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キューブラー・ロスの死の受容5段階を完全攻略!「取引」段階の見抜き方

看護師国家試験 第115午前82

国試問題にチャレンジ

115午前82

キューブラー・ロス, E.による死にゆく人の心理過程のなかで、肺癌と診断された人が、喫煙をやめることで病気をなかったことにできるのではないかと考える段階はどれか。

  1. 1.怒り
  2. 2.受容
  3. 3.取引
  4. 4.否認
  5. 5.抑うつ

対話形式の解説

博士博士
今日は終末期看護の超頻出テーマ、キューブラー・ロスの5段階説について深掘りするぞ。第115回午前82で問われた「取引」の段階、しっかり理解しているかな?
サクラサクラ
はい!否認・怒り・取引・抑うつ・受容の5つですよね。でも「取引」って言葉だけだとイメージしにくくて……。
博士博士
そこが大事なポイントじゃ。問題文を見てみよう。「喫煙をやめることで病気をなかったことにできるのではないか」と考える段階はどれか、というものじゃ。
サクラサクラ
えーと、自分の行動を変えることで病気を治そう、と考えているわけですよね。これって希望を持っているから「受容」とは違うし……「取引」でしょうか?
博士博士
その通り!正解は3の「取引」じゃ。「取引」とは、神様や運命、医療者に対して「〇〇するから助けてほしい」と心の中で条件提示をする段階のことなんじゃ。「タバコをやめるから治して」「孫の結婚式まで生かして」といった具合にな。
サクラサクラ
なるほど!じゃあ他の選択肢はどう違うんですか?
博士博士
まず「否認」は最初の段階で、「そんなはずはない、診断が間違いだ」と現実そのものを認めない状態じゃ。次の「怒り」は、「なぜ自分が」と周囲にその感情をぶつける段階。「取引」がうまくいかないと「抑うつ」へ進み、深い悲しみや無力感に支配される。そして最後に「受容」、静かに死を受け入れる段階に至るんじゃ。
サクラサクラ
順番にも意味があるんですね。でも、必ずこの順番で進むんですか?
博士博士
良い質問じゃ!実はキューブラー・ロス自身も後年強調しておるが、5段階は必ずしも順序通り直線的に進むわけではない。行きつ戻りつしたり、すべての段階を経験しない患者もおる。看護師は「今この患者はどの段階にいるか」をアセスメントして、その段階に合わせた関わり方をするのが大切なんじゃ。
サクラサクラ
段階に応じた関わり方というと、具体的にはどうすればいいんでしょう?
博士博士
たとえば「怒り」の段階では感情を否定せず受け止める、「取引」の段階では希望を頭ごなしに否定せず傾聴する、「抑うつ」の段階では無理に励まさず沈黙を共有する、といった姿勢が基本じゃ。「受容」段階では静かに寄り添うこともケアになる。
サクラサクラ
覚え方のコツはありますか?
博士博士
「ヒ・ド・トリ・ヨク・ジュ(否・怒・取・抑・受)」と頭文字で覚えると良いぞ。試験では「取引=条件提示で現実を変えようとする」がキーワードじゃ。神頼みや行動変容の約束が出てきたら「取引」と即答できるようにしておこう。
サクラサクラ
わかりました!緩和ケアや遺族ケアでも応用される理論なんですね。臨床でも意識して関わっていきたいです。
博士博士
その意識が何よりじゃ。理論を知っているだけでなく、目の前の患者さんの感情の動きを丁寧に汲み取ることが看護師の専門性じゃからな。

POINT

キューブラー・ロスの死の受容過程5段階のうち「取引」の特徴を問う問題。条件提示によって死や病を回避しようとする心理が「取引」である点を識別できるかがポイント。

解答・解説

正解は3です

問題文:キューブラー・ロス, E.による死にゆく人の心理過程のなかで、肺癌と診断された人が、喫煙をやめることで病気をなかったことにできるのではないかと考える段階はどれか。

