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看護過程と基本理論

基礎看護学 / 看護過程・看護理論

解説

看護師が対象者にケアを提供するとき、思いつきで動いているわけではありません。患者さんの健康問題を見つけ出し、その解決に向けて計画的に援助を組み立てていく一連の思考の流れがあります。この系統的・科学的な思考プロセスを看護過程と呼びます。看護過程の本質は問題解決思考であり、観察した情報をもとに判断し、行動し、結果を振り返るというサイクルを繰り返すことで、根拠に基づいた質の高い看護を実現します。

看護過程の5段階

看護過程は一般に5つの段階から構成されます。最初の段階がアセスメントで、ここでは対象者に関する主観的情報・客観的情報を収集し、分析・解釈します。次に行われるのが看護診断で、アセスメントで得られた情報を統合し、患者の健康問題を明確化する段階です。続いて計画立案では、解決すべき問題に対して目標を設定し、具体的な介入計画を立てます。実施は計画に基づいて実際にケアを提供する段階であり、最後の評価では設定した目標がどの程度達成されたかを判定します。

この5段階は一度きりの直線的な流れではなく、循環的かつ相互に関連しています。評価の結果、目標が達成されていなければ再度アセスメントに戻り、看護診断や計画を修正します。このフィードバックの仕組みにより、対象者の状態の変化に柔軟に対応できるのが看護過程の強みです。

看護診断と標準化された分類

看護診断には世界的に用いられているNANDA-I(北米看護診断協会インターナショナル)の分類があります。NANDA-Iの看護診断は、すでに問題が起きている実在型、リスク型、健康増進を目指すヘルスプロモーション型、複数の診断がまとまって現れるシンドローム型の4タイプに整理されています。さらに看護成果の標準分類としてNOC、看護介入の標準分類としてNICがあり、これらを組み合わせて使うことで臨床での共通言語が成立します。

目標設定と優先順位

計画立案では目標の書き方が重要です。よく用いられる原則がSMARTで、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期間が設定されている)の頭文字をとったものです。目標は患者を主語にし、観察可能・測定可能な行動目標として記述するのが原則です。

複数の問題が存在する場合の優先順位は、生命に直結する問題から対応するのが基本です。気道(Airway)、呼吸(Breathing)、循環(Circulation)の頭文字をとったABCの順で評価する考え方や、後述するマズローの欲求階層を用いた判断がよく使われます。

SOAP記録

看護記録の代表的な書き方がSOAPで、これは問題志向型システム(POS)に基づいています。Sは主観的情報(Subjective)で、患者自身の訴えや発言を「」付きで原文通りに記載します。Oは客観的情報(Objective)で、バイタルサインや検査値、表情・行動など第三者にも確認できる事実を記述します。AはAssessmentでSとOを統合した判断、Pは今後のPlanを表します。学生のうちは「Sは患者の言葉、Oは観察できる事実」と覚えると整理しやすくなります。

マズローの欲求階層説

看護で頻出する基礎理論にマズローの欲求階層説があります。第1段階が生理的欲求、第2段階が安全の欲求、第3段階が所属と愛の欲求(社会的欲求)、第4段階が承認(尊重)の欲求、第5段階が自己実現の欲求です。第4段階は「他者から認められたい、尊敬されたい」という欲求にあたります。第1〜4段階は不足を満たそうとする欠乏欲求、第5段階は人間として成長しようとする成長欲求と位置づけられます。

主要な看護理論

看護理論にはさまざまなものがあります。ヘンダーソンの14の基本的ニーズは、人間が持つ普遍的なニーズを呼吸・食事・排泄などの観点から整理したものです。オレムのセルフケア理論は、対象者が自らケアを行う力(セルフケア)に焦点を当て、その不足を看護が補うという考え方を示します。ロイの適応モデルは人間を環境に適応する存在ととらえ、ワトソンのヒューマンケアリングはケアリングを看護の中心概念に据えます。

近年では問題やマイナス面に注目する従来の問題解決思考だけでなく、対象者の強みに着目するストレングスモデルや、精神科領域で重視されるリカバリー志向の考え方も広がっています。

まとめ

看護過程はアセスメント、看護診断、計画立案、実施、評価の5段階からなる循環的な思考プロセスであり、根拠に基づくケアを提供するための枠組みです。NANDA-IやNIC、NOCといった標準分類、SMARTの目標設定原則、SOAP記録、マズローの欲求階層、ヘンダーソンやオレムなどの看護理論は国試で頻出ですので、用語と意味をセットで確実に押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    看護師が対象者の健康問題を見出し、解決に向けて計画的に援助を提供する系統的・科学的な思考プロセスをという。

  2. 2.

    看護過程は、アセスメント、、計画立案、実施、評価の5段階で構成される。

  3. 3.

    看護過程のうち、設定した目標の達成度を判定する段階をという。

  4. 4.

    国際的に用いられている看護診断の分類体系はである。

  5. 5.

    目標設定の原則であるSMARTのうち、Mは(測定可能)の頭文字である。

  6. 6.

    SOAP記録のうち、患者自身の訴えや発言など主観的情報を記載する項目はである。

  7. 7.

    SOAP記録のうち、バイタルサインや検査値など第三者が確認できる客観的情報を記載する項目はである。

  8. 8.

    マズローの欲求階層説において、第4段階に位置づけられる「他者から認められたい、尊敬されたい」という欲求をという。

  9. 9.

    マズローの欲求階層説の最上位である第5段階の欲求はであり、唯一の成長欲求とされる。

  10. 10.

    生命維持に関わる問題の優先順位を決める際に用いられる、気道・呼吸・循環の頭文字をとった指標をという。

看護過程と基本理論」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。