標準予防策とPPEの使用
基礎看護学 / 感染対策
解説
標準予防策とは、感染症の有無にかかわらずすべての患者ケアにおいて実施する、感染対策の基本となる考え方です。今回は標準予防策とPPE(個人防護具)の使用について解説します。
標準予防策の基本
標準予防策は米国CDC(疾病対策センター)が提唱した概念で、スタンダードプリコーションともよばれます。すべての患者の血液や体液には感染性があるとみなし、医療従事者と他患者を守るために行います。
感染源として取り扱うものは、①血液、②汗を除くすべての体液(唾液・涙・鼻汁・喀痰・尿・便・嘔吐物・精液・母乳・髄液・胸水・腹水・心嚢液・羊水など)、③分泌物・排泄物、④創のある皮膚、⑤粘膜の5つです。汗のみは感染源から除外されることを必ず覚えておきましょう。
感染経路別予防策
標準予防策に上乗せして行うのが感染経路別予防策で、接触感染・飛沫感染・空気感染の3つに分類されます。
接触感染予防策
MRSAやVRE、クロストリジオイデス・ディフィシルなどが該当します。患者ケア時には手袋とガウンを着用し、できる限り個室管理とします。
飛沫感染予防策
飛沫は粒径5μmを超える水滴で、咳やくしゃみで約1〜2m以内に飛散しますが、空気中に長時間浮遊することはありません。風疹、インフルエンザ、百日咳、流行性耳下腺炎、髄膜炎菌感染症、マイコプラズマ肺炎などが対象で、患者から1〜2m以内に近づく際はサージカルマスクを着用します。
空気感染予防策
飛沫核は5μm以下で、空気中を長時間浮遊し広範囲に拡散します。対象疾患は麻疹・結核・水痘で、語呂合わせ「ま・け・みず」で覚えます。患者は陰圧個室に収容し、医療者はN95マスクを着用します。
PPEの種類と着脱手順
PPE(Personal Protective Equipment、個人防護具)には手袋、ガウン(エプロン)、サージカルマスク/N95マスク、ゴーグル/フェイスシールドなどがあります。
装着順序は、①手指衛生 ②ガウン ③マスク ④ゴーグルまたはフェイスシールド ⑤手袋、の順で行います。手袋の袖口でガウンの袖口を覆うように装着するのがポイントです。
脱衣順序は汚染度の高い順に外していくのが原則で、①手袋 ②ガウン ③ゴーグルまたはフェイスシールド ④マスク、の順で外し、最後に手指衛生を行います。各PPEを外すごとに手指衛生を行うとより安全です。
手指衛生の使い分け
通常は擦式アルコール手指消毒薬で十分ですが、アルコールが効きにくい病原体には流水と石けんによる手洗いが必須です。代表例がクロストリジオイデス・ディフィシルで、芽胞を形成するためアルコールでは死滅しません。手指衛生は流水と石けん、環境消毒は0.05〜0.5%次亜塩素酸ナトリウムで行います。
C.ディフィシル腸炎は抗菌薬使用後に腸内細菌叢が乱れて発症し、毒素A・Bにより偽膜性腸炎を引き起こします。個室隔離とし、専用トイレ・専用物品を使用します。下痢便処理や陰部洗浄の際は、手袋・撥水性長袖ガウン・マスク・眼の防護具をフル装備します。
風疹と予防策
風疹は風疹ウイルスによる飛沫感染症で、発熱・全身の小紅斑・耳介後部や後頸部のリンパ節腫脹を三主徴とします。妊娠初期に感染すると胎児に先天性風疹症候群(白内障・心奇形・難聴)をきたすため、妊婦の曝露を厳重に防ぎます。標準予防策に加えて飛沫感染予防策を行います。
まとめ
標準予防策はすべての患者に適用する基本対策で、汗以外の体液・粘膜・創のある皮膚を感染源として扱います。感染経路別予防策は接触・飛沫・空気の3区分があり、対象疾患と必要なPPEを正確に結びつけることが重要です。PPEは装着時は手指衛生から、脱衣時は汚染度の高い手袋から外し、C.ディフィシルでは流水と石けんによる手洗いを徹底しましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
標準予防策は米国のが提唱した概念で、患者の感染症の有無にかかわらずすべての患者ケアで実施する。
- 2.
標準予防策では血液・分泌物・排泄物・粘膜・創のある皮膚を感染源として扱うが、体液のうちのみは感染源から除外される。
- 3.
飛沫感染の飛沫の粒径はμmを超え、咳やくしゃみで約1〜2m以内に飛散する。対応時にはマスクを着用する。
- 4.
空気感染の飛沫核は5μm以下で長時間浮遊し、対象疾患は語呂合わせ「ま・け・みず」で麻疹・結核・である。医療者はマスクを着用する。
- 5.
PPEの装着順序は、手指衛生→ガウン→マスク→ゴーグル/フェイスシールド→の順である。
- 6.
PPEの脱衣は汚染度の高い順に行い、最初に外すのはで、最後に手指衛生を行う。
- 7.
クロストリジオイデス・ディフィシルはを形成するためアルコール消毒が無効であり、手指衛生はで行う。環境消毒にはを用いる。
- 8.
風疹に妊娠初期の女性が感染すると、児に白内障・心奇形・難聴を主徴とするを生じる可能性がある。
