創傷管理と治癒過程
基礎看護学 / 創傷管理・呼吸ケア
解説
創傷とは、外的要因によって皮膚や粘膜などの組織が損傷を受けた状態のことをいいます。今回は創傷管理と治癒過程について解説します。
看護師国家試験では、創傷治癒のメカニズムと、現代の標準的な創傷管理の考え方が頻出です。かつては「消毒してガーゼで覆い乾燥させる」という処置が一般的でしたが、現在ではその方法は治癒を遅らせるとされ、**湿潤環境下療法(moist wound healing)**が標準となっています。基礎的な医学用語から順に整理していきましょう。
創傷治癒の4つの過程
創傷の治癒は、4つの段階を経て進行します。段階ごとに主役となる細胞や現象が異なるため、それぞれの特徴を押さえることが重要です。
止血凝固期
受傷直後から数時間にわたる時期で、損傷した血管に血小板が集まって凝集し、フィブリンが形成されて止血が成立します。この血餅が一時的に創を覆い、後に続く反応の足場となります。
炎症期
受傷後およそ3日までの時期です。好中球やマクロファージが創部に集まり、細菌や異物、壊死組織を貪食して除去します。同時にサイトカインや増殖因子が放出され、次の増殖期への準備が整えられます。創部に発赤、熱感、腫脹、疼痛がみられるのはこの時期の生理的反応です。
増殖期
受傷後3〜10日頃の時期で、創傷治癒の中心となる段階です。線維芽細胞がコラーゲンを産生し、血管内皮細胞が血管新生を行い、表皮細胞が遊走して上皮化が進みます。これらの結果として肉芽組織が形成され、創部は徐々に縮小していきます。「線維芽細胞・血管新生・上皮化」は増殖期の三大特徴として国試で問われやすいポイントです。
成熟期(再構築期)
受傷後数週間から数か月にわたる時期で、産生されたコラーゲンが再構築され、瘢痕が形成されます。瘢痕組織は徐々に強度を増しますが、正常皮膚の強度には完全には戻りません。
湿潤環境下療法(moist wound healing)
現代の創傷管理の基本原則は、創面を乾燥させずに湿潤環境を保つことです。乾燥した痂皮(かさぶた)の下では、表皮細胞や線維芽細胞の遊走が阻害され、治癒が遅延します。一方、適度に湿った環境では、滲出液に含まれる増殖因子、白血球、マクロファージが働き、肉芽形成と上皮化が促進されます。
そのため、感染徴候のない創では、まず生理食塩水や微温湯(あるいは水道水)で十分に洗浄し、異物・壊死組織・細菌を物理的に除去します。その後、滲出液量に応じてハイドロコロイド、ポリウレタンフィルム、ハイドロジェル、フォーム、アルギン酸塩などのドレッシング材を選択し、湿潤環境を維持します。
注意すべき点として、消毒薬(ポビドンヨードなど)は細菌だけでなく線維芽細胞などの正常細胞をも障害するため、感染のない創には用いないのが原則です。また、ガーゼで創を覆って乾燥させる方法は、創面と固着して再損傷の原因となるため避けます。
創面環境調整(TIME理論)
創面を治癒しやすい状態に整える考え方として、TIME理論が用いられます。Tは壊死組織(Tissue)の除去、Iは感染・炎症(Infection/Inflammation)の制御、Mは湿潤バランス(Moisture balance)の調整、Eは創縁(Edge)の管理を意味します。感染徴候(発赤、熱感、腫脹、疼痛増強、膿性滲出液、悪臭)がある場合は、閉鎖性ドレッシング材の使用は控え、デブリードマンと抗菌処置を優先します。
創傷治癒に影響する因子
治癒を促進する因子としては、適切な湿潤環境のほかに、十分なタンパク質、ビタミンC、亜鉛などの栄養素、組織への十分な酸素供給、安静などが挙げられます。逆に治癒を阻害する因子としては、低栄養、糖尿病、ステロイドや抗がん薬の使用、循環障害、感染、加齢、喫煙などがあります。
まとめ
創傷管理においては、止血凝固期・炎症期・増殖期・成熟期という治癒過程を理解したうえで、感染徴候のない創では「洗浄して湿潤環境を保つ」という湿潤環境下療法が現代の標準であることを覚えておきましょう。増殖期には線維芽細胞による肉芽形成、血管新生、上皮化が起こり、成熟期にはコラーゲン再構築による瘢痕形成が進みます。消毒薬や乾燥は治癒を遅らせるため、感染のない創には用いず、生理食塩水や水道水で洗浄してドレッシング材で被覆するという基本を押さえることが、国家試験対策と臨床実践の双方で重要です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
創傷治癒過程は、止血凝固期→→増殖期→成熟期の4段階に分けられる。
- 2.
増殖期では、がコラーゲンを産生し、血管新生と上皮化が進んで肉芽組織が形成される。
- 3.
成熟期では、コラーゲンの再構築が進みが形成される。
- 4.
現代の創傷管理の標準は、創面を乾燥させずに保つ(moist wound healing)である。
- 5.
感染徴候のない創では、消毒薬を用いず生理食塩水や水道水でし、ドレッシング材で被覆する。
- 6.
湿潤環境を保つために用いられる被覆材をといい、ハイドロコロイドやハイドロジェルなどがある。
- 7.
炎症期では、や好中球が細菌や壊死組織を貪食する。
- 8.
創面環境調整の考え方をTIME理論といい、T(壊死組織)、I(感染/炎症)、M(湿潤)、E()の4要素を調整する。
- 9.
創傷治癒を促進する栄養素として、タンパク質、ビタミンC、などが挙げられる。
