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訪室の優先順位はどう決める?小児病棟で命と組織を守る看護判断

看護師国家試験 第115午前70

国試問題にチャレンジ

115午前70

小児入院患者の訪室優先順位が高いのはどれか。

  1. 1.胃腸炎の3歳児、抱っこ中に嘔吐。
  2. 2.化学療法中の7歳児、点滴刺入部が腫れた。
  3. 3.急性肺炎の2歳児、抗菌薬点滴が終了。
  4. 4.鼠径ヘルニア術後の1歳児、ヘパリンロック中の留置針が抜けたが出血なし。

対話形式の解説

博士博士
今回は小児入院患者の訪室優先順位を考える問題じゃ。看護師の現場感覚が問われる良問じゃよ。
サクラサクラ
4人の小児が同時に呼んでいる状況ですよね…どこから行くか迷います。
博士博士
優先順位の鉄則は3つ。①生命の危険度、②不可逆性、③時間的猶予、この3軸で考えるのじゃ。
サクラサクラ
生命の危険度はわかります。気道・呼吸・循環ですね。でも「不可逆性」って?
博士博士
時間が経つほど取り返しがつかなくなる病態のことじゃ。今回の正解、化学療法中の刺入部腫脹がまさにそれじゃよ。
サクラサクラ
抗がん薬の血管外漏出(extravasation)ですね。漏れるとどうなるんですか?
博士博士
ビンクリスチンやドキソルビシン、マイトマイシンCなどは起壊死性抗がん薬と呼ばれていて、皮下に漏れると紅斑→水疱→潰瘍→組織壊死と進み、皮膚移植が必要になる例もある。
サクラサクラ
怖いですね…。発見したらまず何をすればいいですか?
博士博士
対応の順序は決まっておる。①点滴を即時停止 ②抜針せずルート内残液を吸引 ③抜針 ④薬剤に応じて冷罨法または温罨法 ⑤医師へ報告し解毒薬を準備 ⑥写真と記録じゃ。
サクラサクラ
冷やすか温めるかは薬で違うんですか?
博士博士
そうじゃ。多くの抗がん薬は冷罨法で薬剤の拡散を抑えるが、ビンカアルカロイド系(ビンクリスチンなど)やオキサリプラチンは逆に温罨法で吸収を促すのが推奨されておる。覚え方は「ビンカは温める」じゃな。
サクラサクラ
他の選択肢も整理したいです。嘔吐の3歳児はどうですか?
博士博士
誤嚥や脱水のリスクはあるが、抱っこ中なら家族が体位を整えやすい。バイタルや皮膚緊張の評価は必要じゃが、不可逆的な障害が進む状況ではない。
サクラサクラ
抗菌薬点滴が終了した2歳児は?
博士博士
薬剤はすでに投与済みで、終了直後に急変するリスクは低い。抜針と観察は必要じゃが、優先度は相対的に下がる。
サクラサクラ
ヘパリンロック中の留置針が抜けた1歳児は出血もないですし、再確保すれば大丈夫そうですね。
博士博士
その通り。ヘパリンロック中は輸液が走っていないので漏出による組織障害は起こらない。次の投与スケジュールに合わせて計画的に再確保すれば良いのじゃ。
サクラサクラ
小児の化学療法って、末梢静脈で行うのは難しそうですね。
博士博士
鋭いところに気づいたな。実際、長期化学療法が見込まれる小児ではCVポートや中心静脈カテーテルの留置が推奨されておる。末梢では血管が細く動きも多いため、漏出リスクが格段に高いのじゃ。
サクラサクラ
看護師としては、どんなタイミングで刺入部を観察するべきですか?
博士博士
投与開始時、開始30分後、その後は1時間ごとが目安。発赤・腫脹・疼痛・滴下不良・自然血液逆流の消失などをチェックする。小児は痛みを言葉にできない子も多いから、表情や仕草の変化も大切なサインじゃ。

POINT

複数の小児入院患者のなかから「最も早く訪室すべき患者」を選ぶトリアージ問題。抗がん薬の血管外漏出は不可逆的な組織壊死を招くため、他の選択肢に比べて時間的余裕がなく最優先で対応する必要がある。

