口腔ケアと義歯
基礎看護学 / 食事・嚥下・排泄援助
解説
今回は口腔ケアと義歯の取り扱いについて解説します。口腔ケアは齲歯や歯周病の予防だけでなく、高齢者や臥床患者にとっては命に直結する誤嚥性肺炎の予防として極めて重要なケアです。義歯(入れ歯)の管理も、装着・洗浄・保管の正しい手順を理解しておく必要があります。
口腔ケアの目的
口腔ケアとは、歯・歯肉・舌・粘膜などの口腔内を清潔に保つために行う一連のケアを指します。最大の目的は、口腔内細菌を減少させて誤嚥性肺炎を予防することです。誤嚥性肺炎は、唾液や食物に含まれる口腔内細菌が気道に入り込んで肺で炎症を起こす疾患で、高齢者の死因として頻度の高い肺炎の主要な原因です。とくに高齢者では、自覚のないまま少量の唾液が気道に流れ込む不顕性誤嚥が頻繁に起こるため、口腔内の細菌数をいかに減らすかが予防の鍵となります。 そのほか、口腔ケアには、食物残渣の除去、唾液分泌の促進による自浄作用の維持、味覚機能の保持、会話によるコミュニケーション能力の維持、口臭の予防、QOLの向上といった多面的な意義があります。
経口摂取の有無と口腔ケア
口腔ケアは経口摂取の有無にかかわらず実施します。絶飲食中や経管栄養、気管挿管中の患者では、食物が口を通らないため一見口腔ケアが不要に思えますが、実際には咀嚼運動の低下によって唾液分泌が減り、自浄作用が落ちて口腔内細菌がかえって増殖しやすくなります。したがって、経口摂取をしていない患者ほど積極的な口腔ケアが必要です。
口腔ケアの実施方法
口腔ケアでは誤嚥予防が最優先となります。実施前に体位を整えることが基本で、坐位がとれる場合はファウラー位(30〜60度の上半身挙上)とし、頸部前屈位にして唾液や水分が咽頭へ流れ込まないようにします。坐位が困難な場合は側臥位で行い、口腔内の水分が頬側にたまるようにします。仰臥位のまま顎を上げた姿勢は誤嚥を招くため避けます。 ブラッシングには軟らかめの歯ブラシを用い、毛先を歯面に直角に当てるスクラブ法が一般的です。歯周ポケットの清掃には、毛先を歯軸に対して45度の角度で歯肉溝に向けて挿入し、微細な振動で清掃するバス法が適しています。歯と歯の間にはデンタルフロスや歯間ブラシを用います。 全介助が必要な臥床患者では、含嗽が困難なため、水を含ませて十分に絞ったスポンジブラシで口腔粘膜や舌を清拭します。水分が多すぎると誤嚥するため、必ず絞ってから用います。吸引器を準備しておき、必要に応じて口腔内を吸引します。終了後は口腔保湿剤を塗布し、乾燥を防ぎます。舌の表面に付着した白苔(舌苔)は、強くこすると粘膜を傷つけるため、専用ブラシで奥から手前へ優しく除去します。
標準予防策と手袋の取り扱い
口腔ケアは唾液という体液に触れる処置であるため、**標準予防策(スタンダードプリコーション)**に基づき手袋を装着して行います。同じ患者の口腔ケアの延長で使用した歯ブラシを洗浄する場合は、同じ手袋のまま行ってかまいません。手袋を外したあとは、必ず手指衛生(手洗いまたは速乾性擦式アルコール製剤)を行います。
義歯の取り扱い
義歯とは、欠損した歯を補うために装着する人工の歯で、アクリルレジンを主材料とするものが多く用いられます。アクリルレジンは熱や乾燥、アルコールに弱いため、煮沸消毒や熱湯洗浄、乾燥保管は変形の原因となり禁忌です。 義歯の着脱には決まった手順があります。装着時は上顎の義歯から先に入れ、次に下顎を装着します。外すときはその逆で、下顎から先に外します。 義歯は毎食後に外して、専用ブラシと流水で洗浄します。研磨剤入り歯磨剤は表面を傷つけて細菌が付着しやすくなるため使用しません。
就寝時の義歯と保管
義歯は就寝時には外すのが原則です。装着したまま就寝すると、義歯の下の粘膜が長時間圧迫されて血流障害を起こし、褥瘡様潰瘍や義歯性口内炎を生じやすくなります。義歯性口内炎はカンジダ菌の関与が多く、夜間の安静時間に義歯を外して粘膜を休ませることが重要です。また、装着したまま眠ると誤嚥や窒息のリスクもあります。外した義歯は乾燥による変形を防ぐため、水または義歯洗浄剤を溶かした水の中に浸して保管します。
まとめ
口腔ケアの最大の目的は、口腔内細菌を減らして誤嚥性肺炎を予防することであり、経口摂取の有無にかかわらず実施します。実施時は頸部前屈位や側臥位で誤嚥を防ぎ、全介助患者ではよく絞ったスポンジブラシを用います。歯周ポケットの清掃にはバス法が最適です。義歯はアクリルレジン製で熱・乾燥に弱く、装着は上顎から、除去は下顎から行い、毎食後に流水で洗浄します。就寝時は外して水中に保管し、粘膜の休息と義歯性口内炎の予防を図ることが基本です。
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- 1.
口腔ケアの最大の目的は、口腔内細菌を減少させてを予防することである。
- 2.
高齢者で自覚のないまま少量の唾液などが気道に流れ込む現象をといい、誤嚥性肺炎の主要な原因となる。
- 3.
口腔ケアは経口摂取のにかかわらず実施する必要がある。むしろ絶飲食や経管栄養中の患者では自浄作用が低下するため積極的に行う。
- 4.
臥床患者の口腔ケアでは、誤嚥を防ぐため体位をまたは頸部前屈位に整える。
- 5.
歯ブラシの毛先を歯軸に対して45度の角度で歯肉溝に向けて当て、歯周ポケットの清掃に適したブラッシング法をという。
- 6.
全介助が必要な臥床患者の口腔ケアでは、水を含ませて十分に絞ったを用いて口腔内を清拭する。
- 7.
義歯の主材料であるは熱・乾燥・アルコールに弱いため、煮沸消毒や乾燥保管をしてはならない。
- 8.
義歯を装着する際はから先に入れ、外すときは下顎から先に外すのが基本手順である。
- 9.
義歯は就寝時には外し、乾燥を防ぐためまたは義歯洗浄剤の中に浸して保管する。
- 10.
義歯を装着したまま就寝すると、粘膜の圧迫やカンジダ菌の繁殖によってを起こしやすくなる。