解説:正解は「3. 取引」である。アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー・ロス(Elisabeth Kübler-Ross, 1926–2004)は、著書『死ぬ瞬間(On Death and Dying, 1969)』の中で、終末期患者が自らの死を受け入れていく心理過程を「否認(denial)」「怒り(anger)」「取引(bargaining)」「抑うつ(depression)」「受容(acceptance)」の5段階で示した。このうち「取引」の段階は、患者が死という避けがたい現実をどうにかして先延ばしにしたい、あるいはなかったことにしたいという願いから、神や運命、医療者などに対して条件を提示し、「〇〇するから(あるいは〇〇をやめるから)助けてほしい」と心の中で交渉を試みる段階である。設問の「喫煙をやめることで病気をなかったことにできるのではないか」という思考は、自らの行動変容を取引材料として病の進行を回避しようとする典型的な心理であり、まさに「取引」段階に該当する。なお、この5段階は順序通り直線的に進むとは限らず、行きつ戻りつしながら経過したり、すべての段階を経験しない患者もいることが現在では強調されている。

選択肢考察

  1. ×1.  怒り

    「怒り」は否認の段階を過ぎ、自分が死に直面している事実を否定しきれなくなったときに生じる段階である。「なぜ自分が」「どうして今なのか」という強い感情が、家族・医療者・神など周囲に向けられて表出される。設問のように条件提示を伴う思考は含まれないため誤り。

  2. ×2.  受容

    「受容」は5段階の最終段階であり、患者が死という現実を静かに受け入れ、感情の嵐が収まって落ち着いた心境に至る段階である。怒りや抑うつといった激しい感情は鎮静し、残された時間を整理する姿勢が見られる。設問のように病気を回避しようとする心理ではないため誤り。

  3. 3.  取引

    「取引」は、死を避けるために神や超越的存在、あるいは医療者などに対して条件付きで救いを求める段階である。「タバコをやめるから治してほしい」「孫の結婚式まで生かしてほしい」など、自分の行動変容や善行と引き換えに延命や治癒を願う心理が典型である。設問の記述はこの段階の代表的な例であり正解。

  4. ×4.  否認

    「否認」は5段階の最初に現れる段階で、診断や予後告知を受けた際に「そんなはずはない」「何かの間違いだ」と現実そのものを受け入れられず否定する心理である。病気の存在自体を認めないため、行動変容と引き換えに病気を回避するという発想は生じない。よって誤り。

  5. ×5.  抑うつ

    「抑うつ」は取引が功を奏さず、病状が進行して喪失感に包まれる段階である。気力が低下し、深い悲嘆や絶望、無力感が前面に出る。何かをすれば助かるという能動的な希望はすでに失われており、設問の心理とは異なるため誤り。

キューブラー・ロスの5段階説は、終末期医療や緩和ケア、グリーフケア(遺族ケア)の基礎理論として広く用いられている。各段階の覚え方として「否・怒・取・抑・受(ヒ・ド・トリ・ヨク・ジュ)」と頭文字で覚える方法がある。臨床的には、患者ごとに段階の順序や持続期間が異なり、また同じ段階を繰り返し経験することもあるため、看護師は「今この患者はどの段階にいるか」をアセスメントし、段階に応じた共感的コミュニケーションを心がける必要がある。たとえば「怒り」の段階では感情をそのまま受け止め、「取引」の段階では希望を頭ごなしに否定せず傾聴し、「抑うつ」の段階では沈黙を共有する姿勢が重要である。なお、近年は「予期悲嘆(anticipatory grief)」「全人的苦痛(total pain)」など、より多面的に終末期患者の心理を捉えるモデルも併用される。

キューブラー・ロスの死の受容過程5段階のうち「取引」の特徴を問う問題。条件提示によって死や病を回避しようとする心理が「取引」である点を識別できるかがポイント。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。