StudyNurse

食事介助と誤嚥予防

基礎看護学 / 食事・嚥下・排泄援助

解説

食事は単に栄養を摂取する行為ではなく、生きる楽しみや人とのつながりを支える大切な営みです。しかし加齢や疾患によって飲み込む力が低下すると、食べ物が誤って気管へ入り込み、肺炎を引き起こす危険があります。看護師は嚥下のしくみを正しく理解したうえで、安全に食事を楽しめるよう介助する役割を担います。ここでは食事介助の基本と誤嚥予防の考え方を順に学んでいきましょう。

誤嚥とは何か

誤嚥とは、食物や唾液、胃内容物などが声帯を越えて気管内へ流入してしまう状態をいいます。本来であれば食塊は咽頭から食道へと送られますが、嚥下機能が低下すると気道へ入り込み、これが誤嚥性肺炎の主要な原因となります。高齢者の肺炎の多くがこの誤嚥性肺炎であり、看護における予防の重要性は非常に高いといえます。

嚥下のメカニズム

嚥下は連続した動きですが、理解しやすいように5期モデルで捉えます。食物を認識する先行期、口腔内で咀嚼し食塊を形成する準備期、舌で食塊を咽頭へ送り込む口腔期、嚥下反射により食塊が咽頭を通過する咽頭期、食道の蠕動運動で胃へ運ばれる食道期、の順に進みます。

咽頭期では、喉頭蓋が後屈して喉頭口を覆い、食塊が気道へ侵入するのを防ぎます。この反射が遅れたり弱まったりすると誤嚥が起こりやすくなります。

誤嚥を防ぐ姿勢

顎を上げた頸部伸展位は、咽頭と気管が一直線につながるため最も誤嚥しやすい姿勢です。これを避けることが介助の出発点になります。

基本姿勢として、体幹はしっかりとした座位、あるいは起き上がれない患者では30〜60度のファウラー位をとります。頸部は軽度の前屈位とし、顎を引いておへそを見るような姿勢が理想です。目安として、顎と胸の間に握りこぶし1個分、または指3〜4本分の空間があるとよいとされます。

頸部を前屈させると咽頭と気管の角度が鋭くなって喉頭蓋がかぶさりやすくなり、さらに喉頭蓋谷が広がって食塊が一時的にとどまることで嚥下反射のタイミングが整います。

食事介助の基本手順

まず患者から食事内容がよく見える位置に食器を配置し、視覚的に食欲を刺激しながら自己決定を尊重します。一口量はティースプーン1杯程度を目安とし、多すぎない量で介助します。スプーンは舌の中央に水平に入れ、嚥下を確認してから次の一口を運びます。

水分はそのままでは咽頭へ流れ込む速度が速く誤嚥しやすいため、とろみをつけて粘度を調整します。食後は30分から1時間ほど座位を保ち、胃食道逆流による誤嚥を防ぎます。さらに食前の嚥下体操と食後の口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防に直結する大切なケアです。

介助者は患者と同じ目線か、やや低い位置から介助します。介助者が立ったまま上から介助すると、患者が見上げる形となり顎が上がってしまうためです。

嚥下機能の評価

ベッドサイドで簡便に行える評価として、**反復唾液嚥下テスト(RSST)があります。30秒間に空嚥下が3回以上できれば正常と判断します。冷水3mLを口腔底に注入して評価する改訂水飲みテスト(MWST)も広く用いられます。より詳細な評価が必要な場合には、造影剤入りの食品を用いる嚥下造影検査(VF)**や、内視鏡で観察する嚥下内視鏡検査(VE)が行われます。

食形態の調整

日本摂食嚥下リハビリテーション学会の『嚥下調整食分類2021』では、嚥下訓練食品ゼリーであるコード0jから常食のコード4まで段階的に分類されています。嚥下障害のある患者には、密度が均一でほどよくまとまり、口腔や咽頭に付着しにくい食物が適しており、ゼリーやプリン、ムース、ポタージュ状の食品が選ばれます。

片麻痺患者への配慮

片麻痺のある患者では、健側を下にした側臥位や半座位をとり、健側の口腔へ食物を運びます。麻痺側に食物を入れると感覚低下のため食塊が残留しやすく、誤嚥の危険が高まるためです。

まとめ

誤嚥性肺炎を防ぐ三本柱は、安全な体位、適切な食形態、そして口腔ケアです。看護師は嚥下の生理を理解し、頸部前屈位とファウラー位を基本に、一口量や粘度、食後の体位保持にまで目を配ります。日々の食事介助は、患者の命と尊厳を同時に守る重要な看護実践であることを忘れずに、ていねいに関わっていきましょう。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    食物や唾液が声帯を越えて気管内へ流入することをという。

  2. 2.

    嚥下5期モデルは先行期、準備期、口腔期、、食道期の順に進む。

  3. 3.

    咽頭期ではが後屈して喉頭口を覆い、気道への食塊侵入を防ぐ。

  4. 4.

    食事介助時に顎を上げた頸部伸展位を避け、軽度の頸部位をとる。

  5. 5.

    座位がとれない患者では体幹を30〜60度の位に整える。

  6. 6.

    水分は誤嚥しやすいためをつけて粘度を調整する。

  7. 7.

    食事の一口量の目安は1杯程度である。

  8. 8.

    胃食道逆流による誤嚥を防ぐため、食後30分〜1時間はを保持する。

  9. 9.

    30秒間に空嚥下が3回以上できれば正常と判定する評価法をという。

  10. 10.

    日本摂食嚥下リハビリテーション学会は分類2021において食形態を段階分類している。

食事介助と誤嚥予防」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。