症で場所がわからない人向けですよね。Aさんはそういう情報がないから、優先度は下がる…って考えていいですか?
博士博士
うむ、状況設定問題では『書かれていない情報は基本的に問題にしない』のがコツじゃ。さて、残るは滑り止めの靴。これが正解じゃな。
サクラサクラ
片麻痺だと、麻痺側の足で踏ん張りが効きにくいから、滑ったときに踏みとどまれなくて転倒しやすい、ということですね。
博士博士
その通り。特に夜間のトイレ移動は高齢者の転倒・大腿骨頸部骨折の頻発場面じゃ。滑り止めの靴は本人の歩行を活かしつつ安全性を高める、最高にコスパのよい支援なのじゃ。
サクラサクラ
ちなみに、要支援2だと住宅改修や福祉用具のサービスも使えるんですよね?
博士博士
よく覚えておるな。介護保険の住宅改修費は最大20万円まで支給対象で、手すり設置、段差解消、滑り防止床材への変更などに使える。L字型手すりをトイレに付けるだけで転倒リスクは大きく下がるぞ。
サクラサクラ
靴だけじゃなくて、住環境ぜんぶで支えていく視点が大切なんですね。
博士博士
その通り。排泄支援は『尊厳+安全+自立』の三本柱で考える。今日のAさんのように尿意も歩行も保たれている人には、代替手段に飛びつかず『安全に歩ける環境』を整えるのが正解じゃ。

POINT

片麻痺・要支援2で杖歩行・尿意ありというAさんの残存機能を踏まえ、自立した排泄行動を尊重しつつ転倒予防を最優先する援助を選ぶ問題。代替手段に頼る前に、安全な歩行環境を整える視点が問われている。

解答・解説

正解は4です

問題文:Aさん(70歳)は脳梗塞の後遺症で片麻痺があり、要支援2と認定された。杖で歩行しており、尿意はある。…Aさんの排泄に関する支援で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。Aさんは70歳・脳梗塞後遺症による片麻痺をもち、要支援2と認定された状態にある。尿意は保たれ、杖を使って歩行できるため、排泄の自立度は比較的高い一方で、片麻痺による歩行時のバランス障害や麻痺側の支持性低下により、転倒・転落リスクは大きい。排泄支援の原則は『自立を尊重し、できる動作は本人に行ってもらいながら、安全を確保する』ことであり、本人が自らトイレへ歩いていける環境を維持しつつ転倒予防策を講じることが最優先となる。滑り止めのついた靴は、フローリングや浴室前など滑りやすい床面で足元が滑るのを防ぎ、片麻痺患者の歩行・方向転換時の転倒予防に直結する具体的な支援として最も適切である。

選択肢考察

  1. ×1.  一定の時間間隔で排尿誘導を行う。

    時間排尿誘導は、認知症などで尿意を訴えにくい人や、失禁を繰り返す人に対して行う排泄ケアの手法である。Aさんは尿意がはっきりとあるため、本人の訴えに応じてトイレへ誘導するのが基本であり、時間で区切って機械的に誘導する必要はない。むしろ自尊心を損ない、自立した排泄行動を妨げる可能性がある。

  2. ×2.  ベッドサイドにポータブルトイレを設置する。

    ポータブルトイレは、トイレまでの歩行が困難で間に合わない人や、夜間転倒リスクが極めて高い人に検討される。Aさんは杖歩行が可能で尿意も保たれているため、最初からポータブルトイレを設置すると、せっかく残っている歩行能力(廃用予防)や尊厳ある排泄が損なわれる。残存機能を活かす視点からも優先度は低い。

  3. ×3.  トイレの場所がわかりやすいように目印をつける。

    トイレの場所を示す目印やサイン表示は、認知症や見当識障害のためトイレの位置を見つけられない人に有効な環境調整である。問題文ではAさんに認知機能低下を示す情報はなく、片麻痺と要支援2にとどまるため、目印を優先する必要性は低い。

  4. 4.  トイレ移動時は滑り止めのついた靴を履くように指導する。

    片麻痺患者の最大の生活リスクは転倒であり、特に夜間のトイレ移動は転倒・骨折の頻発場面である。滑り止め付きの靴(屋内用シューズなど)は床面との摩擦を確保し、麻痺側の踏ん張りが効きにくい状況でも滑りによる転倒を防ぐ。自立した歩行を支えながら安全を高める、最も実践的かつ侵襲の少ない支援といえる。

高齢の片麻痺患者の排泄支援では、(1)残存機能の活用、(2)転倒予防、(3)プライバシー・尊厳の保持、の3点をバランスよく考える。具体的には、トイレまでの動線上の段差解消、滑りやすいマットの撤去、L字型手すりや縦手すりの設置、人感センサー付き足元灯、麻痺側に注意した便座位置・トイレットペーパーホルダーの配置などが挙げられる。要支援2では介護予防サービスの対象であり、住宅改修費(手すり設置、段差解消、滑り防止床材への変更など最大20万円)や福祉用具貸与・購入の制度を活用できることも押さえておきたい。覚え方は『尿意あり+歩行可=歩いて行ける環境を、安全に整える』。

片麻痺・要支援2で杖歩行・尿意ありというAさんの残存機能を踏まえ、自立した排泄行動を尊重しつつ転倒予防を最優先する援助を選ぶ問題。代替手段に頼る前に、安全な歩行環境を整える視点が問われている。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。