皮膚疾患の病態と指導
成人看護学 / 皮膚・感覚器・耳鼻
解説
皮膚は体表を覆う最大の臓器であり、外界からの刺激や病原体の侵入を防ぐバリア機能、体温調節、感覚受容、水分保持など多彩な役割を担っています。今回は皮膚の構造と機能の基礎を押さえたうえで、国試で頻出となる代表的な皮膚疾患(帯状疱疹、尋常性乾癬、Raynaud現象)の病態と患者指導について解説します。
皮膚の構造と機能
皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織の3層で構成されています。表皮はさらに下から基底層・有棘層・顆粒層・(手掌や足底にみられる淡明層)・角質層の順に重なります。基底層で生まれた細胞が分化しながら表層へ押し上げられ、最終的に角質となって脱落するというターンオーバー(およそ4〜6週間)が繰り返されています。
皮膚の表面は皮脂腺から分泌される皮脂と汗が混ざってつくられる皮脂膜で覆われており、そのpHは約4.5〜6.0の弱酸性に保たれています。この弱酸性環境が細菌の繁殖を抑え、皮膚のバリア機能を維持しています。アルカリ性の強い石けんで洗いすぎたり、過度な洗浄を行ったりすると皮脂膜が損なわれ、バリア機能が低下します。
汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。エクリン汗腺は全身にほぼ均一に分布し、手掌・足底・額に特に多くみられます。水分の多いさらさらした汗を分泌し、体温調節の主役を担います。一方、アポクリン汗腺は腋窩・外陰部・外耳道・乳輪といった限られた部位に分布する大汗腺で、思春期以降に発達します。分泌物自体は無臭ですが、皮膚常在菌により分解されると特有の体臭の原因となります。
高齢者では皮脂分泌・発汗・角層の水分保持能のいずれも低下し、乾燥や瘙痒が生じやすくなります。また真皮や皮下組織が菲薄化することで、わずかな摩擦やテープ剥離でも皮膚が裂けるスキンテアが起こりやすくなるため、保湿ケアと愛護的なスキンケアが重要となります。
帯状疱疹
帯状疱疹は、幼少期に罹患した水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスである**水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)**が、治癒後も脊髄後根神経節などに潜伏感染し、加齢・疲労・ストレス・免疫力低下などをきっかけに再活性化することで発症する疾患です。したがって帯状疱疹を発症する患者には、必ず水痘罹患の既往があります。
臨床的には、まず神経痛様の前駆痛があり、その後、片側性に一本の知覚神経の支配領域(デルマトーム)に沿って帯状の紅斑と小水疱が出現します。胸背部や顔面(三叉神経領域)に好発します。皮疹出現後72時間以内に抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビル)を開始することが治療の基本で、早期投与により症状の重症化と**帯状疱疹後神経痛(PHN)**の発症リスクを下げることができます。PHNは50歳以上で起こりやすく、皮疹治癒後も長期間痛みが残ります。
注意すべきは、水疱内容にはVZVが含まれており、水痘未罹患者(特に小児や免疫不全者、妊婦)に接触すると水痘を発症させる点です。帯状疱疹そのものが他人に「帯状疱疹」としてうつるわけではなく、初感染では水痘として発症することを理解しておく必要があります。予防として、50歳以上には組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)が推奨されています。
尋常性乾癬
尋常性乾癬は乾癬全体の約9割を占める慢性の炎症性角化症で、境界明瞭な紅斑の上に銀白色の鱗屑が厚く付着するのが典型的な所見です。頭部・肘・膝・腰など機械的刺激を受けやすい部位に好発します。
病態の特徴として、健常皮膚に擦過や圧迫などの刺激が加わると、その部位に新たな乾癬病変が誘発されるケブネル現象があります。このため患者指導では、患部を強くこすらないこと、衣服による摩擦や圧迫を避けることが重要となり、必要に応じて患部を覆って機械的刺激から保護します。
治療にはステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬、紫外線を用いた光線療法、重症例では生物学的製剤が用いられます。飲酒・喫煙・肥満・ストレス・感染などは増悪因子となるため、生活指導として禁煙・節酒・体重管理・ストレス対処を支援します。なお、乾癬は感染症ではないため他人にうつる心配はないことを伝え、患者の不安を軽減することも大切です。
Raynaud現象とその指導
Raynaud(レイノー)現象とは、寒冷刺激や精神的緊張をきっかけに手指や足趾の末梢動脈が一過性に攣縮し、皮膚が蒼白→紫(チアノーゼ)→発赤と三相性に変化し、しびれや疼痛を伴う現象です。強皮症やSLE、混合性結合組織病などの膠原病に伴ってみられることが多く、原因疾患の検索が必要になります。
患者指導の中心は、誘因となる寒冷刺激と精神的ストレスを避けることです。冬場だけでなく夏場の冷房にも注意し、手袋や厚手の靴下を着用して四肢末梢を保温します。洗顔や手洗いには冷水ではなく温水を用いることが重要です。また、末梢血管を収縮させる喫煙やカフェインの過剰摂取は控えるよう指導し、ストレスマネジメントも合わせて行います。薬物療法ではカルシウム拮抗薬が第一選択となります。
まとめ
皮膚の構造と機能の基礎として、表皮の層構造、皮脂膜による弱酸性環境、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の分布の違いを押さえておくことが大切です。代表的な皮膚疾患では、帯状疱疹は水痘罹患後に潜伏したVZVの再活性化で生じること、尋常性乾癬ではケブネル現象を踏まえて摩擦・圧迫を避けるよう指導すること、Raynaud現象では寒冷と緊張を避け温水を用いるなど保温を中心とした生活指導が必要であることを、それぞれ確実に理解しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
皮脂膜により、健常な皮膚表面のpHは約4.5〜6.0のに保たれており、細菌の繁殖を抑えるバリア機能を担っている。
- 2.
表皮は下から基底層・有棘層・顆粒層・(淡明層)・の順に層構造をなしている。
- 3.
全身に分布し体温調節のための水分の多い汗を分泌する汗腺を汗腺といい、腋窩・外陰部・乳輪などに限局して分布する大汗腺を汗腺という。
- 4.
帯状疱疹は、幼少期に罹患したの原因ウイルスであるVZVが神経節に潜伏し、再活性化することで発症する。
- 5.
帯状疱疹の皮疹は片側性に知覚神経の支配領域であるに沿って帯状に出現する。
- 6.
帯状疱疹の治療では、皮疹出現後時間以内に抗ウイルス薬を投与することが望ましい。
- 7.
尋常性乾癬では、機械的刺激により新たな病変が誘発されるがみられるため、患部の摩擦や圧迫を避ける。
- 8.
尋常性乾癬の典型的な皮疹は、境界明瞭な紅斑の上にの鱗屑が付着する。
- 9.
Raynaud現象は寒冷刺激や精神的緊張によって末梢動脈が攣縮し、手指の蒼白化やチアノーゼを生じる現象で、などの膠原病に伴うことが多い。
- 10.
Raynaud現象のある患者では、洗顔の際は冷水ではなくを使用するよう指導する。
