原始反射と姿勢反射
小児看護学 / 小児の成長・身体発達
解説
今回は原始反射と姿勢反射について解説します。新生児や乳児は、まだ大脳皮質の発達が未熟であるため、意思とは無関係に身体が反応する「反射」によって生命を維持し、運動発達の土台を築いていきます。乳児期に観察される反射は大きく原始反射と姿勢反射の二つに分類され、それぞれ出現時期・消失時期・意義が異なります。看護師国家試験では、反射の名称・出現時期・消失時期、そして原始反射か姿勢反射かの区別が繰り返し問われる頻出領域です。基礎から順に整理していきましょう。
反射とは
反射とは、ある刺激に対して意思とは無関係に起こる、決まった身体反応のことをいいます。乳児期に観察される反射は、主に脳幹や脊髄レベルで制御される無意識の運動であり、大脳皮質の成熟が進むにつれて意識的な運動(随意運動)に置き換わっていきます。
乳児の反射は、出現と消失のパターンから次の二つに大別されます。一つは出生時から認められ、成長とともに消失していく原始反射です。もう一つは発達に伴って新たに出現し、その後生涯にわたって残る**姿勢反射(立ち直り反射・平衡反応など)**です。原始反射の消失と姿勢反射の出現は、中枢神経系が順調に成熟していることを示す重要な指標となります。
原始反射
原始反射は、新生児・乳児に出生時から認められ、脳幹や脊髄レベルで制御される無意識の反射です。大脳皮質が発達するにつれて抑制され、生後数か月から1〜2年ほどで消失します。原始反射が決められた時期を過ぎても残存している場合や、左右非対称である場合は、中枢神経系の発達遅延や脳性麻痺などの神経学的異常を疑う重要な所見となります。
モロー反射
モロー(Moro)反射は、新生児を仰臥位にして頭部を支えた手を急に下げたり、大きな音や急な刺激を与えたりすると出現する反射です。両上肢を左右対称に外転・伸展させて手指を開き、その後ゆっくりと何かを抱え込むように内転・屈曲させる動きを示します。出生時から認められ、生後3〜4か月頃に消失します。左右非対称にみられる場合は分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折を疑う所見となり、消失が遅れる場合は中枢神経系の発達遅延が示唆されます。
把握反射
手掌把握反射は、乳児の手のひらに指などを触れさせると、その指を反射的に握りしめる反射で、出生時から認められ、生後3〜4か月頃に消失します。この反射が消失することで、随意的に物を「つかむ」動作の獲得段階へ移行していきます。足底把握反射は、足底に刺激を与えると足趾が屈曲する反射で、生後9〜12か月頃まで持続します。
吸啜反射と探索反射
吸啜反射は、口の中に乳首や指などが入ると吸い付く反射、**探索反射(ルーティング反射)**は、口の周りを刺激するとその方向に顔を向ける反射です。いずれも哺乳に関わる生命維持の反射で、生後4〜6か月頃に消失します。
緊張性頸反射
緊張性頸反射は、仰臥位で頭を一方に向けると、向けた側の上下肢が伸展し、反対側の上下肢が屈曲する反射です(フェンシング肢位)。生後4〜6か月頃に消失します。
自動歩行反射と踏み直り反射
**自動歩行反射(足踏み反射)**は、新生児の腋を支えて立たせるように床に足を着けると、両足を交互に動かして歩くような動作を示す反射です。出生時から認められ、生後1〜2か月で消失します。
バビンスキー反射
バビンスキー(Babinski)反射は、足底の外側を踵から足趾方向にこすり上げると、母趾が背屈し、他の足趾が扇状に開く反射です。出生時から認められ、生後12〜24か月頃まで持続します。成人で本反射が陽性となる場合は、錐体路障害を示唆する病的所見です。
姿勢反射(立ち直り反射)
姿勢反射は、原始反射とは異なり、出生時には認められず、発達に伴って新たに出現する反射です。身体の傾きや位置の変化に応じて姿勢を保持・修正する働きを持ち、立位・歩行の基盤となります。一度出現すると生涯にわたって残ります。代表的なものにランドー反射とパラシュート反射があります。
ランドー反射
ランドー反射は、乳児を腹臥位で水平に支えると頭部・体幹・下肢を伸展し、頭部を前屈させると体幹・下肢も屈曲する反射です。生後3〜4か月頃に出現し、1〜2歳頃まで認められます。
パラシュート反射
パラシュート反射は、乳児を腹臥位で抱え、頭を急に下方へ落とすように動かすと、落下を防ごうとして両上肢を前方に伸ばす反射です。生後7〜9か月頃に出現し、生涯にわたって残ります。出現が遅れる場合は中枢神経系の発達異常を疑います。
国試で問われる出現・消失時期の整理
国試対策として最重要となるのが、各反射の出現時期と消失時期です。原始反射のうち、特に押さえておきたいのは、自動歩行反射(生後1〜2か月で消失)、モロー反射・手掌把握反射・探索反射が生後3〜4か月で消失、吸啜反射・緊張性頸反射が生後4〜6か月で消失、足底把握反射が生後9〜12か月で消失、バビンスキー反射が生後12〜24か月で消失するという順序です。
姿勢反射では、ランドー反射が生後3〜4か月、パラシュート反射が生後7〜9か月で出現する点を区別して覚える必要があります。「出生時からみられ生後3か月頃に消失する反射」と問われればモロー反射、「生後4か月頃に消失する反射」と問われれば手掌把握反射、「生後10か月の健康な乳児にみられる神経反射」と問われればパラシュート反射(またはランドー反射)が正解となります。
まとめ
乳児期の反射には、出生時から認められて成長とともに消失する原始反射と、発達に伴って出現し生涯残る姿勢反射の二種類があります。原始反射には、モロー反射・把握反射・吸啜反射・探索反射・緊張性頸反射・自動歩行反射・バビンスキー反射などがあり、いずれも中枢神経の成熟とともに消失します。姿勢反射にはランドー反射やパラシュート反射があり、立位・歩行の基盤として機能します。原始反射の消失遅延や姿勢反射の出現遅延は、脳性麻痺など中枢神経系の発達異常を疑う重要なサインとなります。各反射の名称・出現時期・消失時期、そして原始反射か姿勢反射かの分類を確実に押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
新生児を仰臥位にして頭部を急に下げたり大きな音を聞かせたりすると、両上肢を左右対称に外転・伸展させたあと内転・屈曲する原始反射をといい、出生時から認められ生後3〜4か月で消失する。
- 2.
乳児の手のひらに指などを触れさせると反射的に握りしめる反射をといい、生後3〜4か月頃に消失する。
- 3.
足底の外側を踵から足趾方向にこすり上げると母趾が背屈する反射をといい、生後12〜24か月頃まで持続する。
- 4.
出生時に認められ生後1〜2か月で消失する、立たせた状態で両足を交互に動かす反射をという。
- 5.
乳児を腹臥位で抱え頭を急に下方へ落とすように動かすと両上肢を前方に伸ばす姿勢反射をといい、生後か月頃に出現して生涯残る。
- 6.
乳児を腹臥位で水平に支えると頭部・体幹・下肢を伸展する姿勢反射をといい、生後3〜4か月頃に出現する。
- 7.
出生時から認められ成長とともに消失する反射をといい、発達に伴って出現し生涯残る反射を(立ち直り反射)という。
- 8.
原始反射の消失が遅れる場合や左右非対称な場合は、など中枢神経系の発達異常を疑う重要な所見となる。
