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感染経路の分類と代表疾患

健康支援と社会保障制度 / 感染症対策と予防

解説

今回は感染経路の分類と代表疾患について解説します。感染症が成立するためには病原体、感染源、感受性宿主、そしてそれらをつなぐ感染経路の存在が必要です。看護師は患者をケアするうえで、どのような経路で病原体が伝播するのかを正確に理解し、経路に応じた予防策をとる必要があります。感染経路の整理は国家試験で繰り返し問われる頻出項目です。

水平感染と垂直感染

感染は伝わる方向によって、まず水平感染垂直感染の二つに大別されます。水平感染とは、ヒトからヒト、あるいは動物や環境からヒトへ広がる一般的な感染を指し、後述する接触感染・飛沫感染・空気感染・経口感染・血液媒介感染などが含まれます。

一方の垂直感染は母体から児へと伝わる感染で、母子感染ともいわれます。垂直感染には経胎盤感染、産道感染、母乳感染の三つの経路があります。経胎盤感染は妊娠中に胎盤を介して胎児に感染するもので、風疹ウイルスやトキソプラズマ、サイトメガロウイルスなどが代表例です。産道感染は分娩時に産道で児が病原体に曝露されるもので、B型肝炎ウイルスやHIV、クラミジア、淋菌などがあります。母乳感染ではHTLV-1やHIVなどが伝播します。HIV陽性妊婦では抗ウイルス療法、選択的帝王切開、人工乳哺育を組み合わせて母子感染を大きく減らすことができます。

水平感染の分類

水平感染はさらに、空気感染・飛沫感染・接触感染・経口感染・血液媒介感染・媒介動物(ベクター)感染に分けられます。看護師国試では特に空気感染と飛沫感染、そしてそれぞれの代表疾患を区別できることが重要です。

空気感染

空気感染は飛沫核感染ともよばれ、咳やくしゃみで放出された飛沫が乾燥して直径5μm未満の飛沫核となり、空気中を長時間漂って広範囲に拡散する感染経路です。代表疾患は結核・麻疹・水痘の三つで、この組み合わせは国試の鉄板知識です。空気感染対策としては、医療者はN95マスクを着用し、患者は陰圧個室で管理します。麻疹ウイルスの基本再生産数は12〜18と既知の感染症の中でも最大級で、免疫がなければ同室にいるだけで感染しうるほど強力です。

飛沫感染

飛沫感染は、咳・くしゃみ・会話などで放出される直径5μm以上の飛沫に含まれる病原体が、おおむね1〜2mの至近距離で他者の粘膜に到達して成立する感染です。飛沫は重く、空気中を長く漂わずすぐ落下するため、空気感染のような広範な拡散は起こりません。代表疾患はインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、百日咳、流行性耳下腺炎、風疹、髄膜炎菌感染症などです。マイコプラズマ肺炎は細胞壁を持たない最小の自己増殖性微生物Mycoplasma pneumoniaeが原因で、学童・若年者を中心に発症する飛沫感染症です。飛沫感染対策ではサージカルマスクの着用と1〜2mの距離確保が基本となります。

接触感染

接触感染は、感染者やその周囲環境に直接または間接的に触れることで成立する経路で、MRSA、ノロウイルス、疥癬などが代表です。疥癬はヒゼンダニ(ダニの一種)がヒトの皮膚角質層に寄生して起こる感染症で、皮膚どうしの接触や寝具・衣類を介して伝播します。標準予防策に加え、手指衛生と個人防護具の使用が予防の柱になります。

媒介動物(ベクター)感染と人獣共通感染症

蚊・マダニ・ノミなどの節足動物や、動物そのものを介して感染が広がる経路を媒介動物感染といいます。ヒトと脊椎動物の間で自然に伝播する感染症を人獣共通感染症(ズーノーシス)とよび、世界で約200種類が知られています。蚊が媒介する代表疾患は黄熱、デング熱、ジカ熱、日本脳炎、マラリア、ウエストナイル熱、チクングニア熱です。黄熱は黄熱ウイルスによるもので、流行地への渡航時にはワクチン接種証明(イエローカード)が求められます。マダニ媒介ではSFTS(重症熱性血小板減少症候群)、日本紅斑熱、ライム病、またツツガムシ(ダニの一種)が媒介するツツガムシ病もダニ媒介感染症の代表です。ノミ媒介ではペスト、動物の咬傷では狂犬病、鳥類糞由来ではオウム病などが代表です。

環境からの感染(レジオネラ症)

環境中の水や土壌から感染する経路もあります。レジオネラ肺炎はレジオネラ属菌が循環式浴槽、温泉、加湿器、冷却塔、シャワーなどで増殖し、発生したエアロゾルを吸入することで経気道感染する疾患です。20〜50℃の水温、特に36℃前後で増殖が活発になります。ヒトからヒトへの感染はありません。予防の基本は水温管理(50℃以上または20℃以下)、塩素消毒、バイオフィルム除去です。

まとめ

感染経路は大きく水平感染と垂直感染に分かれ、水平感染はさらに空気・飛沫・接触・経口・血液媒介・ベクター感染に細分されます。空気感染の代表は結核・麻疹・水痘でN95マスクと陰圧個室が必要、飛沫感染はインフルエンザやマイコプラズマ肺炎などでサージカルマスクと1〜2mの距離確保が基本となります。垂直感染には経胎盤・産道・母乳の三経路があり、人獣共通感染症では媒介生物と疾患の組み合わせを整理して覚えることが、国試対策の鍵となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    母体から児へ伝わる感染を感染といい、ヒトからヒトや動物からヒトへ広がる感染を水平感染という。

  2. 2.

    垂直感染の3経路は経胎盤感染・感染・母乳感染である。

  3. 3.

    咳やくしゃみで放出された飛沫が乾燥し、直径5μm未満となって長時間空気中を漂う感染経路を感染(飛沫核感染)という。

  4. 4.

    空気感染を起こす代表的な3疾患は結核・麻疹・である。

  5. 5.

    空気感染対策で医療者が着用すべきマスクはマスクであり、患者は陰圧個室で管理する。

  6. 6.

    咳やくしゃみで放出される直径5μm以上の粒子により、1〜2m以内の至近距離で成立する感染経路を感染という。

  7. 7.

    インフルエンザや百日咳と並ぶ飛沫感染症で、Mycoplasma pneumoniaeを原因とする肺炎を肺炎という。

  8. 8.

    飛沫感染の予防では、医療者はマスクを着用し、患者と1〜2mの距離を確保する。

  9. 9.

    ヒトと脊椎動物の間で自然に伝播する感染症の総称をという。

  10. 10.

    人獣共通感染症のうち蚊が媒介するものとしては、デング熱、ジカ熱、日本脳炎、マラリアのほか、ワクチンで予防可能ながある。

  11. 11.

    循環式浴槽や冷却塔などで増殖した菌が、エアロゾルを介して経気道感染し肺炎を起こす感染症を肺炎という。

  12. 12.

    接触感染の代表疾患である疥癬は、ダニの一種であるが皮膚角質層に寄生して起こる。

  13. 13.

    ダニの一種であるが媒介する人獣共通感染症をツツガムシ病という。

感染経路の分類と代表疾患」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。