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避難所の89歳Aさん「眠れない・食べられない」 看護師がまずすべきことは?

看護師国家試験 第115午前59

国試問題にチャレンジ

115午前59

避難所生活の高齢者Aさん(89歳)…「食欲がない。眠れない」…看護師の対応で優先度が高いのはどれか。

  1. 1.頑張るように言葉をかける。
  2. 2.直ちに入院できる病院を探す。
  3. 3.軽い運動ができるように環境を整える。
  4. 4.睡眠薬の処方について医師と相談する。

対話形式の解説

博士博士
今日は災害看護の問題じゃ。89歳のAさんが避難所で「食欲がない、眠れない」と訴えておる。さて、看護師として優先すべき対応は何じゃろう?
サクラサクラ
うーん、眠れないなら睡眠薬を医師と相談するのが早そうですけど…違うんですか?
博士博士
気持ちはわかるが、それは慎重に考える必要があるぞ。高齢者にベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使うと、ふらつき・転倒・せん妄・翌朝の眠気が出やすい。避難所のような慣れない場所では特にリスクが高いのじゃ。
サクラサクラ
あ、確かに。夜中にトイレに行こうとして転んだら大変ですね。じゃあ「頑張って」と励ますのは?
博士博士
それも不適切じゃ。被災して心身ともに疲れきっている高齢者に精神論を押し付けるのは逆効果になる。共感的に話を聴くことは大事じゃが、それは「対応の選択肢」ではなく当然の前提じゃな。
サクラサクラ
入院も大げさですよね…。残るのは「軽い運動ができる環境を整える」ですけど、なぜこれが優先なんですか?
博士博士
ここがポイントじゃ。避難所では座ったり横になったりする時間がほとんどになる。これが「生活不活発病」、つまり廃用症候群を引き起こすのじゃ。新潟県中越地震のときに大きな問題になった概念じゃよ。
サクラサクラ
廃用症候群って、寝たきりで筋力が落ちるイメージですけど、それだけじゃないんですか?
博士博士
ずっと幅広いぞ。筋力低下、関節拘縮、起立性低血圧、下肢の深部静脈血栓症〈DVT〉、便秘、食欲低下、不眠、抑うつ、認知機能低下…全身に及ぶ。高齢者では数日で進むのが恐ろしいところじゃ。
サクラサクラ
Aさんの「食欲がない・眠れない」自体が、もう廃用の入り口になってるってことですね。
博士博士
その通り!日中動かない→お腹が空かない→食べない→体力が落ちる→夜も眠れない、という悪循環じゃ。だから根本対策は「日中の活動量を確保する」ことになる。
サクラサクラ
具体的にはどんな運動がいいんですか?
博士博士
ラジオ体操、椅子に座っての足首の底背屈、通路を少し歩く、深呼吸などじゃ。特に足首運動はDVT予防にも直結する。エコノミークラス症候群じゃな。水分摂取もセットで促すこと。
サクラサクラ
あと、日光に当たることも大事って聞きました。
博士博士
ええところに気付いたな。朝の光は体内時計をリセットして、夜の自然な眠気を作り出す。睡眠薬に頼らずに不眠を改善する基本じゃ。これを睡眠衛生指導という。
サクラサクラ
看護師って薬を出すだけじゃなく、生活そのものを整える支援が役割なんですね。
博士博士
その通りじゃ。災害時はとくに、限られた資源の中で「いま避難所でできる工夫」を考える力が問われる。災害時要配慮者への目配りも忘れずにな。

POINT

災害時の避難所における高齢者の不眠・食欲不振に対し、廃用症候群予防の観点から最も優先される非薬物的・生活環境調整的介入を選ぶ問題。

解答・解説

正解は3です

問題文:避難所生活の高齢者Aさん(89歳)…「食欲がない。眠れない」…看護師の対応で優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 3 です。災害時の避難所生活では、活動の場が極端に狭まり、座位や臥位で過ごす時間が長くなりがちです。とくに89歳という超高齢のAさんでは、こうした活動低下が短期間で廃用症候群(筋力低下、関節拘縮、起立性低血圧、下肢深部静脈血栓症〈DVT〉、便秘、認知機能低下、抑うつなど)を引き起こし、結果として食欲不振や不眠をさらに悪化させる悪循環に陥りやすくなります。「食欲がない・眠れない」という訴えの背景には、慣れない環境によるストレスに加え、日中の活動量低下による空腹感の欠如、日光暴露不足による概日リズムの乱れがあると考えられます。そのため、まずは避難所内で安全に行える軽い体操や歩行などの運動環境を整え、日中の活動量を確保することが、食欲・睡眠・廃用予防の3点をまとめて改善する根本的な支援となります。

選択肢考察

  1. ×1.  頑張るように言葉をかける。

    精神論的な激励は、被災で心身ともに疲弊している高齢者に対しては逆効果となり得る。共感的傾聴は重要だが、不眠・食欲不振・活動低下という具体的な問題に対する直接的な解決策にはならず、優先度は低い。

  2. ×2.  直ちに入院できる病院を探す。

    現時点で意識障害、脱水、バイタルサインの異常など重篤な所見は示されておらず、入院適応とはいえない。災害時医療資源は限られており、入院が必要な重症者に優先配分すべき。まずは避難所内で実施可能な健康維持策を講じるのが原則。

  3. 3.  軽い運動ができるように環境を整える。

    避難所での不動は廃用症候群、DVT(エコノミークラス症候群)、便秘、睡眠覚醒リズムの乱れを招く。ラジオ体操、ストレッチ、通路を歩く程度の軽運動を促せる空間や声かけ体制を整えることで、食欲増進・入眠促進・廃用予防が同時に図れる。89歳の高齢者にも適切な優先度の高い介入。

  4. ×4.  睡眠薬の処方について医師と相談する。

    高齢者への睡眠薬は転倒・せん妄・呼吸抑制のリスクがあり、避難所という慣れない環境ではとくに有害事象が起きやすい。まずは活動量確保、日光浴、日中の覚醒維持といった非薬物的な睡眠衛生指導を優先し、それでも改善しない場合に薬物療法を検討する。

災害時の高齢者支援では「生活不活発病(廃用症候群)」の予防が最重要課題の一つ。新潟県中越地震や東日本大震災を機に概念化され、災害発生から数日〜数週間で急速に進行することが知られている。具体的な対策としては、(1)日中は座位より立位・歩行を増やす、(2)1〜2時間ごとに足首の底背屈運動を行いDVTを予防する、(3)十分な水分摂取(脱水もDVTリスク)、(4)日光に当たり概日リズムを整える、(5)役割を持たせて社会的活動性を保つ、などがある。また避難所アセスメントでは、災害時要配慮者(高齢者・障害者・妊産婦・乳幼児・外国人など)への配慮、低体温・熱中症・感染症・ノロウイルス等の集団感染対策、心理的ケア(PTSD・抑うつ)も同時に視野に入れる必要がある。

災害時の避難所における高齢者の不眠・食欲不振に対し、廃用症候群予防の観点から最も優先される非薬物的・生活環境調整的介入を選ぶ問題。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。