ペースメーカーと心電図計測
成人看護学 / 循環器系
解説
ペースメーカーと心電図計測とは、心臓の電気活動を体表から記録する検査と、徐脈性不整脈に対し電気刺激で心拍を補助する治療デバイスに関する分野です。今回はペースメーカーと心電図計測について解説します。
心電図計測の基本
心電図は、心筋の電気的興奮を波形として記録する検査です。標準記録速度は25mm/秒と定められており、記録紙の小マス1mmは0.04秒、大マス5mmは0.2秒に相当します。したがって大マス5個分で1秒となります。縦軸は電位を表し、通常1mV=10mmで記録されます。
心拍数の算出
心拍数はR-R間隔から算出します。代表的な方法は3つあります。300法はR-R間隔の大マス数で300を割る方法で、規則正しいリズムであれば最も簡便です。1500法はR-R間隔の小マス数で1500を割る方法で、より正確に算出できます。10秒法は記録紙10秒分(大マス50個)のR波数を6倍する方法で、心房細動などR-R間隔が不規則な場合に適しています。
例えばR-R間隔が大マス3個なら300÷3で100/分、4個なら75/分、24個なら約62.5/分となります。成人安静時の心拍数の正常範囲は60〜100/分で、これを下回ると徐脈、上回ると頻脈と判定します。
12誘導心電図
12誘導心電図は四肢誘導6つと胸部誘導6つの計12方向から心臓の電気活動を記録する検査です。四肢誘導はI、II、III、aVR、aVL、aVFの6誘導で、前額面の情報を捉えます。胸部誘導はV1〜V6の6誘導で、水平面の情報を得ます。
胸部誘導の装着位置
V1は第4肋間胸骨右縁、V2は第4肋間胸骨左縁、V4は第5肋間左鎖骨中線、V3はV2とV4の中間に貼付します。V5は第5肋間左前腋窩線、V6は第5肋間左中腋窩線に装着します。さらに後壁の評価にはV7〜V9、右室梗塞の評価にはV3R・V4Rの追加誘導を用います。
電極の色コード
JIS規格では、四肢誘導は右手赤・左手黄・左足緑・右足黒と定められています。胸部誘導はV1赤・V2黄・V3緑・V4茶・V5黒・V6紫の順です。誤って装着すると波形が異常を示すため、色と部位の対応を正確に覚える必要があります。
誘導と虚血部位の対応
心筋虚血や梗塞が生じた部位は、対応する誘導でST変化や異常Q波として現れます。II・III・aVFは下壁(右冠動脈領域)、V1〜V4は前壁中隔(左前下行枝領域)、V5・V6・I・aVLは側壁を反映します。V7〜V9は後壁、V3R・V4Rは右室の情報を示します。ST上昇は急性心筋梗塞、ST低下や陰性T波は心筋虚血を示唆します。
ペースメーカーの適応
ペースメーカーは、徐脈により心拍出量が低下し症状を呈する場合に植え込みます。主な適応は完全房室ブロック(第3度房室ブロック)、症候性洞不全症候群、徐脈性心房細動などの徐脈性不整脈です。
完全房室ブロックでは心房と心室の電気的興奮が完全に解離し、著しい徐脈となります。脳血流低下によりアダムス・ストークス発作と呼ばれるめまいや失神を生じ、放置すると致死的です。
完全房室ブロック疑い時の検査
完全房室ブロックが疑われた場合、最優先で行うべき検査は12誘導心電図です。非侵襲的かつ即時に施行でき、診断確度が高いためです。確定後にホルター心電図や電気生理学的検査で発作頻度や伝導障害の部位を評価します。
ペースメーカーの波形
ペースメーカーが作動すると、心電図上にペーシングスパイクと呼ばれる鋭い小さなノッチが出現し、その直後に幅の広いQRS波が続きます。右室にリードを留置した場合、左脚ブロック様の幅広いQRS波形となるのが特徴です。スパイクが出てもQRSが続かないペーシング不全や、自己心拍を感知できないセンシング不全はトラブルとして対応が必要です。
MRI検査とペースメーカー
従来型のペースメーカーは、MRIの強い磁場により誤作動・発熱・電極移動を起こすおそれがあり、原則禁忌でした。近年は**MR-conditional(MRI条件付き対応)**ペースメーカーが普及し、特定条件下でMRI撮像が可能となっています。撮像前にMRIモードへ変更し、撮像中は心電図モニタリングを行い、検査後に元の設定に戻す手順が必要です。
MRI前には、ペースメーカー、ICD、人工内耳、旧式の脳動脈瘤クリップ、体内残存金属片、刺青(顔料に金属を含むもの)、妊娠の有無を確認します。金属製義歯・ヘアピン・磁気カード・酸素ボンベは検査室に持ち込まないよう徹底します。
日常生活上の電磁干渉対策
ペースメーカー装着患者は電磁干渉(EMI)に注意が必要です。店舗出入口の電子商品監視装置(EAS)や空港の金属探知機は、ゲート中央を立ち止まらず速やかに通過します。携帯電話はペースメーカーから15cm以上離して使用し、胸ポケットに入れないよう指導します。IH調理器や電気毛布は電源コード付近に近づきすぎないようにし、高周波治療器やジアテルミーは使用を避けます。
ペースメーカー手帳と看護指導
患者にはペースメーカー手帳の常時携帯を指導します。手帳には機種、設定、植込み日、医療機関の情報が記載されており、緊急時や検査時に必須です。電磁干渉が疑われる場面では「迷ったら離れる」を原則とし、めまいや動悸が出現したら速やかに離れて症状の有無を確認するよう説明します。
まとめ
心電図は標準速度25mm/秒で記録され、大マス1個=0.2秒・5個=1秒を基本に心拍数や波形を評価します。12誘導心電図は四肢誘導と胸部誘導からなり、誘導ごとに反映する心筋部位が異なります。ペースメーカーは完全房室ブロックなど症候性徐脈に適応となり、心電図上はペーシングスパイクで識別されます。MR-conditional機種以外は原則MRI禁忌であり、EASや携帯電話など電磁干渉源への対策、ペースメーカー手帳の携帯指導が看護の要となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
心電図の標準記録速度はmm/秒であり、小マス1mmは秒、大マス5mmは秒に相当する。
- 2.
R-R間隔の大マス数で300を割って心拍数を求める方法を法といい、R-R間隔が不規則な心房細動などでは10秒間のR波数を倍する10秒法を用いる。
- 3.
胸部誘導のV1は第肋間胸骨右縁、V4は第肋間左鎖骨中線に装着する。
- 4.
下壁の心筋梗塞ではII・III・誘導に変化が現れ、前壁中隔ではV1〜に変化が出現する。
- 5.
JIS規格の四肢誘導の電極色は、右手、左手黄、左足、右足黒である。
- 6.
心房と心室の電気的興奮が完全に解離し著しい徐脈となる不整脈をといい、脳虚血により失神を起こす発作を発作という。
- 7.
ペースメーカー作動時、心電図上では鋭い小さなノッチであるが現れ、その直後に幅広い波が続く。
- 8.
特定条件下でMRI撮像が可能なペースメーカーを(MRI条件付き対応)ペースメーカーといい、ペースメーカー装着患者は携帯電話を本体からcm以上離して使用する。