解答・解説

正解は2です

問題文:小児入院患者の訪室優先順位が高いのはどれか。

解説:正解は 2 です。化学療法中の小児で点滴刺入部が腫脹しているという状況は、抗がん薬の血管外漏出(extravasation)を強く疑う所見です。抗がん薬の多くは起壊死性(vesicant)または起炎症性(irritant)の性質を持ち、ビンクリスチンやドキソルビシン、マイトマイシンCなどが血管外へ漏れると、皮下組織の壊死や潰瘍を引き起こし、最悪の場合は皮膚移植や植皮術が必要になることがあります。組織障害は時間とともに不可逆的に進行するため、看護師は直ちに訪室し、輸液の即時停止、ルート内残液の吸引、医師への報告、薬剤の種類に応じた冷罨法・温罨法の選択、ステロイドや解毒薬の局所投与準備など、一連の対応を速やかに行う必要があります。トリアージの原則である「生命の危険度」「不可逆性」「時間的猶予」のうち、不可逆的な組織壊死を防ぐという観点で最優先となります。

選択肢考察

  1. ×1.  胃腸炎の3歳児、抱っこ中に嘔吐。

    嘔吐物による誤嚥や脱水の評価は重要だが、抱っこ中であれば家族が体位を整えやすく窒息の即時リスクは比較的低い。バイタルサインや皮膚緊張、尿量などの評価は必要だが、抗がん薬の血管外漏出のように時間経過で不可逆的な組織障害が進む状況ではないため、選択肢2より優先度は下がる。

  2. 2.  化学療法中の7歳児、点滴刺入部が腫れた。

    刺入部の腫脹は抗がん薬の血管外漏出を強く示唆する所見。起壊死性抗がん薬(ビンクリスチン、ドキソルビシン、マイトマイシンCなど)が皮下に漏出すると、紅斑・水疱形成を経て皮膚潰瘍や組織壊死に進展し、皮膚移植が必要となる場合もある。直ちに輸液を停止し、ルート内残液を吸引、医師へ報告のうえ薬剤に応じた冷罨法・温罨法や解毒薬の投与を行う必要があり、訪室優先順位は最も高い。

  3. ×3.  急性肺炎の2歳児、抗菌薬点滴が終了。

    点滴終了後は抜針・止血・刺入部の観察・記録などの対応が必要だが、薬液はすでに体内に投与済みで、終了直後に急変するリスクは相対的に低い。終了後アラームの確認や次回投与時間の管理は重要だが、生命の危険度・不可逆性の観点では選択肢2に劣る。

  4. ×4.  鼠径ヘルニア術後の1歳児、ヘパリンロック中の留置針が抜けたが出血なし。

    ヘパリンロック中は輸液は持続していないため、薬液漏出による組織障害は起こらない。出血もないことから即時の止血処置は不要であり、再確保は術後の輸液・抗菌薬投与スケジュールに合わせて計画的に行えばよい。バイタルサインが安定していれば緊急性は低く、選択肢2より優先度は下がる。

小児の化学療法は末梢静脈ルートでは血管が細く漏出リスクが高いため、長期投与が見込まれる症例ではCVポートや中心静脈カテーテル(CVC)の留置が推奨される。血管外漏出時の対応手順は「①投与即時停止 ②抜針せずルート内残液を吸引 ③抜針 ④薬剤に応じた冷罨法(多くの抗がん薬)または温罨法(ビンカアルカロイド系、オキサリプラチンなど)⑤医師報告と解毒薬投与 ⑥写真記録と経時観察」が基本。また、訪室優先順位の判断では、①生命の危険度(気道・呼吸・循環の異常)②不可逆性(時間経過で取り返しがつかなくなるか)③時間的猶予(待てるか)を総合評価する。小児では訴えが乏しく観察が頼りになるため、ルート刺入部・呼吸状態・意識レベルのチェックを常に意識したい。

複数の小児入院患者のなかから「最も早く訪室すべき患者」を選ぶトリアージ問題。抗がん薬の血管外漏出は不可逆的な組織壊死を招くため、他の選択肢に比べて時間的余裕がなく最優先で対応する必要がある。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。